長崎大病院が「医療人育成室」 民間病院内に開設 地域医療維持と研修医教育を両立

 長崎大学病院(長崎市坂本1丁目)は、研修医が学外で地域医療を学ぶ教育拠点「長崎医療人育成室」(N-MEC)を、同市南部の民間病院、長崎記念病院(深堀町1丁目)内に開設した。市中心部から離れた南部地区は人口減少地域で、十分な医療人材が確保しにくい状況。このため、長崎大学病院の医師が長崎記念病院に常勤しながら研修医も指導。地域医療の維持と教育充実を両立させ、人材育成を進めるのが狙い。
 長崎大学病院として初の試みで、全国的にも珍しい。研修医は、2年間の初期研修期間中に地域の医療機関で最低1カ月間の地域医療研修が義務付けられている。N-MECは、この受け入れ拠点で、長崎大学病院医療教育開発センター(濱田久之センター長)の下部組織として1日発足。小出優史副センター長が同日付で室長(教授)に就いた。
 N-MECは長崎記念病院が人件費を負担。小出室長は同病院で診療に従事しながら研修医の教育に当たる。今月中旬から本格始動し、本年度は研修医5人を順次配属。地域医療を学びたい大学病院の看護師も受け入れ、既に2人が勤務している。
 高齢化の進展で全国的に医療需要が増大する中、医師や看護師は都市部に集中し、過疎地などでは確保が困難な傾向。長崎記念病院は救急から在宅医療まで担う地域の中核病院だが、近年、医師や看護師の確保に苦慮していた。
 一方、研修医の研修先も大都市部に人気が集まる傾向。長崎大学病院は研修医確保のため、教育内容の充実に努めてきた。N-MEC開設については、費用負担が抑えられる上、教員のポストを増やせるという大学病院側の運営上の利点もある。今後、県北地区にも拠点を1カ所設ける方向で検討している。
 濱田センター長は「地域医療の崩壊を防ぎながら、地域に根差した若手の医療人が育つことを期待したい」。長崎記念病院の福井洋会長は「優れた医師や研修医により病院を活性化できる。地域ぐるみで若い医師、看護師を育てたい」と話している。

「長崎医療人育成室」の看板の前に立つ小出室長=長崎市、長崎記念病院内

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