アルモンテと菅野が全指数1位 セイバー目線で選出する5月のセ月間MVP

中日のソイロ・アルモンテ【写真:荒川祐史】

巨人以外は突出したチームなしの団子状態

 5月終了時の順位が、昨年と同様に収束しそうな様相を呈してきたセ・リーグ。巨人が5つの負け越しになった他は総じて突出したチームがなく、団子状態となっています。そんなセ・リーグの月間MVPが6月7日に発表されます。

 5月のチーム成績は以下の通りです。

広島 11勝9敗 打率.257 本塁打24 防御率 4.26
中日 13勝11敗 打率.291 本塁打20 防御率 4.05
DeNA 12勝12敗 打率.275 本塁打34 防御率 3.93
阪神 12勝12敗 打率.236 本塁打12  防御率 3.16
ヤクルト 10勝12敗 打率.259 本塁打24 防御率 4.86
巨人 9勝14敗 打率.253 本塁打24 防御率 4.35

 月間MVPの選出基準は原則NPB公式記録が用いられます。ただ打点や勝利数といった公式記録はセイバーメトリクスでは、個人の能力を如実に反映する指標と扱わないので、個人の選手がどれだけチームに貢献したかを示す指標による評価は、公式のMVPとは異なることもあることでしょう。

 そこで、セイバーメトリクスの指標による5月の月間MVP選出を試みます。

月間25試合すべて出塁のアルモンテが貢献度で優位

〇5月月間MVP セ・リーグ打者部門

 アルモンテ(中日ドラゴンズ)
 OPS 1.104 wOBA 0.465 RC27 11.35(すべてリーグ1位)
 出塁率 0.434(リーグ6位) 長打率 0.670(リーグ3位)

 候補選手は8名ですが、その中でも有力な候補の成績はこちらです。

アルモンテ(中日)
打率.371 25試合36安打5本塁打21打点 得点圏打率.429

ロペス(DeNA)
打率.352 21試合31安打8本塁打23打点 得点圏打率.400

野間峻祥(広島)
打率.380 21試合27安打2本塁打11打点 得点圏打率.333

 月間首位打者に輝いたのは広島の野間。先月、セイバーメトリクス指標による評価で3、4月の月間MVPとなった丸佳浩の代役としてセンターのポジションに入るとヒットを量産。19日のヤクルト戦では3年ぶりの本塁打、しかも自身初の満塁本塁打でチームの勝利に貢献しました。丸が復帰後もレフトのポジションでスタメンに名を連ねています。

 ロペスは月間の本塁打、打点の2冠。DeNAの5月のチームOPS.785はリーグ1位で、ロペスはこれに大きく貢献した形です。ただ、この2人を凌ぐ活躍を見せたのが、中日のアルモンテ。得点圏打率は1位ですが、他の指標では1位となっているものはありません。しかしセイバーメトリクスの指標によると、アルモンテが優位であることがわかります。

アルモンテ
OPS 1.104 出塁率0.434 長打率0.670 wOBA 0.465 RC27 11.35

ロペス
OPS 1.056 出塁率0.363 長打率0.693 wOBA 0.449 RC27 9.01

野間峻祥
OPS 0.957 出塁率0.436 長打率0.521 wOBA 0.419 RC27 9.48

 出塁率と長打率を足して評価するOPS、各プレーの特典価値を累積して算出するwOBA、選手の得点創出能力を測るRC27といったセイバーメトリクスの指標によれば、アルモンテがすべての指標で月間1位となりました。

 また、アルモンテは5月に出場した25試合すべてで出塁し、23試合でヒットを放っています。開幕から数えても5月31日までの50試合で46試合出塁し、30試合連続出塁という記録を継続していました。6月1日の日本ハム戦で4打数ノーヒットに終わり、連続試合出塁は30でストップしてしまいましたが、イチローの持つ日本記録69試合はまだ今シーズン中に狙えることでしょう。こういった記録が評価されることの多い公式の月間MVPですから、そちらでもアルモンテが選出される可能性が高いと予想しています。

援護はないが指標は優秀な菅野、被本塁打4が響く大瀬良

〇5月月間MVP セ・リーグ投手部門

 菅野智之(読売ジャイアンツ)
 登板4 2勝1敗
 WHIP 0.68 奪三振率 11.03 QS率 100% 被打率0.145
 防御率1.63 FIP 2.41(すべてリーグ1位)
 
 候補選手は7名。その中でも有力なのはこちら。

菅野智之(巨人)
防御率1.16 2勝1敗 奪三振率11.03 被打率0.145

大瀬良大地(広島)
防御率2.03 4勝0敗 奪三振率7.26 被打率0.198

秋山拓巳(阪神)
防御率1.42 3勝2敗 奪三振率7.58 被打率0.207

メッセンジャー(阪神)
防御率2.06 3勝1敗 奪三振率7.46 被打率0.213

 大瀬良は4月15日から8試合連続でクオリティスタートを達成し、広島先発投手陣の中でも抜群の安定感を示しています。また、5月に登板した4試合のうち2試合で完投勝ちです。この点が評価されて公式の月間MVPに推挙されると予想しています。

 ではセイバーメトリクスの視点での評価を見てみましょう。

菅野智之
FIP2.41 WHIP0.68 QS率100% K/BB 7.6 援護率3.27

大瀬良大地
FIP3.77 WHIP0.87 QS率100% K/BB 5.0 援護率7.84

秋山拓巳
FIP2.59 WHIP0.87 QS率80% K/BB 6.4 援護率4.50

メッセンジャー
FIP3.06 WHIP1.03 QS率100% K/BB 3.2 援護率3.25

 被本塁打、与四死球、奪三振のみで投手を評価するFIPなど各部門において、菅野の指標はリーグ1位を示しています。FIPで大瀬良が低評価なのは、被本塁打4が響いています。うち3本はホームランパークファクターが低い(つまりホームランが出にくいとされる)マツダスタジアムでの被弾ですから、補正によっても改善されることはないでしょう。また援護率の多さも4勝の下支えとなっていることがわかります。
 
 菅野は3、4月に比べ、成績を向上させていますが、何せ援護の少なさが響いて勝ち星には繋がっていません。しかし例年通りの調子を示す指標となっています。

打線の援護と守備の負担で明暗を分けた中日と阪神

 最後に5月のチーム投手力を示す指標と援護率、グラウンドに来た打球をどれだけアウトにできたかを示すチーム守備の指標DERを見てみます。

阪神
防御率 3.16 FIP 3.52 WHIP 1.39
QS率70.8% 奪三振率8.78 援護率 3.52 DER 67.1%

DeNA
防御率 3.93 FIP 4.16 WHIP 1.55
QS率27.3% 奪三振率8.65 援護率 4.18 DER 69.1% 

中日
防御率 4.05 FIP 4.43 WHIP 1.46
QS率56.0% 奪三振率6.61 援護率 4.19 DER 77.9%

広島
防御率 4.26 FIP 3.95 WHIP 1.55
QS率61.9% 奪三振率7.84 援護率 5.41 DER 66.8%

巨人
防御率 4.35 FIP 4.51 WHIP 1.38
QS率45.8% 奪三振率8.18 援護率 4.59 DER 66.9%

ヤクルト
防御率 4.86 FIP 4.08 WHIP 1.66
QS率30.4% 奪三振率8.51 援護率 3.39 DER 62.4%

 今月のMVP候補に2人の名前が挙がった阪神ですが、チーム投手力はリーグでもトップクラスであることを示しています。しかしながら援護率の低さ、そしてDERも低く、守備でも投手に負担をかけている様子がうかがえます。

 逆に中日は打線の援護、守備の貢献で月間の勝ち越しとなったと言えそうです。

(Full-Count編集部)

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