外務省はなぜ課長の処分を急いだか ロシアメディアの見方

By 太田清

日ロ首脳会談のため外務省ロシア課長としてモスクワを訪問した際の毛利忠敦氏=5月26日、モスクワ(共同)

 外務省の毛利忠敦ロシア課長(49)が省内の女性にセクハラをした疑いを持たれ、停職9カ月の懲戒処分を受けたことは、それほど大きな扱いではなかったものの、ロシアでも伝えられた。毛利氏は北方領土返還交渉の実務を担っており、5月の安倍晋三首相のロシア訪問にも同行した。 

 主要通信社であるロシア通信は「日本外務省がロシア課長を停職処分」との見出しで事実関係のみを短く報じた。経済ニュースメディア「RBK」は「外務省の中でこのような事案が起きたのは誠に遺憾だ」との河野太郎外相の発言を伝えた上で、福田淳一前財務事務次官によるセクハラ問題や、新潟県の米山隆一前知事が出会い系サイトで知り合った女性に金品を渡して交際していたことを受け辞職したことなど日本での女性問題がらみのスキャンダルを伝えた。 

 一方、ラジオ「モスクワのこだま」(電子版)は、タス通信の東京支局長を長年務め、ロシアでも有数の日本通のジャーナリストであるワシリー・ゴロブニン氏による「セクシャルハラスメント」とのタイトルの記事を掲載。記事は、毛利氏の停職処分の発表で当初、情報漏えいやスパイ活動への関与の臆測が流れたほか、現在の日本の「超友好的な」対ロ姿勢の変化を示す可能性があるとの観測も出たことを紹介。 

 すぐに停職の理由が省内の女性へのセクハラ疑惑だと分かったものの、「外務省はことを済ませようと処分を急いだ。『胸を触っていい?』といったセクハラ発言を告発された前財務事務次官が結局、辞任に追い込まれた事件が、いかに財務省を震撼させたかを皆が覚えていたからだ」と指摘した。 

 また「(取材などを通じ)私の知っている毛利さんがどのような事情で窮地に陥ったか知らないが、彼は私に、知的で博学、ロ日関係における幅広い見方を示してくれる人という印象を与えてきた」と外交官としての毛利氏を評価。一方で「セクハラという粗暴な領域に対しては、こうした彼の資質はあまり関係ないことは分かる」とも認めた。 

 さらに事件が「外務省やほかの官庁に大きなショックを与えた。そこでは今や、幹部のいかなる分別ない行為の片鱗すら、ますます厳しく追及されることになる」とも指摘した。 (共同通信=太田清)

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