【MLB】元燕のDバックス監督が目指す日米野球の融合「小さなことを疎かにしない」

Dバックスのトーリ・ロブロ監督【写真:Getty Images】

2000年にヤクルト在籍「まったく活躍できなかったんだ(笑)」

 今季のナ・リーグ西地区は近年稀に見る混戦模様だ。6月5日(日本時間6日)現在、地区首位から5位までのゲーム差は、わずか5.5。その中でも堂々の1位をキープしているのが、今季から平野佳寿投手の所属するダイヤモンドバックスだ。

 昨季はワイルドカードに滑り込み、6年ぶりのプレーオフ進出を果たした。今季は地区優勝、そしてワールドシリーズ優勝を目指すチームを率いるのは、就任2年目のトーリ・ロブロ監督。メジャーで8季に渡りプレーした元内野手は、2000年にヤクルトで日本の野球を経験し、そのオフ、現役生活に幕を下ろした。ヤクルト時代の自身のパフォーマンスについては「まったく活躍できなかったんだ(笑)」とバツが悪そうに振り返るが、日本で過ごした1年は「野球人として厚みを増す、本当にいい経験だった」と力を込める。

 ダイヤモンドバックスの練習は“キッチリ”している。全体練習が始まる前に、まずは投手陣がウォーミングアップ。続いて、先発投手が打撃練習を行う間にリリーフ陣はキャッチボールに取りかかる。その後、内野手のノックをはさんで、野手のフリー打撃が始まる。練習メニューは他球団と変わらないが、違うのは全てのメニューの開始時間が決まっていること。大半のチームはウォーミングアップとフリー打撃の開始時間が決められているだけで、その他のメニューは“流れ”の中で行われる。

 細かなタイムスケジュールを決めるのには、どんな意図が込められているのだろうか? 「何となく練習をするのではなく、小さなことも疎かにしないという習慣づけの意味もあるんだ」と指揮官は明かす。

「小さなプレーが最終的には大きな差を生む」

「メジャーの練習にすっかり慣れた34歳の自分にとって、日本の練習はとても新鮮だった。日本では練習に多くの時間を割くし、技術の細部を繰り返し練習する。時間配分もキッチリ決まっていたし、みんなの野球に懸ける情熱にも大きな感銘を受けた。

 メジャーでプレーできる才能を持っていても、集中力を欠いたり、小さな動きでもやるべきことを疎かにしては意味がない。野球は本当に面白いもので、小さなプレーが最終的には大きな差を生むことがある。メジャーでは、昔からミスを犯してもホームランで取り返せばいいという発想があるけれど、緻密なプレーを心掛ければ、さらにいい結果が生まれるはず。メジャー流と日本流、それぞれのいい部分を取り入れた野球を目指しているんだ」

 例えば、時折バントに特化した練習をする日を設け、しっかりバントを成功させる練習をするだけではなく、バントを処理する際のグラブさばきにも気を配る。また送球の練習をする日は、いろいろな角度や方向からベースカバーに入った野手に向かって投げ、あらゆるパターンに対応できる引き出しを増やしておく。若い選手が多いからこそ、その意識付けが大事だという。

 日本での経験を積極的に生かしている指揮官だが、ヤクルト在籍時から引退後は指導者を目指そうと決めていたという。出場機会にこそ恵まれなかったが、練習に明け暮れ、ベンチから日本の野球を観察した日々は大きな財産になっている。

「目指す野球が少しずつ形になっている」と話すロブロ監督。細部にこだわる野球を積み重ねながら、30球団の頂点を目指す。

(Full-Count編集部)

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