高校英語4技能重視へ 長崎県教委 本年度から新事業 2020年度めどに「長崎モデル」確立

 「Japanese food is healthy and looks nice(和食は健康的で、見た目が美しい)」
 県立長崎東高1年1組(40人)の英語の授業。この日は和食の魅力について、登壇した生徒が図解を使い、英語でプレゼンテーション。外国語指導助手(ALT)のペイジ・フランクリンさん(25)は「身ぶり手ぶりを交え、抑揚の付いた発表ができていた」と感想を述べた。

●共通テストに照準
 高校の英語教育が、「読む・聞く・話す・書く」の4技能を重視した、より発信力を高める方向へと進んでいる。政府が国際的に活躍できる人材の育成を目指しているためだ。県教委によると、海外に事業所を置く企業が増えていることや、来日外国人の増加などが背景にあるという。
 2022年度の新入生から順次実施する高校学習指導要領改訂案では、英語は4技能育成を主眼に科目を再編。これに先駆け、20年度から導入される大学入学共通テストでは、最初の4年間は大学入試センターによる従来型のマークシート式試験と、4技能を測る複数の民間試験を併存させ、24年度から民間試験に全面移行する見通しだ。
 20年度からの大学入学共通テストは、現在の高校1年が初の受験世代となるため、教育現場では、既に4技能の習熟に力を入れ始めている。長崎東高で英語を教える松尾敏彦教諭(52)は「問題に解答するだけではなく、学んだ内容について自分の言葉で意見を言える力を付けさせたい」と話す。
 本県の公立高生徒の英語力は、文部科学省が実施した17年度の英語教育実施状況調査によると、高校3年で「英検準2級程度以上」が39・9%と全国平均の39・3%をわずかに上回る。しかし、政府が目標とする50%には及ばない現状だ。

●グローバル人材を
 こうしたことを背景に県教委は本年度から、4技能向上による英語力の強化を目的とした本県独自の「英語で発信できるグローバルパイオニア育成事業」を始めた。1年生の希望者を対象に6~7月にかけて、学校外部の民間試験を実施。学校側は結果から読み書きなど4技能の学力を分析し、学習、指導計画を練る。1年後に再び受験し、成績を比較。県教委は学校側の報告を基に、20年度末をめどに「長崎モデル」の学習、指導方法の確立を目指す。
 高い英語力を習得できれば、グローバルな人材になれるのか-。長崎東高は、国際的に活躍できる人材の育成を図る「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」事業の指定校。世界的な視野で課題の発見や解決に取り組んでおり、3月には国際科の3年生が英語論文集を発行。発展途上国での活用を想定した「せっけんを用いた蚊が媒介する感染症の予防法」などを発表した。
 浜野正義副校長(53)は、グローバル人材の育成についてこう話す。「SGHの目的は英語力の強化だけではなく、主眼は探求型学習の確立。それでも、国際的な発信力を得るために、実践的な英語を身に付けることは大変役に立つ」

英語の授業で和食の魅力についてプレゼンテーションする生徒=長崎市立山5丁目、長崎東高
 

© 株式会社長崎新聞社