シバヤギ

 2015年に長崎市外海地区に着任した地域おこし協力隊員、嶋田純人さんは、草刈りの助っ人としてあちこちに駆り出される日々が続いていた。過疎と高齢化が進む外海ではマンパワーが足りない▲そんな時、東京都町田市で空き地を除草するためヤギの放し飼いを実施していると耳にした。同じことを外海でやりたいと思い付く▲町田で飼われていたのは、研究機関などが実験動物として取り扱ってきたシバヤギという品種。入手したいとルーツを調べると、何と足元に戻ってきた。西彼杵半島や五島列島で明治以前から肉用に飼われていた在来種だったのだ▲外海で1960年代に700頭はいたとされるシバヤギも、食肉事情の変化に伴い現在は30頭ほどに減少。種の保存すらおぼつかない状況に陥っていた。それなら、頭数を増やして雑草の茂る場所に放牧し除草役を担わせればいい-。地域住民がシバヤギを活用したまちづくりに立ち上がった▲黙々と草を食べ続けるシバヤギは、耕作放棄地の再生に取り組む住民にとって心強い味方。何より人懐っこい性質だ▲嶋田さんによると、伝統的な飼育地域は、外海や五島の潜伏キリシタン居住地と重なっているという。詳しく調べていけば興味深い背景がありそうなシバヤギ。地域おこしへさまざまな期待が膨らむ。(泉)

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