55歳年下妻と家政婦が遺産相続で大揉め?紀州のドンファン不審死をクイズで弄ぶテレビの倫理観

写真:ロイター/アフロ

今年2月、55歳の年下で元モデルの女性(22)と結婚した紀州のドンファンこと和歌山県の資産家・野崎幸助さん(77歳)が先月24日に自宅で“不審死”したことについて、昨日、警察が死因は「急性覚醒剤中毒」と発表。殺人の可能性も視野に、覚醒剤摂取の経緯などを調べていることを7日放送の『ひるおび』(TBS系)が取り上げた。

番組では野崎さんの死について、いまだ多くの謎が残されているとして専門家たちを交え検証。警察が「覚醒剤による中毒死」と発表したことで、「病死」の線は消え、「他殺」か「自殺」か「事故死」に絞られたことが明らかになった。

また、野崎さんの愛犬・イブが、一ヶ月ほど前に突然死したことも、警察は何者かが関与した可能性もあるとみて、犬の死因を調べる方針だという。

生前、野崎さんが、マスコミにも度々取りあげられる有名な資産家であり、死亡時には55歳も年下の元モデルの妻と、家政婦の女性が同じ家にいたことなどから、連日、話題を集めている今回の事件。

本日の『ひるおび』では、このニュースを扱った後、別のコーナーで、遺産にまつわるトラブルを特集し、明らかに野崎さん、55歳年下妻、家政婦の女性を連想させるネタを題材に、クイズ形式で遺産相続の分配がどうなるかを掘り下げていった。

問題のクイズでは、55歳年下の妻が資産目当てで結婚した場合、死亡した夫の兄弟との遺産配分はどうなるか? 愛犬に遺産相続はできるか? 妻と家政婦が遺産相続でもめた場合はどうなるか? など、番組コメンテーターの八代英輝弁護士が解説。どう見ても、野崎さんと思しき人物の遺産相続の行方を、イラスト漫画付きで質問を出し、コメンテーターや、スタジオ観覧者に面白おかしく答えさせるという不謹慎な展開が繰り広げられた。

しかも、クイズを質問中、画面には「年下妻 遺産目当てで結婚か 遺産相続で親族と大もめ」「多額の遺産を愛犬に譲りたい 遺言書を作れば希望はかなう?」「年下妻と家政婦が相続でおおもめ 自分に不利な遺言書を隠した」などテロップがずっと出ており、ランチタイム時に、たまたまテレビをつけた視聴者は、野崎さんの遺産相続をめぐって、あたかも年下妻や家政婦にトラブルが起きているかと勘違いさせるレベルの放送だった。

現在、様々な憶測が流れている紀州のドンファンこと野崎氏の不審死。しかし不幸にも、人が一人亡くなっている事件である。それを好奇な目で、遺産相続の特集を組んだ上、55歳の年下妻が資産目当てで結婚した場合だの、年下妻と家政婦がもめた場合だの、あくまで“仮定”の話をクイズ形式にして、事実かのように印象操作するのは行き過ぎではないだろうか。TBS及び『ひるおび』制作班の悪意や、放送倫理の低さに疑問を感じる内容であった。

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