触れて伝わる奉仕の精神 「ド・ロ神父記録簿日日の帳」 旧出津救助院に複製品贈呈

 明治期に書かれた「ド・ロ神父記録簿日日(にちにち)の帳」の複製品の贈呈式が7日、長崎市西出津町の旧出津救助院であった。原本は劣化し一般に触れてもらう機会がなかったが、複製品は同院に展示。見学者が手でページをめくることもでき、関係者は「時を超え、ド・ロ神父と人々の営みに触れられる貴重な財産」と喜んでいる。
 複製は複合機大手、富士ゼロックス(東京)の社会貢献活動の一環。
 ド・ロ神父は禁教令が解かれた後、同市外海地区の人々のために身をささげたフランス人宣教師。「日日の帳」は旧出津救助院で働く女性たちの人数や食事、仕事の内容、工事などについて記した毎日の記録で、お告げのマリア修道会が所蔵している。全19冊のうち、1891年1月~93年10月に記された1冊が精巧に複製された。
 縦40センチ、横15センチ、455ページ。「Daiku」「Yasai」など日本語を美しいアルファベットの筆記体で表記している。同社は最新技術を駆使してデジタル加工やチェックを重ね、紙についたインクの染みや裏写り、虫食いまで忠実に再現。約10カ月かけて完成させた。
 贈呈式では、富士ゼロックス長崎の秋山富也代表取締役が旧出津救助院を運営する一般社団法人ド・ロさまの家代表理事、川田正勝さん(82)に目録を贈呈。川田さんは「日日の帳があるだけで、ド・ロさまの奉仕の精神が伝わる。ありがたい」と話していた。
 外海地区には世界文化遺産登録を待つ「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産がある。

寄贈された「日日の帳」の複製品。日本語がアルファベットの筆記体で記されている=旧出津救助院
記念写真に納まる関係者。中央は富士ゼロックス長崎の秋山代表取締役。右隣は複製品を持つド・ロさまの家の川田代表理事

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