【MLB】大谷の靭帯損傷「グレード2」とは? 「打者で出場、投手でリハビリ」も可能か

エンゼルス・大谷翔平【写真:AP】

米メディアが特集記事、復帰へ慎重さが必要も“二刀流”が生きる可能性も!?

 グレード2の右肘内側側副靱帯損傷で8日(日本時間9日)に10日間の故障者リスト(DL)に入ったエンゼルスの大谷翔平投手。いったいどれほどの深刻度なのか、手術の可能性はあるのか、投げられなくても打者としては出場できないのか……。今後どうなっていくのかも含めて、気になっているファンは多いだろう。

 球団によると、大谷は7日(同8日)にロサンゼルスでスティーブ・ユン医師の診断を受け、すでに多血小板血漿(PRP)治療と幹細胞注射を受けた。3週間後に再び患部の状態をチェックし、その後の治療方針を固める予定となっている。ここまでの流れを受けて、ESPNは「ショウヘイ・オオタニの怪我に関して知っておく必要があること」とのタイトルで特集を掲載。項目別に疑問点を挙げ、詳しく解説している。

 記事ではまず、大谷の開幕2か月のプレーを「刺激的」としながら、右肘負傷によって、「答え」よりも「疑問」の方が生まれていると指摘。そして、現時点で生まれてくる大谷の負傷についての「質問」について取り上げた。

 まず1点目は「怪我の深刻度」。現地では、大谷の靭帯損傷はグレード2とされており、昨年12月に報じられていたグレード1からダメージが増大している、ということになる。そもそも、このグレード2とはどのような状態なのか。

長期離脱となるトミー・ジョン手術の可能性は…

「厳密に言えば、グレード2の症状は、靭帯の部分断裂であり、グレード3は完全な断裂を指す。グレード2における靭帯のダメージ度合いは様々である。UCL(肘内側側副靭帯)に関して言えば、断裂が生じている箇所や程度次第で懸念材料となる」

 つまり、グレード2と一口にいっても症状は様々で、深刻度も異なるというのだ。そして、完全断裂というひどい状態ではない。もっとも、完全断裂に至らなければ手術をできないというわけではなく、グレード2以下で靭帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)に踏み切る選手もいるという。例として挙げられているのは、2015年のダルビッシュ有投手(現カブス)と今年4月のタイワン・ウォーカー投手(ダイヤモンドバックス)。どちらも完全断裂ではなかったが、肘にメスをいれることを決断した。

 記事では「深刻化する可能性を秘めた状態」とも表現。そして、今回の大谷のケースについては「エンゼルスにとっては、ただちに彼をシャットダウンさせるに十分な問題となった」という事実も指摘している。

 では、大谷が実際にトミー・ジョン手術を受ける可能性はあるのか。これが特集の2番目のテーマだが、「もちろん、最終的な決断を下すのは選手自身である」と言及。そして、「トミー・ジョン手術はリハビリ期間の長さもあり、決して簡単な選択肢ではなく、一般的には最終手段として選択される」としている。

 ヤンキースの田中将大投手は2016年に右肘靭帯部分断裂を負ったが、PRP治療を受けた。複数のドクターから手術は必要ないとの診断を受け、ヤンキースが保存療法を選択。田中は球団の方針に沿って治療、リハビリを続け、約2か月半で復帰した。靭帯は自然治癒しないため、しばらくは調子が下降する度にニューヨーク・メディアに肘の懸念を指摘されたが、現在はそういった声はほとんど聞かれなくなった。

 手術を受けるのか、受けないのか。どちらも可能性があるとしか現時点では言えない。ただ、特集では幹細胞注射の治療後、最終的にトミー・ジョン手術が必要となったケースがあることも紹介している。

「投手として復帰に向け取り組みながら、打者として出場することができる」?

 特集ではさらに、昨年10月の時点で軽度の靭帯損傷が見つかり、「予防」のためPRP治療を受けていた大谷の肘が、「より深刻な内側側副靱帯の損傷に悪化するリスクの高さを示していたか?」を分析。ここでは「示していた」と断言し、「靭帯への損傷があれば、更なる怪我のリスクは高くなる」としている。ただ、大谷にはその懸念を上回る魅力があったというのだ。

 その上で「オオタニは投打の能力を持つという点で異例である。利き腕の肘に損傷を抱えていたとしても、怪我が起こりそうだという兆候があったとしても、これまで以上にチームはスター候補の投手を求めている」と解説。トミー・ジョン手術を受けることになっても、その後に手術前と同レベル以上の投球をできるようになる投手が比較的増えていることが理由だという。

 そして、最後の疑問が、大谷が肘に損傷を抱えたままでも打者としては出場できるのかという点。これについて、ESPNでは「もしオオタニが今季もう投げられないとしたら、打者としては出場できるかもしれない」と分析している。当然、それは手術を受けないということが前提。シーズン終了後に手術を受ければ、投手としての復帰が再来年にずれ込む可能性があるだけに、その決断は早くなくてはならないことにも触れている。

 一方で、打者としての出場だけを考えれば、シーズン後に手術を受けても復帰が早まる可能性があるという。「野手はトミー・ジョン手術後に、投手よりも早く手術前のレベルに戻れる」といい、記事では野手の方が肘への負担が少ないとも指摘。「オオタニは投手として復帰に向け取り組みながら、打者として出場することができるのだろうか? 手術を受けることになったら、少なくともこうしたことはエンゼルスにとって興味深い選択肢となるだろう」と伝えている。

 二刀流という唯一無二の道を進む大谷だけに、復帰までの過程も新たな形を進む可能性はある。手術を受けても受けなくても、打者として試合に出場しながら、投手としてリハビリを進めるという選択肢は当然、浮上してくるだろう。ただ、慎重さは間違いなく必要なだけに、エンゼルスがどう考えるか。いずれにしても、大谷が負傷前と変わらぬ姿で戻ってくることを多くの人が願っていることは確かだ。

 大谷を慎重に起用してきたマイク・ソーシア監督はショックを隠せず、「重要な選手を2名失うようなこと」「ここまでのマウンドでの働きはとてもスペシャルだし、我々にとって重要だ。打席では重要な左打者でもある」などと話した。プレーオフ進出を目指すエンゼルスにとってはあまりにも大きな痛手。二刀流右腕の早期復帰を願いながら、勝利を重ねていくしかない。

(Full-Count編集部)

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