弱り果てる前に

 たやすく使うのがためらわれる言葉がある。例えば「帰宅難民」と言うときの「難民」。「災害弱者」と言うときの「弱者」。どことなく哀れむような感じが漂う。ただ、字面をじっと見ていると「難問だな」「弱ったな」とつぶやきが聞こえてきそうで、様子を言い表している気もする▲本県は「弱ったな」の声がとりわけ強い。65歳以上の「買い物弱者」の数が人口に占める比率は、本県が全国の都道府県で最も高いという。2015年時点での国の推計値が発表された▲スーパーやコンビニが自宅から遠く、車も使えず、食品を買うのに苦労する。そんな「高齢の弱者」の本県での人口比は34・6%で、ほぼ3人に1人に上る▲本県の率が高いのは何年も前から変わらない。どうにか手は打てないか。そう思うのだが、坂が多い、土地が狭い、だから自動車の保有率が低い、よって買い物が不便-といった現状はやすやすと動かせない▲例えばスーパーや商店街の人たちが買い物を代行する。例えば移動式店舗を設ける。こうしたサポートが実際にある。どうすれば広まるだろう▲買い物が不便だと外出の機会が減り、つい加工食品に頼りがちになる。やがて健康に悪影響も…と、この「食料問題」はそうとう根が深いらしい。弱り果てる前に、思案のしどころである。(徹)

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