長崎平和宣言 改憲への動き言及なし 原案に起草委員から批判

 長崎市は9日、8月9日の「長崎原爆の日」の平和祈念式典で、田上富久市長が読み上げる平和宣言文の第2回起草委員会を市内で開き、原案を提示した。複数の委員が、安倍政権が目指す憲法9条改正に歯止めをかける文言の追加を求めたが、田上市長は会合後の取材に対し、国民には多様な意見があるとして文言追加に難色を示した。
 原案は、憲法を巡り平和主義が柱の一つである点に触れたが、改憲の動きには言及しなかった。この原案に、長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)の田中重光会長は、日本が戦後73年間戦争しなかったのは「9条があったからこそ」と指摘。福祉生活協同組合いきいきコープの升本由美子理事長も「平和憲法を形骸化する動きは容認できないと示すべきだ」として9条への言及を求めた。
 こうした意見に、田上市長は終了後の取材に、憲法改正論議は「国民的な議論が第一」と述べ、市民を代表する平和宣言文にはそぐわないとの認識を示した。
 原案では、核兵器禁止条約の早期発効や世界の平和教育推進への期待などにも言及。北朝鮮の非核化については12日の米朝首脳会談を踏まえて内容を詰める。
 委員からは原爆投下時の情景描写の強化を求める意見や、「世界のリーダーに被爆地訪問を呼び掛けるべきだ」(「長崎被災協・被爆二世の会・長崎」の佐藤直子会長)との提案も出た。
 起草委は市長を委員長とし、被爆者や有識者ら15人で構成。市は今回の意見を踏まえ7月7日の最終会合で修正案を提示、まとめ作業に入る。

平和宣言文の原案に意見を述べる委員=長崎市平野町、長崎原爆資料館

© 株式会社長崎新聞社