【関西鉄鋼業の展望と課題】〈(4)値上げ・上〉鉄筋棒鋼などで道半ば

取引の公正化も課題

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 鉄鉱石・石炭や鉄スクラップなど鉄鋼原料の上昇で、国内鉄鋼各社はこの2年間、製品値上げを進めている。原料高の電炉、素材のコイルが値上がりしている鋼管や軽量形鋼など、関西の鉄鋼メーカーも製品値上げに必死だ。ただ、期待通りの需要になっていないこともあり、鉄筋棒鋼や溶接鋼管などいくつかの品種で原材料の値上がり分を吸収できていない。

 鉄筋棒鋼最大手の共英製鋼(大阪市)など関西地区の電炉鉄筋各社は、2016年4月から製品値上げに注力してきた。当時1万5千円以下だった鉄スクラップ価格が、海外市況の影響でじりじり上がり、今年1月には3万7千円と2年ほどで2万2千円上昇した。合わせて合金鉄など副資材市況も上昇したためだ。

 当時4万円際だった製品価格は現在、7万円固めの段階。それでも鉄スクラップ価格の上昇速度に比べ製品価格の値上げにタイムラグが生じ、関西の鉄筋各社は昨年10月から今年3月まで赤字出荷を余儀なくされた。

 この結果、前3月期は多くが経常赤字や大幅減益を強いられた。

 形鋼や平鋼も生産し、ベトナムなど海外事業展開を強化する共英製鋼も、経常利益は39億円減益の40億円。国内鉄鋼事業の営業利益は41億円減の32億円となった。枚方、名古屋事業所の鉄筋の採算悪化が影響した。

 ベースサイズ・メーカーの中山鋼業(大阪市)は前3月期で1億4千万円の経常黒字を確保した。「売れなくてもいい。赤字受注は回避」という姿勢がかなり奏功したと井手迫利文社長。D51ミリなど太物サイズを生産する同社では、鉄道や道路など土木向け出荷が増えたことも下支えになった。それでも前の期に比べると3億円近い減益だった。

 関西鉄筋各社の足元の製品出荷価格は6万円台。各社とも4月から黒字化し始めた。だが一方で、電極・耐火レンガ・合金鉄など副資材価格が急騰。コスト上昇は製品1トン当たり4千円前後になる。「副資材価格上昇分を製品に転嫁していくには、当面7万円半ばくらいの製品価格が必要だ」(合六直吉共英製鋼取締役専務執行役員)として、この先も製品値上げの手綱を引き締めていく構えだ。

 「原料価格が1万~2万円台で、鉄筋が4万円、5万円の時代は終わった。中国など海外影響で日本の鉄筋市場も新ステージに移った。これは一過的ではなく、これが『新常態』だ」とメーカー。

 製品値上げだけでなく、商取引の公正化に向けた取り組みも始まった。共英製鋼は鉄筋取引を最適化しようと商社と協議に入る。

 先物受注した製品が、生産・出荷時には原料高で赤字になるケースが増加している。原料や副資材価格が海外要因で高騰。製品受注時の価格と出荷時のコストが合わない。「価格リスクをメーカーだけが負担するかたちでは、いつまでたっても安定供給可能な採算状態にはならない」として、契約(受注)から納入完了までの契約時期・納入期間など適正なあり方を議論していく。

 エキストラの改定作業も始まった。合金鉄の値上がりを受けて鉄筋各社は鋼種エキストラ改定に取り組む。合金鉄価格はこの2年ほどで急伸しており、製品1トン当たり1千円以上のコスト高になっている。

 中山鋼業は6月契約分からSD390のエキストラ価格を現行比1千円上げて6千円とする。岸和田製鋼も7月契約から実施する。共英製鋼は山口事業所で7月契約からSD390=6千円、SD345=3千円と、サイズエキストラでもD51ミリ=2万円とする。  高炉材を原材料に使う鋼管も同様だ。ROSで業界1位を続けてきた溶接鋼管最大手の丸一鋼管。前3月期の連結経常利益は32億円減の229億円。素材コイルの相次ぐ値上がりに製品価格値上げが追いつかなかった。

 2016年秋から今年5月契約分までの間に、5回合計3万円の値上げを実施したが、「素材の値上がりに製品値上げが追いついていない」(鈴木博之会長兼CEO)として、早期に合計3万円値上げを完全浸透させていく。

 こうした中、新日鉄住金は6月出荷から薄板をさらに5千円値上げすると表明した。上げ潮の速度が速く、その波の上に乗りきれない業界が少なくない。