【トップインタビュー 日本精線・新貝元社長】高機能独自製品売上比率70%以上目指す 海外事業にも積極投資

――前期は売上高や経常利益など過去最高を更新しました。足元の状況を含めて感触を。

 「ステンレス鋼線業界全体が2016年下期から極めて活況で、金属繊維も堅調に推移している。特に、耐熱ボルト用などの太径域が伸びた。17年度は連結ベースで月産3479トン。高機能独自製品の販売数量増と、それに伴う工場操業度の改善などにより過去最高の業績となった」

 「足元でも自動車関連を筆頭に好調が続いている。そのため、リニューアル工事が続く枚方・東大阪の両工場はフル稼働が続いている。この状況は当面続くだろう」

――リニューアル工事の進展状況は。

日本精線・新貝社長

 「自動車向け耐熱ボルト用材並びに半導体用ガスフィルターの生産能力増強を目的としたリニューアル工事は順調に進んでいる。枚方工場は太径用伸線機・熱処理炉の増設が完了し、操業を開始した。東大阪工場は自動酸洗ラインを新設する予定。生産体制の強化だけでなく、構内物流の再構築も同時並行で進めている」

――課題は。

 「バネ用線の細径域(0・75ミリ以下)は、想定以上の受注で、生産が追い付いていない。伸線機を増強して迅速に対応する。また、国内需要が旺盛だが、日本精線の海外輸出比率を高めていくことにも注力したい」

――設立30周年を迎えたタイ精線は大幅な増収増益となりましたが、そのほかの海外子会社の現状は。

 「金属繊維ナスロンのメタルフィルターを製造する耐素龍精密濾機(常熟)は、中国市場への拡販活動が実り受注が増加した。前期の売上高は5億2800万円で過去最高、経常利益1300万円で5年ぶりの黒字となった。今後も安定的な黒字を創出できるように生産能力を拡大する方針だ」

 「クロム系ステンレス鋼線を生産する大同不銹鋼(大連)は、中国国内での安定的な事業を展開し、17年度は月産112トンと前年比38%増。また、前期の売上高は5億2100万円、経常利益4千万円となった。18年度も特定商品の製造に特化した戦略で黒字を見込んでいる」

 「海外事業は製造品目を高機能独自製品に広げた結果、増収増益傾向だ。継続的な黒字化および黒字幅拡大を推し進める」

――新製品の開発状況は。

 「高強度ばね用ステンレス鋼線(ハーキュリー)のさらなる高強度化・強靭化を図り、より高性能でピアノ線と同等の特性を持つ『ハーキュリーEH』を開発、このほど量産体制が整った。また、高機能ばね用ステンレス鋼線タフステンや、高強度銅系合金線エレメタルも改良を加えて拡販に向け取り組んでいる。そのほか、金網用の二相ステンレスや、医療・IT向け製品および水素・EV関連製品の研究開発も行っている」

――第14次中期経営計画「NSR20」を発表しました。

 「NSR20のビジョンは、未来の高機能独自製品を生み出し続けることを通して社会に貢献し、ステンレス鋼線ナンバーワンカンパニーの地位を継続していく。そのため、高機能独自製品の上方弾力確保・拡販と持続的成長のための生産基盤強化を図り、最終年度の20年度に連結経常利益55億円、連結ROS・連結ROAとも10%以上を目指す。基本方針として、高機能独自製品の能力増強投資、新製品開発と新市場開拓、生産性向上と働き方改革、ガバナンス・コンプライアンスの充実、安全・環境対策の継続的推進に取り組む」

 「設備投資は連結ベースで約100億円(日本精線90億円、タイ精線10億円、耐素龍精密濾機1億円など)。具体的には、ばね用線に関して、タイ精線にめっき工場を新設し国内と同等の品質を確保し、タイ精線と枚方工場に伸線機を増設して増強を図る。またタイ精線にて16ミクロン以下の極細線に対応するための伸線機と焼純炉を導入する。これら高機能独自製品の能力増強とともに、製品倉庫集約・物流改善、品質および識別管理の自動化やシステム化、多能工の育成と暗黙知の形式知化を推進する」

――NSR20の1年目となる今年の目標は。

 「世界の主要な半導体製造装置メーカーへの拡販を目的とした半導体用ガスフィルターの新設備垂直立ち上げ、耐熱ボルト用材増産投資の実行・立ち上げ、国内2工場のリニューアル工事の推進はもちろん、ばね用線・極細線などの増産投資を今期は遂行する。そうした中で、今年度は連結で月産3700トンを目指している。また、売上高・経常利益など業績も過去最高を更新する予定だ」

 「今後は高機能独自製品の売上高比率70%以上を目指し、枚方・東大阪・タイ精線の国内外3拠点の役割分担を明確にし、NSR20を推し進める」(綾部 翔悟)

© 株式会社鉄鋼新聞社