トヨタ若手育成の新井大輝と勝田貴元、ラリー・イタリアで表彰台争いに絡むもリタイア

 トヨタの若手ラリードライバー育成プログラム『TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジプログラム』に参加している新井大輝と勝田貴元は、6月7~10日に行われたWRC世界ラリー選手権第7戦イタリアのWRC2クラスに参戦。速さをみせる場面もあったが、荒れた展開に翻弄され、2台ともにリタイアとなった。

 地中海のイタリア・サルディニア島を舞台に争われるラリー・イタリア・サルディニアは、例年であれば気温が30度前後まで上がるイベントだが、今年は週末に時おり雨が降って路面のグラベルが泥状になる難しいコンディションに。

 また、SS自体は岩と木々に囲まれた道幅の狭いコース設定になっていることもあり、多くのドライバーが苦戦を強いられた。

■新井、新コドライバーとの初戦で一時クラス首位浮上もクラッシュ

 トミ・マキネン・レーシングのフォード・フィエスタR5を操る新井はコドライバーをヤルモ・レーティネンに変更して臨んだ初戦となったが、SS3でクラストップタイムをマークしてWRC2トップに浮上するなど、速さをみせる。

新井大輝(フォード・フィエスタR5)

 続くSS4でもクラス2番手のタイムを記録して上位争いを繰り広げたが、SS5走行中に岩にぶつかり、ステアリングアームを破損。そのままコースアウトすると、その先でも岩に衝突してしまう。これでエンジンにもダメージが及んでしまったため、走行継続は断念。早々にリタイアすることになった。

「あまりに早くラリーが終わってしまいとても残念です」と新井。  

「SS5のあるコーナーで少しインカットしすぎ、岩にヒットしました。それによってステアリングアームを損傷し、その影響でコースオフした際に大きな岩にあたり、エンジンにもダメージが及んでしまいました」

「ヤルモと組んで初めてのラリーだったにもかかわらず、それまではとてもいいタイムが出せていたことに驚きました。お互いがとても早く相手に合わせることができたからだと思います」

「あともう少しペースノートに微調整を加えれば更に良くなると思います。リスクを取ることなくクラストップのタイムを出せたことは今後にとって非常にポジティブな要素でした」

■表彰台争いに絡んだ勝田はドライブシャフト破損に泣く

 一方の勝田/マルコ・サルミネン組フォード・フィエスタR5は競技2日目をクラス5番手で終えると、翌3日目はペースを上げ、SS15終了時点でクラス3番手までポジションを上げたが、SS16でパンクがあり2分のタイムロス。クラス7番手まで順位を落としてしまう。

 表彰台争いからは離脱を余儀なくされたため、競技最終日は完走を目標に掲げたが、この日最初のSS17でドライブシャフトが破損。リタイアを余儀なくされた。

 勝田は「最終日はとにかく走り切って経験を積みたいと思っていたので、それができずとても残念」と悔しさをにじませた。

勝田貴元(フォード・フィエスタR5)

「金曜日はあまり良いタイムを出すことができませんでしたが、自分の改善点を見つけることができました。土曜日は、お昼のサービスでいくつか変更を施した後、フィーリングがとても良くなり、タイムも上がりました」

「ですが、土曜日の最終ステージでパンクをしてしまい、タイヤ交換でタイムをロスし、ポディウムのチャンスがなくなってしまいました。 最終日はとにかく走り切って経験を積みたいと思っていたので、それができずとても残念でしたが、前を向いて次のラリーへの準備をしていきます」

 このプログラムでチーフインストラクターを務めるヨウニ・アンプヤは「両ドライバーともにリタイアとなる厳しいラリーだったが、ふたりともスピードは証明してくれた」とラリーを総括した。

「勝田は序盤セッティングが合わず難しいスタートとなったが、ラリー中に改善し、より良いセッティングを見つけることができた。また、レーティネンと組んで初のラリーとなった新井のスピードはとても満足いくものだったよ」

「結果は残念だったが、1年前の同イベントと比べふたりの成長は明らかに見てとれた。次のイベントは非常に重要なフィンランドでのラリーとなるから、次戦に向けて集中を高めていく」

 新井、勝田の両名は、7月26~29日に開催されるWRC第8戦フィンランドのWRC2にも参戦を予定しており、それに先駆け7月12~14日にフィンランドで行われるオートグリムラリーに参戦する。

 このオートグリムラリーはラリー・フィンランドの高速グラベルステージと特徴が似ているため、多くのラリードライバーがラリー・フィンランドの予習を兼ねて参戦するイベントとなっている。

© 株式会社三栄