元Gクロマティ氏が明かす“秘話” 桑田氏のドラフト1位指名を“進言”していた!?

トライアウト参加者に声をかけるウォーレン・クロマティ氏【写真:荒川祐史】

当時PL学園にいた桑田氏の試合を王監督とテレビ観戦「今でも覚えています」

 巨人史上最強の助っ人と称されるウォーレン・クロマティ氏。軟式野球の第4回「MLBドリームカップ」に参戦するゼビオ選抜モントリオール・エクスポズの監督に就任。5月にはトライアウトを行うなど日本球界への貢献を続けている。

 MLBドリームカップでは巨人時代の同僚、桑田真澄氏も自ら「桑田パイレーツ」を率いて参戦する。日本全国で5月末から始まった地区予選で監督として直接対決を迎える可能性もある。

「最高じゃないですか、クロマティ対クワタ。日本のベースボールファンにも喜びをもたらすことができますね。今は野球人気は私がジャイアンツにいた時ほどの盛り上がりではありません。この大会でより多くの喜び、情熱をもたらすことができればいいですね。日本のベースボールにゲンキを取り戻すお手伝いがしたいです」

 クロマティ氏は都内で取材に応じ、こう語った。桑田氏とは忘れられない思い出がある。桑田氏は高校時代にPL学園で大活躍し、1985年のドラフト会議で巨人の1位指名を受けて入団。早稲田大学入学を希望していただけに、桑田氏の巨人入団は大きな波紋を広げた。ただ、桑田氏の指名を当時の王貞治監督(ソフトバンク球団会長)に猛プッシュしたのが、意外にもクロマティ氏だったと自ら告白した。

「私がジャイアンツでプレーしている時には、クワタさんはPL(学園)でした。キヨハラさんもPLでした。今でも覚えていますが、神宮でオウさんとテレビでPLの試合を見ていました。オウさんは“我々はドラフトを迎えるが、投手か打者、どちらをドラフトするかは分からない”と言っていた。私はクワタさんのピッチングを見ていたんです」

 神宮球場で当時の王監督と共にPL学園の公式戦をテレビで観戦していたというクロマティ氏。そして、熱弁を振るったというのだ。

「オウさん、どうだい。私はこのピッチャーが好きだ」

「自分はこう言ったんだ。『オウさん、どうだい。私はこのピッチャーが好きだ。クワタのことが本当に気に入った』とね。『このクワタという選手には見所があるぞ』と。すると、王さんは『本当か! どこが気に入ったんだ?』と聞いてきたんだよ」

 チーム首脳に対して、球団史上最強の助っ人は小柄なエース右腕を猛プッシュしたという。その理由は、メジャー通算311勝の名右腕と桑田氏が重なって見えたからだ。

 「ピッチングスタイルだ。彼のスタイルはトム・シーバーを彷彿させる。クワタさんはトム・シーバースタイルだ。彼の投球の技術。アグレッシブだ。いつも、キャップを飛ばすように投げるようなスタイルだった」

 シーバー氏はメッツなどで20年間活躍した右腕。1967年の新人王を皮切りに、サイ・ヤング賞、最多勝、最優秀防御率にいずれも3度輝いたメジャー史に残る名投手だった。クロマティ氏は躍動感溢れる強気なピッチングを見せる小柄なエースの指名を、自身がメジャーで対戦したレジェンドを引き合いに出して“進言”したという。なお、クロマティ氏はシーバー氏に対して60打数19安打の打率.317と好成績を残している。

「そこから、1か月、2か月が経ち、ジャイアンツはクワタさんをドラフトで指名したんだよ。そこからはチームメートになった。彼は英語を勉強したがっていたね。私は彼の英語のセンセイだったんだ。クワタさんは毎日、移動のバスで英語の本を持っていて『これはどういう意味なの?』としょっちゅう聞いてきたんだ」

 チームの移動の際にも熱心に英語の勉強をしていた桑田氏にとって、元メジャーリーガーのスラッガーは生きる教材だったようだ。当時の“進言”が巨人のドラフト戦略にどれほどの影響を与えたのかは分からない。だが、名将・王監督に熱心に小柄な右腕の魅力を語ったクロマティ氏こそが「ジャイアンツ・桑田」の産みの親だったのかもしれない。

(Full-Count編集部)

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