【解説】大同特殊鋼「トップブランド」守る

偽装品防止へ新手法

©株式会社鉄鋼新聞社

スマホで容易に履歴確認

 大同特殊鋼の「NAK80」は40HRCレベルのプリハードン鋼。耐摩耗性、被削性、肉盛溶接性、鏡面仕上性など総合力に優れるプラ型用鋼の日本トップブランドだ。中国における大同特殊鋼の17年度工具鋼売上高のうち24%をNAK80が占める。

 中国でのNAK80の偽装品の流通量は不明だが、正規品を上回るとみられる。同社によると、5月22日10時時点で中国大手通販サイト「アリババ」でNAK80を検索した結果は全て偽装品。「NAK」は中国で商標取得済みで、商標権保護のため半年に1回要請し、約300件ずつ削除しているのが実態。2年前から行政訴訟の準備も進めているが、証拠不十分で目に見える成果は挙げられていない。今年1月にはNAK80専用HPも立ち上げ、商標権保護に努めている。

 偽装品が混入しやすい背景には金型用鋼の商流の複雑さもある。金型用鋼の最終需要は小ロットで客先が多岐にわたるため、メーカーや一次店が全て直接販売することは不可能だ。一方、二次店以降で客先ニーズに合わせて切断・加工販売する過程においては、ミルシートと現品を対照するだけでは真偽判定が困難になる。

 新システムでは、大同特殊鋼や流通・販売店間の取引履歴をクラウドサーバー上で管理する。大同特殊鋼は一次店に対して販売証明書IDにヒモづけてミルシートを発行し、一次店は素材の証明書IDをキーにして新たな証明書IDを発行する。二次店以降も同様で取引履歴は常に素材まで遡ることができ、また購入量を超える証明書を発行できない仕組みを設定している。

 顧客は証明書に印刷されたQRコードをスマートフォンなどで読み取り、取引履歴や成分情報などを確認できる。証明書自体もマイクロ文字や透かし、コピー防止印刷など、凸版印刷の高度な偽造防止技術を用いている。

 6月11日にシステムを導入したのは大同模具鋼(広州)、厦門市天泰特殊鋼、昆山興豊昌金属材料、東莞市合一五金製品、重慶敏徳興模具材料科技、無錫隆昌興模具鋼材の6社。7月1日に佛山頂峰日嘉模具、9月上旬に無錫頂峰日嘉金属製品が導入する予定。この8社でNAK80の中国販売の7割をカバーする。

 新たな販売証明書で確認できるのは4月18日以降の大同特殊鋼出荷分だが、それ以前の出荷分についてもある程度は確認できる。また他の現地系グループ1社は自社販売がベースで自前の取引履歴管理システムを構築しているため、近い将来において中国で販売されるNAK80のほぼ全量で取引履歴が把握できるようになり、偽装品を見つけやすくなる。

 大同特殊鋼はまずNAK80で新システム活用を定着させ、19年度からは冷間ダイス鋼の「DC53」、熱間ダイス鋼の「DHA1」などでも展開する計画。システムは当面無償で提供するが、利用者が一定規模を超えた場合は有償化する方針。