ボクシングの階級が増え、さらに世界王者が4団体で乱立。チャンピオンの権威が低下しているのは事実だが、それだけにファンはパウンド・フォー・パウンド(PFP)のランキングに高い関心を寄せている。
PFPとは体重が同一とした場合、誰が最強かを競うことだ。
海外の専門メディア「ワールド・ボクシング・ニュース」の最新版によると、1位はワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)で、井上尚弥(大橋)が5位に入った。井上が近い将来、どこまでランクアップするのか興味は尽きない。
ロマチェンコは5月12日、世界ボクシング協会(WBA)ライト級タイトルマッチで、王者ホルヘ・リナレス(帝拳=ベネズエラ)を10回TKOに破り、最速の12戦目で世界3階級制覇を達成した。
本人も「これは歴史だと思う。ボクシング界にとっても素晴らしいこと」と胸を張った。
多彩な角度で打ち分けるコンビネーションには磨きがかかっており、スピードも十分。好戦的なスタイルは無敵の感が強い。戦績は11勝(9KO)1敗。
キャリアも文句なし。アマチュア時代は2008年北京、12年ロンドン五輪で金メダルを獲得、13年10月にプロデビュー。14年に世界ボクシング機構(WBO)フェザー級タイトルを奪った後、あっという間に3階級を制した。
リナレス戦ではダウンを喫する場面もあったが、終盤に鮮やかなボディーブローで仕留めた。「会心の一発だった。リナレスとの再戦も喜んで受けて立つ」と王者の風格が漂っている。
勢いでは井上も負けてはいない。5月25日、WBAバンタム級王者ジェイミー・マクドネル(英国)を1回TKOに下し、日本最速の16戦目で3階級制覇を成し遂げた。
テクニシャンの王者をゴングとともに圧倒、一方的に攻め立てた。鋭い左ジャブに続く左右連打の切れ味は抜群。無敗の記録も16連勝(14KO)に伸ばした。
今後はバンタム級の真の頂点を目指し、他団体の王者も参加するワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)優勝が目標だ。そして、そのハードルをクリアする可能性はかなり高いと見られている。
井上のボクサーとしての才能が抜きん出ているのは誰もが認めている。攻守とも欠点がなく、さらなる飛躍も期待できる。
「井上がPFPのナンバーワン」と呼ばれる日も夢ではないだろう。日本ボクシング界の誇りを懸けた闘いに注目したい。(津江章二)