【破綻の構図】ジャパンホーム、地盤ネットの一部門として再建へ

 住宅建築のジャパンホーム(株)(TSR企業コード:295562927、港区、皆木久一社長)が5月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は債権者81名に対し、4億4,830万円だった。
 設計から施工までを一貫して請け負い、都内の狭小な土地での施工を得意としてきた。ピークの2017年3月期は戸建てに加え、アパートやシェアハウスなど大型案件もあり、過去最高の売上高10億8300万円を計上した。
 だが、2018年3月期に建築中の物件が台風被害に遭い建替えが生じたほか、着工当日の解約などで資金繰りが急激に悪化。東証マザーズ上場の地盤ネットホールディングス(株)(TSR企業コード:314021701)の子会社、地盤ネット(株)(TSR企業コード:012952761)の支援を得て再建を模索したが、株主の同意が得られなかった。

 ジャパンホームは皆木社長が2002年9月、(株)エクセルホームの商号で設立し、同年12月に現商号に変更した。中高級の注文住宅ニーズを取り込み、これまで約400棟を手掛けた。大手住宅メーカー並みの質をリーズナブルな価格で提供し、顧客を広げてきた。テレビCMやチラシなどの広告を極力抑え、口コミで知名度は浸透させてきた。

粗利率の低さと人件費が負担に

 ジャパンホームは顧客の要望を取り入れた住宅設計を心掛けた。打ち合わせに多くの時間を割き、資金繰りは支払い先行が定着し、利益率の低さが課題だった。労働集約型の業界だけに、従業員13名では今以上の受注拡大は難しかった。
 社内に一級建築士6名、二級建築士3名が在籍していた。戸建て住宅が中心の受注では二級建築士でも十分だったが、都内の特殊な土地事情での建築には一級建築士が必要だった。これが「技術力の高さ」の裏付けにもなっていたが、反面、一級建築士の高い給与が販管費を圧迫していた。

ジャパンホームの売上高・粗利率推移(3月期決算)

資金繰りが急速に悪化

 2018年3月期は戸建て住宅を22棟受注した。だが、前期に4棟受注したシェアハウスは逆風にさらされ1棟の受注にとどまった。
 さらに、経営を揺るがす重大な事態が襲い掛かった。
 2017年夏、台風や長雨の影響で建設中のシェアハウスの外壁合板が腐食し、カビが発生した。施主は裁判も辞さない強硬な姿勢で強く建て替えを迫り、ジャパンホームはやむなく木造部分の建て替えを無償で行った。費用1,100万円は自社負担とした。
 さらに、今年3月4日の着工当日に工事請負契約を解約される事態も起きた。着工当日、初めて現地を訪れた施主が仲介業者から隣に養護施設が建築中と説明されていなかったことに懸念を示したためだ。これでジャパンホームは着手金や上棟金、約1,000万円が入らなくなり資金繰りは一気に悪化した。このため業者への3月末の支払いを4月末に延期し乗り切りを図った。だが、その後も資金繰りは好転せず、5月末には業者への支払いに加え、金融機関への借入金返済もストップした。

昔の同僚に支援を要請

 これに前後して経営再建に向けて、4月下旬からスポンサー選定作業を開始していた。当初、スポンサー選定後に事業を譲渡し、事業資産と取引先への債務をすべて引き継ぎ、事業譲渡代金で金融機関や債権者に配分する私的整理を模索した。
 スポンサーには複数の企業が名乗りをあげたが、皆木社長のサラリーマン時代の同僚だった山本社長が経営する地盤ネットをスポンサーに選定した。地盤ネットは地盤の調査・解析が本業で、事業上のシナジー効果も期待できると判断したようだ。

株主の賛同を得られず、民事再生法を申請

 ところが私的整理スキームは、脆くも頓挫した。スポンサーへの事業譲渡には株主総会で3分の2以上の賛成が必要だったが、筆頭株主から反対され、契約を締結できなかった。皆木社長は2人の株主のうちの1人だが、過半数は保有していなかった。もう1人の株主と協議を進めていたが同意を得られず、事業譲渡を断念。民事再生法の申請を決意した。筆頭株主の反対理由は今も不明のままだ。

不適切会計で債務超過に転落

 これと並行し、ジャパンホームは過去の決算内容を点検した。同時に、会計処理を変更した。従来は建築物件の上棟時に売上を計上したが、2018年3月期から完成時の売上計上にした。これで業界平均に比べて低水準だった総利益率はさらに下落、同期は総利益で赤字を計上した。また、過年度の不適切会計で、前期損益修正損3億6,385万円の特別損失を計上し、債務超過に転落した。
 私的整理の道が断たれたジャパンホームには、法的整理しか残されていなかった。


 現在、仕掛中が5棟、設計監理のみの物件が1棟。これから着工する物件4棟に加え、3月に一旦解約した物件も6月末の工事再開を予定している。7月20日にはジャパンホームの事業と従業員12名を地盤ネットの住宅部門に引き継ぐという。
 地盤ネットの山本社長は債権者説明会で、今後の住宅事業展開について、地盤調査へのニーズが高まっており、「いままでにない、設計も良くて、耐震強度も高い」家づくりを目指すと抱負を述べた。高い技術力を持つジャパンホームと、地盤ネットの地盤調査の知見がどのようなシナジー効果をもたらすか、新たな展開が注目される。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年6月13日号掲載予定「破綻の構図」を再編集)

© 株式会社東京商工リサーチ