若者目線で「おもしろい人」を紹介、交流人口増へ 釧路

人工約17万人の北海道釧路市では若い世代が地域を活性化させようと奮闘している。「おもしろい人」を紹介することで、釧路の豊かな資源を守り続けるまちづくりに取り組む。この動きの中心団体の一つである市民団体「クスろ」を運営する代表の夏堀めぐみさんと副代表の名塚ちひろさんに話を聞いた。(武蔵大学松本ゼミ支局=中原 利奈・佐野倭子 武蔵大学社会学部メディア社会学科)

夏堀さん(左)と名塚さんは同級生

釧路市は2017年に苫小牧市に人口を抜かれ、道内5位に落ちた。雇用先がなく、若年層の流出を防ぎきれていない。そんな状況で、若者が立ち上がった。その筆頭格が「クスろ」だ。

発足したきっかけは、サシ飲みだ。東京にいた名塚さんが帰省したときに、夏堀さんと飲みに行った。そのときに、盛り上がったテーマが釧路の魅力について。「魅力をもっと伝えたい、自然や食・動物などの資源の豊かさが持続する町にしたい、おもしろいローカルプロジェクトを起こしたい」――そんな想いを打ち明けた。

「クスろ」は現釧路市民、元釧路市民、そして釧路ファンから構成されている。メンバーの多くが20代だ。地元では活気・勢い・声の大きさに定評があるという。

主な活動はイベント企画だ。それは、「釧路のおもしろい人を伝える」という内容。そう決めた背景には、「釧路に来た人に町とかかわってほしい、何度も人に会いに来てほしい」という考えがある。おもしろい人を伝えることで、釧路を豊かさが持続する町にできると強調する。

イベントだけではなく、「人めぐりツアー」も始めた。「観光地」ではなく魅力的な「人」をめぐる1泊2日のツアーだ。これまでに3回行い、参加者は主に釧路出身者が半分、残り半分は、市外の人となっている。

人を紹介することで、気を付けていることは、「自分たちが自慢できる人に会いに行き、その魅力を取り繕うことなく、リアルに伝えること」と言う。参加者どうしが仲良くなることで、参加者の半分にあたる市外者が釧路のファンになることも期待できる。釧路出身者にとっては、地元の魅力を再確認できる。

新しいイベントとして、「移住ナイト」も行った。これは、釧路に移住した人をゲストに招き、暮らしについて話を聞くイベントだ。釧路に移住者を増やしたいが、それだけではない。まずは長期休みなどにぶらりと遊びに来て、第二の故郷としてかかわりを持ってほしいという。

クシろはなぜ「人」に焦点を当てたのか。釧路には、自然、食材、動物など自慢できる資源がたくさんある。しかし、それらの豊かな産業や資源を網羅できるのは「人」しかいないと考えた。

釧路の豊かな資源を取り上げる団体は多いが、それらにかかわっている「人」を取り上げる団体は多くない。同じことをやっても意味がない。若い世代の新しい試みが必要だと考えたのだ。釧路の若い世代がどのように活気づけるのか、今後が楽しみである。

© 株式会社オルタナ