好きなガイドさん選んで 海きらら 逆指名バックツアー 飼育員、指名獲得目指し日々奮闘

 佐世保市の九十九島水族館(海きらら)は4月から、来館者が案内役のガイドを選び水族館の裏側を見学する「逆指名バックヤードツアー」を定期的に開いている。魅力度アップや多様な情報発信が目的。飼育スタッフは来館者の心をつかもうと日々、しのぎを削っている。
 「カメ、カメ、カメカメ~。カメのお兄さん~♪」。受け付けで放映している手作りのPR動画で、クラゲ・魚類課チーフの泉徹耶(いずみてつや)さん(33)がオリジナル曲を歌って陽気に自己アピールをしていた。
 ガイドは川久保晶博館長を含むスタッフ12人が担当。来館者は受け付けでその日出勤している4~6人のPRポスターと動画を見て希望するガイド2人を選ぶ。動画では飼育スタッフが個性豊かに“清き一票”を呼び掛ける。選ぶガイドによって紹介する生き物や施設が異なるところが魅力だ。
 ツアーは閑散期の客足を伸ばそうと若手職員の発案で昨年秋に初めて開いた。1カ月限定で週末に開くと「またやってほしい」「おもしろかった」と好評。そこで4月から毎月第3日曜の午前と午後に開いている。
 動画やポスターのひょうきんな表情で目を引く泉さんは、通常のバックヤードツアーで参加者がどの話題で盛り上がるかを観察。指名獲得に向け、日ごろから情報収集を重ねている。「楽しい思い出は記憶に残る。海きららの満足度自体も高まる」。昨年は1カ月の指名回数が全体の3位。「今度こそトップを」と闘志を燃やす。
 「まじめさが売り」。タコの飼育を担当する鶴留司(つるどめつかさ)さん(20)は昨年10月から勤務を始めた新人。ツアーで受け付け業務を担当した際に“同情票”で1度は指名を獲得した。だが満面の笑みで生き物への熱い思いをアピールしたり、有名な絵本をまねて自分の姿を探させるポスターを作り、子どもの心をつかんだりなど、先輩はつわものばかり。「みんな仕事を通じて自分の色を作り出している。でも個性がないことも個性」。6月のツアーで巻き返すつもりだ。
 「さまざまな人に生き物好きになってもらい、環境保全につなげるのが水族館の存在意義。情報発信のためにはおもしろい発想が欠かせない」。川久保館長は新たなツアーをこう後押しする。一方で昨年秋は指名回数で自らトップを獲得した。「若手が説明できない話も知っている。勝負の厳しさを教えたい」と、にやり。「水族館の主役は働いている人。今後も若い職員がいいアイデアを出せる環境をつくりたい」と話した。

逆指名バックヤードツアーに向けて意気込む(左から)泉さん、川久保館長、鶴留さん=佐世保市、海きらら

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