【トップインタビュー 新日鉄住金・進藤孝生社長】新中期「鉄源も海外で生産」

「つくる力を鍛え、鉄を極める」

©株式会社鉄鋼新聞社

――前3月期の連結経常利益は7割増益の2975億円に回復しましたが、前中期計画(2015~17年度)で目標に掲げた収益目標は未達に。今年度からの新中期計画(18~20年度)でROS10%・ROE10%に再挑戦します。

 「前3月期はROS5・2%、ROE6・4%と10%に届かなかった。新中期で、前中期と同じROS10%、ROE10%との収益目標を掲げ、再チャレンジする。具体的な収益改善の取り組みは(1)生産出荷量の回復・拡大(2)マージンの改善(3)コスト削減(4)グループ会社の収益改善―を進める」

 「マージン改善は、昨年度にトン5千円を打ち出したが、現在は2千~3千円の浸透にとどまっている。5千円の完全浸透を目指すとともに、市況原料や資材費・物流費など新たなコストプッシュ要因があり、それへの対応も必要だ」

新日鉄住金・進藤社長

 「コスト削減は新中期(3年)で1500億円を計画している。内訳はハードの設備で1千億円、ソフト(操業)面で500億円の想定だ」

 「17年度の国内粗鋼生産は、設備・操業トラブルが響いて、その前の年より約200万トンの減産となった。新中期では旺盛な需要に対応し、和歌山製鉄所で待機中の大型高炉に切り替えることも併せ、国内4500万トン規模に増やしたい。海外の生産能力は現在2100万トンの供給ネットワークがあるが、スウェーデンのオバコ社など新たなM&A(買収)策を進めており、さらに拡大する方針だ。そのために新中期では6千億円の事業投資枠を設けている」

――新中期の事業環境認識とともに、骨子を聞きたい。

 「事業を取り巻くメガトレンドが変化している。例えば(1)保護主義の動き(2)新興国の自国生産化(3)EV(電気自動車)化や自動運転の普及による需要構造変化(4)環境問題など持続的社会実現に対する要請の強まり(5)AIやIoTなど高度ITの急速な進歩―などが挙げられる。そうしたメガトレンドを捉え、今後は下工程だけでなく鉄源(上工程)から海外で生産することが必要になってくる。また、高度IT技術を製鉄所における実際の生産プロセスに実装化していくことも課題となる」

――鉄源でも海外に出る、との話ですが具体的には?

 「現時点での当社の海外鉄源はブラジルのウジミナス社だけだが、保護主義の高まりや新興国の自国産化を受け、海外鉄源の拡充を進める。特殊鋼事業の強化策としてスウェーデンのオバコ社を子会社化する方針を決めているが、これは特殊鋼のために数量規模は大きくないが鉄源拡充の一つだ。またインドのエッサールをアルセロール・ミッタルと共同買収する計画を持っており、これが実現すれば1千万トン規模の海外鉄源拡大になる」

――それ以外の地域はどうしますか。電炉での進出も選択肢に?

 「コンパクトな規模という点で電炉での海外進出は可能性としてはあり得る。ただ、建材分野以外の高級鋼をつくるための技術開発などが課題だ」

 「今回のエッサール社買収案件のように、高炉でもグリーンフィールド(新規案件)でなくブラウンフィールド(既存案件)であれば、採算面で好条件になり得る。エッサールはインドの法制で倒産会社となって売りに出たが、足元ではフローの営業利益が出ており、千載一遇のチャンス。そうした良い案件が出てくれば今後も前向きに考えたい」

――新中期の副題は「つくる力を鍛え、メガトレンドを捉え、鉄を極める」。この言葉には、進藤社長のこだわりがあると聞きます。

 「新中期の五つの取り組み施策は(1)社会・産業の変化に対応した素材とソリューションの提供(2)グローバル事業展開の強化・拡大(3)国内マザーミルの『つくる力』の継続強化(4)鉄鋼製造プロセスへの高度ITの実装(5)持続可能な社会の実現への貢献(SDGs)―としている。マルチマテリアルの流れはあるが、鉄が産業素材の主役であることは変わらないだろう。当社グループの中で、化学とマテリアル(新素材)の事業子会社を統合して鉄以外の素材対応力も強化しながら、鉄と他素材との組み合わせで何ができるか考えていく。『鉄+アルファ』を利用技術も含めて総合的に提案し、需要家のニーズに応えていきたい。それが、鉄を極めるという言葉の意味するところだ」

――「つくる力を鍛える」とは。

 「人と設備の再構築は、前中期からの継続課題だ。前中期で増額した設備投資をさらに年1千億円規模で増額し、3年間で1兆7千億円(うち、日新製鋼が1千億円)を投じる。内訳は収益改善投資が3割、基盤整備が6割、その他が1割。積極的に高炉・コークス炉等の設備リフレッシュや新鋭設備導入を進め、安定生産、生産性向上を図る」

 「国内の最適生産体制の構築も進める。事業環境の変化に対し、柔軟に対応できる強靭な製造体制を確立する。八幡製鉄所では新鋭連続鋳造設備を19年に稼働させ、小倉地区の鉄源設備を20年度末をめどに休止、上工程を集約する。また和歌山製鉄所では第5高炉から稼働待機中の新第2高炉への切り替えを図り粗鋼生産能力を年50万トン増やすほか、君津製鉄所小径シームレス鋼管工場(旧東京製造所)を20年に休止する」

「メガトレンド捉えて成長」、「高度IT技術の活用加速」

――つくる力を強化するためIT活用加速も。

 「設備診断の高度化などで予測能力が上がれば、設備トラブルを減らす効果が期待できる。また、生産計画策定にAIを活用すればメリットがある。全国に立地する複数の製鉄所を一元的に運用する『バーチャル・ワンミル製鉄所』構想をイメージしながら、製鉄所現場の標準化や業務改革を進めたい。新日鉄住金ソリューションズがグループ内にあることは最大の強みであり、その力を活用しながら安定生産、品質向上、業務の高度化を進める。標準化やIT活用で業務改革を進める考えであり、すでにプロジェクトチームをつくって取り組み始めている」

――グループ会社の収益強化策について。先日は日新製鋼の完全子会社化と、ステンレス鋼板事業統合(新日鉄住金ステンレスと日新製鋼)を公表しました。

 「日新製鋼を来年1月1日に完全子会社化し、来年4月には3社のステンレス鋼板事業を統合する。日新製鋼の完全子会社化とステンレス鋼板事業統合により連携効果を深化させることで、シナジー(統合)効果は従来の200億円から100億円上乗せして300億円見込める。ステンレス鋼板事業は統合により出荷規模150万~160万トンと国内では圧倒的なトップメーカーになるが、世界で見れば9位のポジション。数量規模よりもハイエンドを狙う方針だが、将来的には次の一手が必要になってくるだろう」

 「特殊鋼棒線事業ではスウェーデンのオバコ社を買収した。山陽特殊製鋼を子会社化することも検討しており、室蘭製鉄所、八幡製鉄所小倉地区、山陽特殊製鋼、オバコの連携で、グループの特殊鋼棒線事業を強化する。これに加え、先ほど申し上げたインドのエッサール共同買収で海外事業を拡大したい」

 「化学とマテリアルの経営統合を決めたが、統合会社は戦略の自由度が広がる。両社は顧客層が重なる面があり、大いに期待している。新日鉄住金エンジニアリングは、東洋エンジニアリングと包括提携して取り組み始めており、連携の効果を出していく。新日鉄住金ソリューションズは事業環境が良好であり、現状の取り組みを継続する」

――来年4月1日に社名を新日鉄住金から日本製鉄に変えることを決めました。

 「日新製鋼を完全子会社化し、山陽特殊製鋼を子会社化するなど、いろいろな会社のDNAが入ってくることを受け、それらを包摂する社名にすることが望ましいと判断した。また、海外へ事業展開していく際に日本発祥の製鉄会社であることを分かりやすく示すために『日本製鉄』『NIPPON STEEL』とした」

――約70年ぶりに日本製鉄という社名が復活するとの受け止めもあります。

 「それは全く意識していない。あえて当時と今で共通する点があるとすれば、当時は国策ではあるものの国内企業統合により日本を代表する鉄鋼メーカーをつくろうとした。我々は業界再編をしながら、日本発祥の製鉄メーカーとして世界で成長を続ける企業にふさわしい名前にしたいと考えている、という環境や背景に似ている面があるかもしれない。他の社名は頭になかった」 (一柳 朋紀)