トランプ氏が正恩氏に見せた動画の制作会社、実在しなかった

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太田清

47NEWS編集長

太田清

47NEWS編集長

共同通信社入社後、広島支局、大阪社会部、外信部、経済部、ベオグラード支局、モスクワ支局、ローマ支局などを経て2016年より現職。イトマン事件、阪神大震災、コソボ紛争、ユーゴ空爆、モスクワ劇場占拠、アフガン紛争、ギリシャ財政危機、東日本大震災などを取材。

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会談の冒頭で握手する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)とトランプ米大統領=12日、シンガポール(AP=共同)

 12日の米朝首脳会談でトランプ米大統領が金正恩朝鮮労働党委員長に見せた映画の予告編風動画について、制作会社としてクレジットで紹介された米カリフォルニア州の映画制作「ディスティニー・ピクチャーズ」に取材しよう多くのメディアが連絡を取ったところ、まったく関係のない会社であることが分かった。米主要メディアが伝えた。 

 動画は米国家安全保障会議(NSC)が制作したことが後に判明したが、なぜ「ディスティニー・ピクチャーズ」という名称を考え付いたのかは不明。「ディスティニー」は「運命」という意味だが、正恩氏の決断が「世界の運命を決める」という意味を込めた「言葉遊びでは」との指摘も出ている。 

 動画は4分間で英語と朝鮮語のバージョンがあり、トランプ氏がiPad(アイパッド)で正恩氏に見せたほか、トランプ氏のシンガポールでの記者会見冒頭でも放映された。トランプ氏によると「正恩氏は気にいった」という。 

 「2人のリーダー、1つの運命。1人の男の前に、恐らく2度と繰り返されないだろうチャンスが現れる」というナレーションとともに、未来に向かえば繁栄と発展が待っている一方、過去に戻れば孤立と対立が待ち受けるとして、正恩氏に非核化などの決断を促す内容となっている。 

 動画にはトランプ大統領と金正恩委員長が「主演」として出演。2人の実際の映像と併せて、高層ビルが立ち並ぶ繁栄した街並みや最新設備の工場とともにミサイル発射の様子や空母から発進する戦闘機の映像などが描かれ、選択によって、どちらの現実を選ぶのか正恩氏次第だとほのめかすイメージも盛り込まれた。 

 ディスティニー・ピクチャーズ創業者のマーク・カスタルドさんは自身のツイッターで、動画制作を完全に否定。「朝から世界中からの大量のメールと電話で起こされた。信じられない」と憤慨。「NSCの報道担当者は、NSCが動画を制作したことを認めた。今はどうしてわが社の名称を使ったのかを知ろうとしている」と打ち明けた。 (共同通信=太田清)