録音記録開示認めず、横浜地裁 県条例除外規定に合理性

 神奈川県情報公開条例の除外規定を理由に、県教育委員会が会議の録音データを公開対象外としたのは不当として、情報公開請求を行った横浜市の女性(69)が県に非開示処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決が13日、横浜地裁であった。大久保正道裁判長は除外規定の合理性を認め、原告の請求を棄却した。

 判決によると、女性は2016年8月、録音データの公開を請求したが、県教委は拒否。県条例では施行規則を設けて会議録作成用の録音データを公開対象から除外しており、県教委はこの施行規則を根拠に請求を拒んだとされる。

 行政会議の録音データを巡っては、最高裁が04年に行政文書に該当するとの判断を示し、情報公開の対象として認めている。今回の訴訟では、行政文書性が確認されている録音データをあえて公開対象外とした県条例や施行規則の妥当性が問われた。

 大久保裁判長は判決理由で、除外規定の制定趣旨に言及。会議録の公開で県民の知る権利に応えている点を踏まえ、「(会議録とは)情報内容に差異のある録音データを公開対象から除いたと解される」と指摘した。その上で、制定趣旨には「相応の合理性がある」と判断し、除外規定を理由に開示を拒んだ県教委の対応を適法とした。

■原告は「時代遅れの判断」と反発 情報公開後退を警戒

 県条例の除外規定に合理性を認めた判決に、原告らは「予想外だった」と困惑を隠せなかった。「こんな時代遅れの考えが司法判断として定着してはたまらない」。原告の代理人で、かながわ市民オンブズマン代表幹事の大川隆司弁護士は憤り、控訴する意向を示した。

 原告側が録音データの閲覧を重要視するのは、会議録では伝わらない語気や語調、言い直し、言いよどみが把握できるためだ。しかし、判決はそうした情報内容に差異がある点を逆手に取る形で、除外規定の制定趣旨を是認した。

 判決に対し、大川弁護士は「最後のアウトプット(会議録)だけ公開すればいいなんて、ひどい話だ」と猛反発。文書の改ざんはもちろん、忖度(そんたく)や圧力の有無を確認するには途中経過の検証こそ重要とし、「最後に表に出す以前の情報へのアクセスが一切認められないと、行政の肝心な部分が県民には見えない」と強調する。

 原告側によると、そもそもこうした除外規定は情報公開法にはなく、都道府県レベルでは神奈川、千葉、徳島、大分の4県が条例で設けている。これにより、4県の市町村条例に同種の除外規定が広がっている実態があり、神奈川県では18市町村が該当するという。

 原告代理人の小沢弘子弁護士は「情報公開に後ろ向きな自治体が除外規定を設けて後に続く危険性が否定できない」と憂える。大川弁護士は「こうした判決を放ってはおけない」と語った。

横浜地裁

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