普通鋼電炉メーカー、ニオブに熱視線 マンガン、バナジウム価格急騰で建設用鋼材の生産コスト抑制に効果

販売大手の双日、技術サポート強化

 普通鋼電炉メーカーが、建設用鋼材の添加原料としてフェロニオブの活用を検討し始めた。強度を高めるために使うマンガン系合金鉄やフェロバナジウムの価格急騰が収益圧迫要因となる中、微量添加で同様の効果が出るフェロニオブを使うと、コスト上昇を抑制できるためだ。建設用鋼材の製造でニオブはほとんど使われてこなかったが、ここにきて電炉メーカーの熱い視線が注がれている。

 世界のフェロニオブ市場で8割のシェアを持つブラジルのCBMM社に出資し、日本総代理店を務める双日には、マンガン、バナジウムの価格急騰以降、普通鋼電炉メーカーから問い合わせが相次いでいるという。

 マンガン系合金鉄は鋼の引張強度を、フェロバナジウムは降伏強度をそれぞれ高める効果があり、いずれも建設用鋼材を製造する際の重要な添加原料。製品によっては、バナジウムを使わず、マンガン系だけを使うケースもある。

 マンガンとバナジウムの価格が急騰したのは昨年後半以降。高炭素フェロマンガンは現在1トン当たり1300ドル超と1年前に比べ約2倍の水準で推移。フェロバナジウムは純分価格で65~70ドルと年初水準に比べ2~2・5倍に跳ね上がっている。

 一方のフェロニオブは、最大サプライヤーのCBMMが、ニオブ需要の掘り起こしを目的に価格安定政策をとっていることもあり、40ドル(純分価格)近辺で安定推移している。バナジウムとの比較では、「添加量を加味すると相当に割安」(市場関係者)だ。

 ニオブへの関心が高まっている理由は価格面だけではない。ニオブは微量の添加で、引張強度、降伏強度の両特性を高める効果があるからだ。つまり、バナジウムの代替原料として使ってもいいし、マンガン系だけを使ってる場合はマンガンの使用量を減らすことができる。

 現在の価格水準で計算すると、使用条件によっては粗鋼1トン当たり1千円近いコスト削減も可能だ。

 フェロニオブは、高張力鋼やステンレス鋼の添加原料として使われているが、建設用鋼材への活用はほとんど例がない。双日によると、新たにニオブを使う場合、プロセス変更は不要だが、添加時の溶鋼温度などニオブの効果を最大化できる条件があるという。

 双日はCBMMと協力して、テクニカルサポート態勢を整備。顧客の操業条件に合った添加方法を提案するなどして、ニオブ活用を促したい考え。CBMMは年間9万トンの生産能力を持つが、2年後をめどに15万トンまで能力を拡大する計画。ニオブの需要が増えても価格安定政策を維持する方針で、バナジウムなどの価格が大幅に下がらない限り、ニオブの優位性は変わらない見通しだ。

 電炉メーカーをめぐっては、合金鉄のほか電気炉用電極、耐火物など副原料・資材の価格上昇が収益圧迫要因になっている。鉄筋棒鋼やH形鋼など建設用鋼材は普通鋼電炉メーカーの主力製品で、ニオブ活用によるコスト抑制効果は大きく、ニオブを使う動きが広がる可能性は高い。

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