【千代田鋼鉄工業 創業70周年を迎えて】〈坂田基歩社長に聞く〉常に時代にあった経営追求 都内唯一の電炉、「地産地消」が使命

 70周年を迎えられたことは、まず何よりも取引先の皆様のおかげ。長い間、当社製品をご愛顧いただき、当社を育てていただいたものと心から感謝申し上げたい。

 社史などをひも解いて70年間を振り返れば、戦後復興から高度成長、オイルショック、円高不況、バブル景気と崩壊、不良債権処理、中国の資源爆食、リーマンショック、東日本大震災、原発停止と、様々な周辺環境の変化に対応してきた。創業期は非常に多様な挑戦をしたようだが、その結果、現在の事業である異形棒鋼とカラー鋼板という2つの事業に特化。身の丈に合った経営を心がけ、不況の時はコストダウンを徹底し、好況時にはおごることなく財務の改善をして次の不況に備えてきた。相次ぐ統合や合併など競争の激しい鉄鋼業界に身を置きながら、独立的な経営を維持できたのも、創業者や現会長をはじめ、従業員や諸先輩方の努力による功績と言えるのではないか。

 日本社会はこれから、かつて経験したことのない本格的な少子高齢化、人口減少時代に突入する。異形棒鋼、カラー鋼板という国内の建設需要に大きく依存する製品を手がける当社の将来は決して楽観できるものではない。これからも絶え間ない品質改良、コスト低減はもとより、その時代にあった経営を常に心がけていきたい。

 電炉メーカーとしては主原料である鉄スクラップの蓄積量が世界的に増えており、CO2削減の観点からも電炉法が主流になっていくと考えられることは追い風と捉えている。米国の電炉比率はすでに67%、中国政府も電炉比率を挙げていく方針を明確に掲げている。一方、14憶トンもの鉄鋼蓄積がある日本の電炉比率はまだ22%と低い。足元では中国の雑品スクラップ輸入規制もあって日本ではスクラップ品質が劣化するなど逆行する形となっている。今後、我々民間企業には政府と一緒になっての抜本的な対策が求められるだろう。

 一方、異形棒鋼の需要に関しては、幸い当社が立地する首都圏の人口減少は他地区に比べ顕在化が先になるほか、都心には木造家屋が密集する地区が多くあり、大規模火災を予防する観点から住宅の建て替え需要は必ず出てくる。

 かつて綾瀬工場は移転を検討したことがあった。結果的に当地に残った意義をもう一度かみしめ、都内に拠点を有する唯一の電炉メーカーとして都内のスクラップ&ビルドに伴って発生する地場の老廃スクラップを受け入れ、地場の製品需要に対応するという立地環境を生かした〝地産地消〟の役割をしっかりと果たしていきたい。

 綾瀬工場では都市型リサイクル「資源循環で未来をつくる」をテーマにスクラップの地産地消を通じ、建設会社や需要家の環境CSRに貢献する活動も継続している。自治体や需要家の賛同もいただき、着実に実績が出ている。

 市川工場のカラー鋼板に関しては、規模の大きな同業他社との差別化を図るため、当社は小回りの利く特性を生かし「オンデマンド戦略」を強化。需要家の要望に応えていく。また、自社成形加工品のメニューも増やしていくことで、素材から製品の一貫メーカーとしてサービスを強化していく。

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