アルミ厚板、有機EL製造装置向け停滞で店売り市場に一服感

 アルミ厚板の店売り市場に一服感が台頭し、一時の繁忙状況が薄らぎ始めている。液晶製造装置向けは堅調が続いているものの、半導体製造装置向けが春先から調整局面に入っているほか有機EL製造装置向けも韓国の最終ユーザーが大規模投資を一部延期しているため荷動きの勢いが減速している。それでも半導体製造装置向けが夏以降に復調するとの見方が濃厚なため、店売り厚板需要は年内も高位安定を続けそうだ。

 A5052やA6061などのアルミ厚板は圧延メーカーから流通、加工業者を経て半導体製造装置やパネル製造装置、精密機械メーカーなどへ納入される。セットメーカーまでのサプライチェーンが長いため、需要旺盛期は納期が厳しくなり、停滞すると「高速道路のように大渋滞」(問屋筋)となるのが特徴だ。

 アルミ厚板需要はこの数年間、右肩上がりの勢いが続いているが昨年は突出して引き合いが強まった1年だった。半導体はIoTやAI、5世代通信(5G)、自動車の電装化などで需要のすそ野が広がっているほか、液晶や有機ELも韓国や中国メーカーが相次いで増産投資していることから製造装置需要が急増。競争力がある日本の製造装置メーカーに注文が集中した結果、製造装置の材料となる日本の高精度アルミ厚板の引き合いも強まった。

 こうした環境に変化が出たのは今年に入ってから。液晶製造装置向けは中国メーカーの増投資が計画通り進ちょくしているため好調を維持しているが、有機EL向けは米国スマホ大手が昨年発売した有機EL採用スマホの販売低調によって、韓国有機EL大手の生産計画が減速。予定していた増産計画が「1年程度後ろにずれ込んでいる」(流通筋)という状況で「この案件が動き始めるのは、大きな変化がなければ少なくとも来年から」(同)という。

 半導体製造装置向けは半導体メーカーから製造装置メーカーへの注文は高水準が続いているものの、「半導体製造装置メーカーが利用する部材の一部に大幅な納期遅れが発生しており、製造装置の組み立てに影響が出ている」(流通筋)ため、アルミ板の荷動きが停滞している。春先に漂い始めた調整色は「秋口まで残りそう」(同)との指摘が聞かれている。

 今年のアルミ厚板の店売り市場では〝半導体、液晶、有機ELの3分野が好調だった昨年の販売実績を下回る可能性が高い〟との認識が一般的になり始めているが、「あくまでも急増した昨年比での減少。水準としては依然として高いレベルを維持している」という状況で、極端な悲観論は聞かれない。目先も年内は堅調を維持することとなりそうだ。

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