南島原市の未来図 松本市政2期目へ・下 人口定着 支援の拡充、特色発信が鍵

 「都会の待機児童問題がうそのように、こっちでは難なく保育園に預かってもらえる。子育てしやすい」-。今月上旬の昼下がり、有明海を望む南島原市南有馬町の山あいにある民家の庭。南島原への若い移住者家族の言葉に、住人の高松由紀子さん(67)と夫(73)がうなずく。
 由紀子さん夫妻も移住者だ。熊本県や大阪府などで長く働き、リタイア後の2010年、自然豊かで温暖な南島原の土地柄に引かれ、この地に移り住んだ。建設会社で働いた夫は現在、若い移住者夫妻宅のリフォームなど大工仕事を、材料費だけのほぼボランティアで請け負う。
 由紀子さん夫妻は、南島原の魅力発信のため市が推進する農林漁業体験民泊にも協力。修学旅行生らを受け入れ、触れ合いを楽しむ。現在、市内170軒以上の家庭が参加する民泊は修学旅行生だけでなく、地元住民とつながる大きなきっかけになったという。
 人口流出に歯止めがかからない中、移住・定住促進は多くの地方自治体と同様、南島原にとっても喫緊の課題だ。再選を果たした松本政博市長も2期目の公約に掲げるが、現状は厳しい。06年、旧南高8町が合併して誕生した同市の人口は現在約4万6千人。発足当時から約9500人減った。市は移住・定住対策の一環として、検討者向けのお試しツアーを開催し、空き家物件の情報発信などを続けているが、県や同市を窓口に南島原へ移住した実績は合併後12年間で27世帯39人にとどまる。
 移住、定住にはハードルがある。一つは働く場の問題だ。古里の南島原で、妻子を養いながら介護関係の職に就いていた40代男性は一昨年、待遇の良い職場を求めて福岡へ転居した。「古里を離れたくはなかったが、地元では仕事が限られる」と胸の内を明かす。一方で、南島原に移住しても、「高齢の移住者は長年かけて生活基盤を築き、退職金や年金があるのでまだいい。でも、若い移住者はそんなにゆとりがない」(由紀子さん)。仲間内では、移住物件のリフォーム費補助の拡充を求める声も多いという。
 「自然や子育て環境など『南島原でどんな暮らしができるか』という具体的イメージ、特色を強く発信することが大事」。こう指摘するのは、NPO法人ふるさと回帰支援センター(東京)の高橋公理事長(70)だ。「空き家を自治体が借り上げて改装を済ませ、近隣自治体とタッグを組んで移住後も長く支援する団体を立ち上げるなど『安心して暮らせますよ』とPRしないと、競争で埋没してしまう」と指摘する。
 2期目に臨む松本市長は「人口減少の課題に特化した専門の班も早急に設置したい」とし、対策を急ぐ構えだ。南島原の未来図をどう描くか。2期目の手腕が問われる。

移住仲間の家族と歓談する高松さん夫妻(右側)=南島原市南有馬町

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