DV被害者が抱える「追跡の恐怖」…住所の閲覧制限、自治体の基準に不統一な面も

写真はイメージです(プラナ / PIXTA)

DV(ドメスティックバイオレンス)被害者の住所情報を自治体が閲覧できないようにする「閲覧制限」(支援措置)について、全国の政令指定都市や中核市、特別区を対象にした自治体アンケートの結果がまとまり、6月13日に東京都内で発表された。アンケートを実施した一般社団法人エープラスは、基準が全国的に統一されていない部分があると指摘した。

●回答した自治体の76%が「不統一」と認識

アンケートには、41自治体が回答したという。一部を紹介すると、支援措置の制度について担当課・担当者はどのような認識かという質問に対し、「重要な制度であり、被害者の住所情報を守るために全力をあげている」を選んだ割合は92%で最多だった。ただ、「支援対象者が増加しており必要でない人が受けているように思う」が24%にのぼった。

DV加害者に依頼された弁護士に対して、「支援措置対象者(DV被害者)の住所情報を依頼者に知らせない」と一筆を取った後、弁護士に直接交付することはありえるかという質問には、80%の自治体が「実施要領上、そのような取り扱いはないのでしない」を選んだ。「ありえると思うが、していない」が15%で、「ありうると思うし、している」が2%だった。

総務省は2018年3月28日付で、DV加害者から依頼を受けた特定事務受任者(弁護士や司法書士など)から住民票の写しなどの交付請求があった場合、加害者本人から申し出があったのと同視するとの通知を各自治体に送っている。

通知を知っているか問うたところ、「知っている」が98%で「まだ知らない」が2%だった。(住所情報の)交付事務について判断基準が全国的に不統一と思うかについては、「不統一であり至急改善が求められる」が39%で、「不統一の部分もあるが現状で大きな問題はない」が37%だった。あわせて76%が不統一だと認識している現状がわかったという。

●支援団体「ずっと逃げ隠れしないといけないのか」

発表後の意見交換会で、斉藤秀樹弁護士は、「弁護士が知っていることが依頼者に伝わるというのは当然ありうる。役所との間で依頼者に伝えないという誓約書を交わしたからといって、依頼者に伝えないというのを期待するのは役所の勝手な思い込み。実務上、そういうことを前提とした制度を作らないといけない」と指摘した。

お茶の水女子大の戒能民江名誉教授は「DVは追跡の恐怖がある。(対策が)被害を受けた側が逃げ通さないといけないという考え方に立っているような気がする」。支援団体の女性は「ずっと逃げ隠れしないといけないのかと思っている被害者がたくさんいる。ため息まじりの相談を聞くことも多い」と話した。

意見交換会には、神奈川県逗子市のストーカー殺人事件で妻を亡くした男性も出席。男性は「もともと都内にいたのを、海や山があって過ごしやすいなというところで逗子に住んだ。市役所からの謝罪や報告がしばらくなくて、すごくいい加減で。誠意をもった対応をしてもらっていれば裁判を起こすこともなかったかもしれない」と語った。

※アンケートに協力した41自治体(エープラスによる)

<政令指定都市=13>札幌市、新潟市、さいたま市、千葉市、静岡市、浜松市、京都市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、北九州市、熊本市

<中核市=21>旭川市、函館市、青森市、秋田市、いわき市、郡山市、富山市、宇都宮市、川口市、豊田市、岡崎市、豊橋市、大津市、豊中市、倉敷市、福山市、下関市、呉市、高松市、高知市、那覇市

<特別区=7>板橋区、葛飾区、杉並区、中央区、千代田区、豊島区、練馬区

(弁護士ドットコムニュース)

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