弘前ねぷたの鏡絵、人気トップは「九紋龍」

【写真左】歌川国芳作「通俗水滸伝豪傑百八人之一個 九紋龍史進 跳澗虎陳達」。9匹の龍の刺青(いれずみ)を入れた九紋龍が、相手を棒で組み伏せている様子が躍動感たっぷりに描かれている【写真右】花和尚と並び2位になった「一丈青」

 青森県弘前市立博物館が、これまでほとんど行われたことのない、過去40年以上にもわたる大がかりな弘前ねぷたの全台調査結果をまとめた。1974(昭和49)年から昨年までの2885台(74~82年の小型ねぷたを除く)のうち、最も多く鏡絵に用いられたのは、水滸伝(すいこでん)の代表的ヒーロー「九紋龍」で、上位4位までを水滸伝の登場人物が占めることが分かった。同博物館では現在、水滸伝を描いたことで知られる浮世絵師・歌川国芳の特別展が開かれており、同館は「国芳が弘前ねぷたに与えた影響力があらためて浮き彫りになった」と話している。

 ねぷた絵師でもある同館職員の川村快之(よしゆき)(号・麗巴)さん(42)が、弘前市の出版社路上社(安田俊夫代表)が83年から毎年発刊している「弘前ねぷた速報ガイド」や、新聞記事の記録を基に、鏡絵、見送り絵、絵師などの項目別に統計化した。ねぷた絵を後世に残したいとの思いでガイドを作り続ける安田さんは「記録を有効に活用してもらい、興味深いデータにしてくれたのはありがたい」と語る。川村さんは、今夏6年ぶりに同博物館で開くねぷたの企画展で、データを活用する考えだ。

 2885台のうち、中国の話に題材を取ったものは7割近い1940台。このうち、千人以上の人物が登場する三国志を描いたものは計952台。梁山泊(りょうざんぱく)に集った108人のアウトローたちを描いた水滸伝のねぷたは計826台で、総数では三国志を下回った。ただ、「弱きを助け強きをくじく、個性際だった人物たちを描いた、今で言えばヒーロー戦隊もののように痛快な」(川村さん)水滸伝の人物の人気が、より高い傾向で表れた。

 和の題材で最も多かったのは「津軽為信」の91台で、地元を代表し唯一ベストテン入り。以下「川中島」「酒呑童子」「羅生門」「弁慶」などだった。国芳は、当時翻訳読本がベストセラーとなっていた水滸伝の豪傑たちをいち早く絵にし、「武者絵の国芳」と呼ばれ絶大な人気を誇った。川村さんは「浮世絵は当時、津軽にも江戸みやげなどとして持ち込まれていたとみられる。国芳の水滸伝は、その豪快さがねぷた絵にぴったりで、大きな影響を与えた」と説明する。

 一方、同じく1974年からの絵師の揮毫(きごう)台数ランキングでは、三浦呑龍さん、八嶋龍仙さんの双璧がいずれも200台以上で上位に名を連ねた。近代弘前ねぷたの様式美を確立した故竹森節堂さん、故石澤龍峡さんの2大巨頭亡き後をけん引した、故長谷川達温さん、故阿部義夫さんらのビッグネームも見える。

 三浦さんは、水滸伝など国芳の作品について「絵師自身の芸術的な主観よりも、見る側がどういう絵を欲しているかを大事に考えて描いている点が素晴らしい。1年間ねぷた絵を待ってくれている人たちのことを思うとき、私たちもそうあるべきだと考えている」と語る。三浦さんは17日午後2時から、同博物館で国芳がねぷた絵に与えた影響などについて作品解説を行う。

【2018年6月15日(金)】

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