ケフィア事業振興会 会員向け支払いが遅延、数万人に影響か

 公称220万人の会員を抱え、年商1,000億円を誇る(株)ケフィア事業振興会(TSR企業コード:298080745、東京都千代田区、以下ケフィア)が、今年2月から会員への支払いが遅延していることがわかった。
 6月上旬、ケフィアの担当者は東京商工リサーチ(TSR)の取材に対し、「5月に新システムを導入したが、顧客データの移行に時間を要している。今も(返金)処理が相当数できていない」と支払い遅れを認める一方、「資金繰りに問題はない。取引先に支払いは遅れていない」とコメントした。
 ケフィアは、かぶちゃん農園(株)(TSR企業コード:296009326、長野県飯田市)などグループから農水産加工品を仕入れ、会員制通販サイト「ケフィアカルチャー」で販売。また、会員が1口5万円で売買契約を結ぶ「オーナー制度」やケフィアと金銭消費貸借契約を結ぶ「サポーター募集」なども行っている。
 一部会員は、支払いを求めてケフィアを提訴している。ケフィアの本社不動産には会員とみられる個人が、今年4月以降、4件(6月13日現在)の仮差押を設定、トラブルが表面化している。

売上高1,000億円を超えるまで急成長

 ケフィアは2009年設立。グループ約40社を統括するケフィアグループの中核企業だ。
 ケフィアの2013年7月期の売上高は65億5,195万円。ところが、わずか4年後の2017年7月期には15倍増の1,004億252万円に急伸している。ケフィアの担当者は、「通販事業の売上高は約100億円、残り900億円がオーナー制度やグループからの経営指導料」と説明する。

ケフィア事業振興会 売上高・当期純利益推移(7月期)

ケフィア事業振興会 売上高・当期純利益推移(7月期)

会員向けオーナー制度とサポーター募集

 急成長の鍵は「オーナー制度」だ。6月13日まで募集していた柿のオーナー制度は1口5万円。1年後に「スペシャルボーナス」と「リニューアルボーナス」を加算した5万5,500円、または柿を5万7,600円分送付される。
 この契約内容は複雑だ。関係者の話や訴訟記録などによると、オーナーとケフィアは買戻特約付売買契約を結ぶ。このうち金銭の買戻契約は形式上、オーナーが契約後にケフィアから商品を購入する。契約期限までにケフィアがその商品を買い戻すことでオーナーに「買戻金」と「ボーナス」を支払い、買い戻した商品はケフィアが一般消費者や会員に販売する。
 関係筋によると、ケフィアは銀行から資金を調達していないという。主な資金の調達方法は、会員がケフィアに貸し付ける「サポーター」制度だ。「新勘定システム」サポーター募集案内によると、契約期間が今年6月から5年間で1口30万円、総額15億円を募集している。
 1年目の利息は年6%と特別加算2%の計8%、3年目以降は計10%。ケフィアは、「設備投資や管理費などの資金を調達する目的の金銭消費貸借契約」とした上で、「金融商品取引法上の有価証券には該当いたしません」と説明している。

オーナー制概略図

オーナー制概略図

会員へ支払い遅れ、提訴も

 TSRは、今年2月にケフィアが会員に送付した「旧来システムから新金融系システム移行に伴うお振込み遅延のお詫び」と題する書面を独自入手した。書面には振込の遅延に対するお詫びのほか、「改良システム導入後も大きな障害と遅延が続いている。新しい金融系システムの運用開始が5月上旬を見込み、1月分の支払いを5月中旬以降より順次支払う」旨が記載されている。
 これに対し、一部会員がケフィアに支払いを求め、提訴に踏み切った。関係筋によると、提訴前や提訴後にケフィアが支払いに応じるケースもあるという。

異例の不動産登記と仮差押

 6月13日、TSRはケフィア名義の本社不動産の土地と建物、各1筆の不動産登記簿(全部事項)を取得した。土地895ページ、建物1,273ページに及ぶ。
 登記簿の乙区は、ケフィアを債務者とした年利3.1%の金銭消費貸借で埋め尽くされている。権利者(債権者)欄には、一般個人名が記載されている。建物登記の担保番号は5,177件に達し、すでに亡くなり、家族などが相続したケースも120を超える。
 金銭消費貸借契約は、2015年4月ごろまでに期限が到来したもようで、これら登記は解除を原因としてほとんど抹消されている。
 だが、2017年8月に大手不動産会社の関連企業が、かぶちゃん農園を債務者とした極度額5億4,000万円の根抵当権を設定。2018年2月に、極度額は9億2,400万円へ変更されている。
 また、2018年4月以降、合計4件の仮差押登記が個人債権者により設定されている。

ケフィアの本社不動産登記簿(土地・建物全部各事項1筆)

ケフィアの本社不動産登記簿(土地・建物全部各事項1筆)
 ケフィアのパンフレットには「生まれ変わるケフィアグループにご期待ください」との見出しで、事務処理の遅滞に「社員一同で猛省」すると書かれている。
 TSRはケフィアに追加取材を申し込んだが6月14日、「社長が取材を拒否している」と連絡が入った。また、同日現在、ケフィアの商業登記簿は事件処理中で閲覧できない。
 ケフィアに損害賠償請求した会員の代理人を務める中森麻由子弁護士(リンク総合法律事務所)は、「電話相談も多く、社会的に影響が大きい。ケフィアの真摯な対応が求められる」とコメントした。
 ケフィアの会員は高齢者も多い。システムトラブルや支払遅延を真剣に受け止め、丁寧な対応が求められる。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年6月18日号掲載予定「Weekly topics」を再編集)

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