一人のアーティストとして 音楽つくる喜びを

ASKAさんインタビュー(2)

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稲葉拓哉

共同通信写真部記者

稲葉拓哉

共同通信写真部記者

2012年入社 名古屋写真映像部を経て現職

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 ▽音楽で夢を見られない世の中に

 ―「Weare」の構想はいつから。

 音楽配信の構想は20数年前からありました。その頃、ライブのステージで「いつか、なんらかの通信方法によって音楽がリスナーの手元に届けられる時代が来る」と話していました。
 
 ―CD全盛期だった時代になぜそう考えたのですか。

 自宅に有線(放送)があったんです。すごく便利でしたが、自分の好みじゃない曲もたくさん聞こえてきました。当時配信っていう言葉はありませんでしたが、そのうち好きなアーティストの楽曲が10円、20円の低価格で手元に届くビジネスが成立するだろうと思いました。今考えると、これはストリーミングのことですよね。そして同時に「ミュージシャンが生活できない時代が来る」とも話していました。

 ―どういうことでしょう。

 アーティストが自分の音楽を世の中に知ってもらうために、ストリーミングに加入してシングル(曲)を発表するのは良い手段だと思います。聞き放題ですので、リスナーも自分好みの音楽を求めて新しい音楽に触れやすいでしょう。しかし、全ての楽曲を聞き放題で発表したら、制作費に見合う収益は入ってきません。
 すると、スタジオで活躍しているプロのミュージシャンはいなくなってしまいます。技術のある人たちがいなくなると良い作品は生まれません。

 ―どうなると考えていますか。

 ライブをやってお客さんが集まるような確立したものがある人たちは別です。が、これからを担う若い人にとっては、音楽では食べられない時代に突入したと思います。ストリーミングに加入することでアーティストに還元される収益は少ないですから。アナログからデジタルに変わって、音楽業界にとっては危機の時代が始まったと思わなければいけません。

 ―デジタルの時代、音楽活動に可能性を見いだせますか。

 今までアーティストはどこかのレーベルに属して音楽活動をしてきました。しかし、今は簡単に音源をウェブにアップロードできる時代です。これからは音楽を発表する環境を自分自身で足元から作り上げ、活動する時代だと思います。

 ―ハイレゾの普及以外にも「Weare」の狙いはありますか。

 ええ、音楽配信サイトとして若いミュージシャンが楽曲を発表する場を提供します。
 曲を出した人には、売れた分の収益をきちんと還元する仕組みにします。これが最大の目標です。誠心誠意、そこに取り組みたいです。
 スタッフの給料を除いた分がアーティストに還元されます。僕も自分の音楽で食べていきますよ。音楽は買うもの。そして、それがアーティストの次のアルバム制作や活動の支えになるということを世の中に発信したいと思いました。
 
 ―現在は何人のアーティストが所属していますか。

 曲を出しているアーティストはいますが、所属するという概念はありません。これが形となった今、僕も代表ではなく「Weare」に集う一人のアーティストに戻るつもりです。

 ―「Weare」から音楽を配信するにはどうしたらいいのでしょう。

 今後オーディションなどをしていくつもりです。既にサイトに直接連絡してくれる方もいて、若いミュージシャンからクラシック界の方まで音源を送ってくれました。「ミュージシャンの足場を崩すような世の中にしてはいけない」という思いに賛同してくれる人たちに集まってもらいたいですね。

 ▽薬ではできなかった曲作り

 ―現在、毎月シングルを発表されていますね。

 ええ、立て続けに楽曲制作することで、イマジネーションであったり、自分のスタイルであったりっていう感覚がどんどん増してくるんです。楽曲が出来上がるのがどんどん早くなっていくんですね。日にちが空くと、また忘れてしまいます。なるべくそのスパンを空けたくなかったんです。
 だから今はとっても音楽に敏感になれていて、作曲、作詞に対してすごく、研ぎ澄まされている状態です。それに昨年、毎月シングルをリリースするんだっていうことを世の中に発表しちゃいましたし、しちゃったからにはやらなきゃいけないんです(笑)

 ―覚醒剤を使用していた時期とは違う?

 薬に出会ってしまってから4年間っていうのは楽曲が全然生まれていません。薬を使うと一つのことに集中できず、すぐに他のことを考えてしまいます。そして、他のことを考えている最中にまた別のことを考えてしまう。最初に曲を作ろうと思っていたはずなのに、気がつくと全然違うことに集中しているんですね。「はっ」と我に返って「あ、いけない、いけない曲作んなきゃ」と、結果的に曲なんかできないです。若いミュージシャンには、僕が声を大にして言わないといけないことです。薬なんて使ったら曲は絶対できないですよ。

 ―そういった時期を乗り越えた今は楽曲制作をどう感じていますか。

 そうですね、作る楽曲が本当の到達点にたどり着いた時の喜びは格別ですから。それによって弾みがついて、次はじゃあこんな曲を作ってみようと。一人のミュージシャンとして曲を作る喜びと、それを共有してくれる人がいることの喜び、そして曲が広がっていき共有してくれる人たちが増えていく喜びを今は実感しています。

 ―これからの音楽業界を担う若い人たちにメッセージはありますか。

 メッセージはないですね。若いミュージシャンと会ったときに必ず言う言葉があるんですよ。「一緒に頑張ろう」って。同じ土俵に乗ってしまったからには、発信した音楽が評価される立場は一緒ですから。そこには新人もベテランもない。どちらも本気です。だから僕は若い人とは必ず「一緒に頑張ろうね」と言って別れますね。それだけしかないです。
 僕もこれから、自分の活動を通して音楽の素晴らしさを世の中に伝えていきたいですね。(終わり、聞き手・共同通信写真部=稲葉拓哉30歳)

▽取材を終えて
 インタビューにあたり、ストリーミングサービスを運営する企業にも取材を申し入れた。あたたかく対応していただき運営するライブイベントにも招待してくださった。ライブには老若男女が集まり、若いアーティストの演奏に耳を傾ける。手軽に音楽が聴けるストリーミングだからこそ、さまざまな音楽と出会うきっかけが生まれるのだろう。「定額の配信サービスを始めることで、違法アップロードをなくしたい」という思いからこの企業の創業者はサービスを始めたという。
 会話の中でASKAさんが「ストリーミングとハイレゾの双方がそれぞれの道を歩んでいけたら」と話す姿がとても印象的だった。インタビューと写真撮影を終えてビルから出ると、夕暮れの空がとても綺麗だった。音楽活動に情熱を注げるASKAさんの楽曲がこれからも楽しみだ。

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ハイレゾ普及に尽くしたい 事件後見えたものは ASKAさんインタビュー(1)

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