楽天・梨田監督辞任 昨年後半の失速を改善できなかった編成・補強にも問題?

楽天の監督を辞任することが発表された梨田昌孝氏【写真:荒川祐史】

昨年は首位争いをしながら8月、9月に大失速

 楽天の梨田昌孝監督が辞任した。梨田監督は5月25日に史上16人目の800勝を記録したが、チームは開幕から低迷。5強1弱と言われ、立て直しに苦慮していた。

 梨田監督は2016年、大久保博元監督の辞任を受けて楽天の7代目監督に就任。2016年は62勝78敗3分、勝率.443で5位に沈んだが、2017年は77勝63敗3分、勝率.550で、3位となり、チーム史上3回目のポストシーズン進出を果たした。

 しかし今季は開幕カードで1勝2敗と負け越し、以後も黒星が先行。6月16日時点で21勝41敗1分、勝率.339、首位西武から16.5差、5位のロッテからも9.5差引き離され、断トツの最下位になっていた。

 今季の低迷は、昨年後半からの失速を引きずっていると考えられる。2017年からの月間のチーム成績、打率、防御率を見ていこう。カッコ内はリーグ順位。

〇2017年
3・4月21試合16勝5敗0分 勝率.762(1)
打率.281(1) 防御率3.11(3)

5月23試合16勝7敗0分 勝率.696(2)
打率.284(2) 防御率2.78(1)

6月22試合12勝9敗1分 勝率.571(2)
打率.228(6) 防御率3.38(3)

7月20試合13勝7敗0分 勝率.650(3)
打率.271(2) 防御率3.57(3)

8月26試合7勝18敗1分 勝率.280(6)
打率.228(6) 防御率4.31(4)

9・10月31試合13勝17敗1分 勝率.433(5)
打率.240(5) 防御率3.33(1)

〇2018年
3・4月26試合6勝19敗1分 勝率.240(6)
打率.216(6) 防御率4.24(5)

5月23試合11勝12敗0分 勝率.478(4)
打率.216(6) 防御率4.22(6)

6月14試合4勝10敗0分 勝率.286(6)
打率.224(6) 防御率3.10(3)

 2017年は、打線が好調で、ソフトバンクと首位争いをしながら6月の交流戦に突入。7月までは優勝をうかがう勢いだったが、8月に7勝18敗1分と失速。9月も負け越し、辛うじてクライマックスシリーズには進出したが、梨田前監督自身も「前半と後半では違うチーム」というほどの落ち込みぶりだった。オフには大きな補強をせず、開幕を迎えたが、昨年後半からの低迷が続いた形だ。

茂木&外国人トリオが大きく落ち込み OPS数値大きく落とす

 その要因を投打で見ていくと、打線では「茂木+外国人3人組」の落ち込みが大きい。2016年に入団し、遊撃手の正位置を獲得した茂木栄五郎は2017年には本塁打が7本から17本と急増し、主力打者へと成長した。これに、史上初の「3人全員規定打席到達」を果たした外国人選手が打線を引っ張った。しかし今季はこの4人の成績が大きく落ち込んでいる。

 打撃の総合指標であるOPSで見ると、
茂木栄五郎 2017年.867 →.636 
ウィーラー 2017年.835 →.678
ペゲーロ 2017年.846 →.744
アマダー 2017年.729 →.733

 アマダーを除く3人がOPSを大きく落とした。そのアマダーも故障で36試合しか出場していない。

福山、ハーマン、松井の「勝利の方程式」も崩壊

 それ以上に深刻なのが救援投手陣だ。昨年は、ソフトバンクのサファテと中盤までセーブ数で競り合った松井裕樹、7月11日まで防御率0.00だった福山博之、ハーマンなど、優秀な救援陣が揃い「勝利の方程式」ができていた。しかし、今季はそれが崩壊した。

〇2017年
松井裕樹 33S 5H 防御率1.20
ハーマン 1S 33H 防御率2.72
福山博之 7S 23H 防御率1.06
高梨雄平 0S14H 防御率1.03
森原康平 0S13H 防御率4.81

〇2018年
ハーマン 5S 8H 防御率1.64
松井裕樹 2S 5H 防御率5.01
高梨雄平 1S4H 防御率4.08
池田隆英 0S 4H 防御率5.91
宋家豪 0S3H 防御率1.69
福山博之 0S 3H 防御率6.88

 辛うじてハーマンが救援陣を支えているが、松井、福山ともに大きく成績を落としている。

 昨年8月以降の楽天の失速は、松井裕樹の戦線離脱によるところが大きかった。貢献度は極めて高いが、すでに昨年後半から登板過多による不安があった。しかしチームは有効な補強をすることができず、不安を抱えたままで開幕を迎え、低空飛行を続けたのだ。

 梨田前監督の采配に問題がなかったとは言えないが、楽天の今年の低迷は、チーム編成、補強に大きな原因があると言えよう。

 チームは若い平石洋介監督代行が引き継いだが、今季の成績というより、来季以降の立て直しを視野に入れて、再建を目指すべきだろう。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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