子どもに聞かれる前に… 大人が知らないと恥ずかしい「国民投票」のルール

連日、憲法改正の手続きを定める国民投票法改正案に関してのニュースが報じられています。14日には、改正案について協議する予定だった衆院憲法審査会の幹事懇談会が、IR法案を巡る与野党の対立の影響で開催が見送りされるなど、改正案の成立への見通しは不明なままとなっています。実際に国民投票が実施されるかは未定ではありますが、今後さらに国民投票をめぐる議論が活発になっていくことも考えられます。

実は、憲法改正の是非を問う国民投票では公職に関する選挙とは異なり、18歳未満の若者も自由に投票を呼び掛ける活動を行うことができます。
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いざ、憲法改正の国民投票が行われることとなった時に、生徒たちが「自分の意思を表明する権利」を行使することのできる環境が作られているのかどうかを、ごく小規模ですが高校で社会系科目を担当される先生方を対象に実施したアンケート調査結果から確認してみましょう。(調査主体:けんみん会議。調査実施時期:2018年2月。高校で社会系科目を担当する14名(勤務先は8都府県に所在)の方から回答を受領)

3割強の先生が選挙運動と同じルールだと認識

国民投票運動が衆議院議員選挙等の選挙運動と同じルールで行われるかどうかを尋ねたところ、「同じルールで行われる」が36%、「同じルールで行われない」が64%でした。もちろん、正解は「同じルールで行われない」です。

賛成・反対を問わず、国民投票に向けて自分の意見を表明し、自由に議論することのできる「生徒たちの権利」を守るためにも、今後さらなる情報発信の強化が求められそうです。

戸別訪問が認められていることを知っている先生は2割強

さらに詳しく、具体例を挙げて、「公職における選挙では禁止されているけれども国民投票では認められる活動」についての認識を尋ねたものが設問2です。

もっとも多くの先生から「実施できる」と回答があったのが「電子メールも含むインターネットでの活動」で、半分の先生が実施できると判断しています。なお、選挙では、「電子メール」の使用が認められていません。

反対に、最も「実施できる」との回答が少なかったのが、「戸別訪問」と「20時以降の屋外での活動」です。いずれも、「選挙運動の禁止例」として取り上げられることが多い事例であり、その分、国民投票運動でも実施できないと判断された可能性があります。

18歳未満でも投票運動をできることを認識している先生は3割弱

さらに注目されるのは「18歳未満でも国民投票運動をできる」と回答した方が3割弱であったことです。国民投票では、投票権こそないものの、子どもたちも自由に意見を表明し、投票を働きかけることができます。子どもたちの周りにいる大人が、国政選挙などの先例に倣うことで、意図せずして子どもたちの権利を不当に制限してしまうことがないように一層の注意喚起が求められそうです。

国民投票の実施が決まってからでは間に合わない可能性も

国民投票運動は、主権者である国民の政治的意思の表明そのものとして、国民一人ひとりが委縮することなく自由に国民投票運動を行い、自由闊達な意見を戦わせる必要があるものと考えられています。国民投票の実施が確実に見通せるようになってから、授業の準備や校則、指導方針の見直しをすればよい、と考えていると、現実の変化に対応できなくなる可能性もあります。

憲法改正の国民投票が、未来の有権者である子どもたちにとっても自由に自分の意見を表明し、この国の未来を選び取っていく機会となるように、今後さらなる情報発信の強化や教育現場での準備が進められていくことが期待されます。

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