【総合力強へ着々、JFEスチールの主要事業と取組み】JFEスチール発足から15年

 JFEスチールは03年の発足以来、高い技術開発力に基づき、独自性や機能性の高い商品開発、需要変化に対応した国内外での製造・販売ネットワーク構築を推進。世界有数のグローバル鉄鋼メーカーとして確固たる地位を築いてきた。今期からは第6次中期経営計画がスタート。「最先端技術による成長戦略の推進、製造実力の強靭化」に取り組んでいく。発足15年を迎え「常に新たな価値を創造し、顧客とともに成長するグローバル鉄鋼サプライヤー」を目指すJFEスチールの〝今〟を紹介する。

海外事業/ミャンマー事務所開設で布石

 JFEスチールの海外事業は「自動車」「エネルギー」「建材」そして「海外鉄源」の4種に大別される。直近で加速しているのが、ミャンマーでのインフラ建材需要捕捉に向けた取り組みだ。3月にヤンゴン近郊で着工した薄板建材合弁、JFEメランティ・ミャンマー(JMM)は、まず2019年末にカラー鋼板ライン(CCL)を、20年1~3月期に亜鉛めっきライン(CGL)を稼働させる予定。現地にはJMM副社長として吉岡道裕氏やJFE商事含め4人を派遣し、立ち上げを進めている。

 さらに5月には21カ所目となる海外事務所として、JFEスチールタイ(社長・岩野利哉氏)のもとにヤンゴン事務所を開設し営業を開始した。JFE商事ヤンゴン支店の一角を間借りし設けたもので、世界の主要鉄鋼メーカーがミャンマーに営業拠点を設けるのは初という。所長には建材センタープロジェクト営業部から橋本健司氏を派遣。ナショナルスタッフ含め2人体制でスタートしている。

 ミャンマーではJFEエンジニアリングが鋼構造物の製作合弁事業、J&Mスチールソリューションズを展開しており、同事業も4月に建屋を増設、加工機能を強化した。JFEグループとして他社に先駆けている国・市場であり、同国の人口1人当たりの鋼材消費量は46キログラムと、今後の成長余地は大きい。輸入鋼材やミャンマー・ポスコなど競合は存在するものの、JFEは今後伸びる高品質な建材需要を掘り起こし、JMMも軌道に乗せていく考えだ。

 海外鉄源プロジェクトでは、4%強を出資するベトナムのフォルモサ・ハティン・スチール(FHS)が順調な立ち上がりを見せている。FHSは高炉一貫で熱延コイルを造る同国初の事業で、5月には第2高炉も操業を開始。火入れ式には経営企画を管掌する広瀬政之常務が出席した。高炉2基体制が本稼働したことで、FHSは年産700万トンの第1期投資が完成した形。ベトナムの熱延鋼板(厚板含む)輸入は17年で929万トンあり、まずFHSは530万トンの熱延ミルで国内需要を捕捉していく方向だ。将来的には、さらなる増強がテーマになるだろう。

 15%出資するインド高炉大手のJSWスチールとは、来年で包括提携から10年を迎える。09年度のJSWの粗鋼生産は600万トン程度だったが、果敢な能力拡張や買収、印内需の拡大で17年度は1627万トンにまで増加した。JFEにとりJSWはインドにおける自動車用鋼板のパートナーという位置付けが主軸だが、持分法適用会社だけに同社の成長を利益で取り込むことができる。JSWは印国内でドルビ製鉄所などの増強、モネット・イスパット&エナジーの買収で21年度にも国内粗鋼生産が2600万トン程度へ拡大する見通し。米国やイタリアといった海外への進出にも意欲的で、JFEには株主としての投資効果も期待できる。

 エネルギー関連で立ち上げが進んでいるのが、アラブ首長国連邦(UAE)のパイプライン用大径溶接鋼管合弁事業、アル・ガービアパイプカンパニー(AGPC、社長・姉崎満氏)だ。工場の建設はほぼ完了し、現在は試運転を実施。8~9月にもドイツのSMSとインドのL&Tによる設備保証試験を行い、10~11月の商業生産開始に向け予定通りに進んでいる。

 このほか新規案件では、メキシコで米電炉大手のニューコアと自動車用溶融亜鉛めっき鋼板合弁事業、ニューコア―JFEスチール・メキシコ(NJSM)の建設が進められている。来年にも稼働を始める予定で、原板は日本とニューコアのバークレー工場(サウスカロライナ州)からそれぞれ供給する。

 また欧州では提携している独ティッセン・クルップがタタ製鉄の欧州事業と統合を計画している。統合新会社とJFEの関係がどう構築されるのかも今後のテーマとなりそう。

国内の製造基盤整備/粗鋼3000万トン体制構築へ

 JFEスチールの東日本製鉄所千葉地区(千葉市)で真新しいコークス炉の稼働準備が進んでいる。2016年度からパドアップ(大規模改修)を実施してきた第6コークス炉B炉団だ。6月下旬にも営業運転に入る見込みで、設備を再び磨き上げる製造基盤整備の取り組みがまた一歩進むことになる。

 JFEはここ数年、経営の重点課題の一つとして製造基盤整備に力を入れている。設備の老朽化に伴う生産性の低下を解消し、国内製鉄所の競争力強化を目指す取り組みだ。

 その柱の一つとなるのがコークス炉のパドアップ。コークス炉は老朽化に伴い生産効率が低下する。コークス不足により割高な外部購入コークスの使用が増え、収益の圧迫要因となっていたことから優先的に対策を講じてきた。

 成果はすでにあがり始めている。前の第5次中期経営計画(15~17年度)の期間中に、千葉地区、西日本製鉄所倉敷地区(岡山県倉敷市)でコークス炉のパドアップを相次ぎ完工。これにより外部購入に頼らないコークスの自給体制に一定のめどがついた。自社で生産するのに比べて割高な外部購入コークスを減らしコスト競争力を強化する。

 現在は千葉6B炉のほか、西日本製鉄所福山地区(広島県福山市)の第3コークス炉のパドアップも実施中。老朽化に伴う生産能力の低下が深刻化する前に先手を打ち、コークスの自給体制を維持したい考えだ。コークス炉の更新が進めば、副次的に生じるコークス炉ガスの回収量も上向くため、エネルギーコストの削減効果も期待できる。

 コークス不足解消にめどが立ったことから焼結機の生産能力対策にも乗り出した。

 具体的には福山地区で1982年に休止していた第3焼結機を最新鋭に刷新する。投資額は約400億円で2019年度の稼働を目指す。焼結鉱の使用を増やし、外部購入している割高な鉄鉱石ペレットを減らす狙いだ。製造コストの大部分を占める上工程への積極投資を引き続き進め、鉄鋼製品の安定供給基盤やコスト競争力を一段と強化する。

 JFEは現行の第6次中期経営計画(18~20年度)の主要5施策の柱の一つに「製造実力の強靭化」を掲げている。製造基盤整備を継続しつつ、生産のボトルネックとなっている設備能力増強もあわせて推進。粗鋼年3千万トン(JFEスチール単体)の安定生産体制の構築が目標だ。

 設備能力の増強は、競争力の源泉に位置づける西日本製鉄所を中心に進める方針。柱の一つとなるのが倉敷地区のスラブ連続鋳造機(年産能力200万トン)新設だ。総額約400億円を投じ20年度下期の稼働を目指す。

 同地区は高炉の出銑能力に余力がある一方、連鋳機の生産能力が不足していた。最新鋭の連鋳機導入で粗鋼生産能力を引き上げつつ、スラブの生産効率向上や得意の高付加価値製品を増やすプロダクトミックス(製品構成)の高度化にもつなぐ考えだ。

 同地区では今後、高炉改修も控えており、当面は大型の設備投資が続くことになる。

 製造基盤整備はエネルギー関連設備も対象。現在、東日本製鉄所京浜地区(川崎市)構内にある「JFE扇島火力発電所」の1号機を更新中だ。16年度から工事を進めており、19年度に稼働させる。同設備は1976年の運転開始から約40年経過し老朽化していた。新設備は高効率発電が可能なガスタービンコンバインドサイクル式(GTCC)で、省エネを通じてコストを削減する。

 製鉄所の基幹システム刷新も実行中だ。人工知能(AI)やIoT、ロボティクスなど先端技術を積極活用し、生産性の向上に役立てる。

 第6次中計では国内設備投資を前の3カ年と比べて約10%(約700億円)上積みし、20年度までの3カ年で8500億円(意思決定ベース)を投じる計画。一つ一つの案件を着実に実行に移し、コスト競争力の強化や安定供給力の向上につなげていく方針だ。

研究開発戦略/高級鋼〝プラスα〟の価値追求

 「1千メガパスカルを超す自動車用ハイテンをはじめ、高級鋼を供給可能なメーカーが中韓を中心に世界で増えている」今月5日、大阪大学・接合科学研究所(大阪府茨木市)で開かれた「JFEウエルディング協働研究所」の開所記念式。JFEスチールのスチール研究所長を務める瀬戸一洋専務は、グローバル競争の激化を改めて指摘し、得意の高級鋼の優位性を維持するには、高級鋼の溶接・接合技術がカギになると強調した。

 JFEは長年にわたり、鉄鋼材料だけでなく、その利用技術まで開発する研究開発戦略をとってきた。溶接・接合技術などの工法はもちろん、鉄鋼材料の特性を最大限に引き出す部品構造に至るまで「鉄鋼材料プラスα」の価値を提供し、高級鋼の競争力向上につなげている。

 この戦略を溶接・接合分野で深化させるために新設したのが「JFEウエルディング協働研究所」。JFEの実用技術と阪大の世界屈指の学術研究を組み合わせ、新たなイノベーションの創出を目指す。

 例えば、自動車分野でニーズが強まっている超ハイテン(高張力鋼板)。今後も車体の骨格・補強部品を中心にさらに適用が増える見込みだが、超ハイテンがより高強度化すると「材料成分が高合金化し、溶接が付かないという課題が出てくる」(瀬戸氏)。

 材料をいくら高度化しても溶接技術が追いつかなければ実用化の道は開けない。JFEは、従来のスポット溶接、アーク溶接、レーザ溶接だけでなく、溶接と接着剤を併用するウェルドボンドや、溶かさずに摩擦熱で接合する摩擦撹拌接合(FSW)といった新技術にも着目する。

 JFEは第6次中期経営計画(2018~20年度)の主要5施策の柱の一つに「最先端技術による成長戦略の推進」を据えている。約500人の研究員を擁するスチール研究所がそのけん引役だ。研究開発投資は3年間で1100億円。前中計比で10%上積みし、次世代自動車向けの超ハイテン開発や低品位原料の有効活用技術開発など将来の競争激化を見据えた基盤固めに力を入れる。

 重点領域の一つとなる自動車分野では超ハイテン関連のほか、電気自動車(EV)など車の電動化対応にも取り組む。モーター用材料となる電磁鋼板のさらなる高機能化を追求するほか、同用途で鉄とは一線を画すアモルファス(非晶質)材料の研究も視野にある。

 車の電動化対応ではJFEグループ各社との連携もテーマだ。JFEミネラルが手掛けるニッケル超微粉、JFEケミカルの球晶黒鉛といった電池材料は電動車の普及でニーズが高まる可能性がある。グループ企業単体ではハードルが高い先導的な研究を、昨年10月に新設したスチール研究所の「機能材料研究部」がバックアップし、グループの総合力を発揮する。

 鉄以外の材料も活用する車の軽量化手法「マルチマテリアル(複合素材)化技術」も研究する。ただ、あくまでベースは鉄鋼材料。すでに薄鋼板に線形状の炭素繊維強化樹脂(CFRP)を接着し剛性を高めた車用ドアを試作した。アルミなどの他素材対抗を狙いにユーザーに提案する。

 一方、プロセス技術開発では二酸化炭素(CO2)排出削減効果の高い新型の高炉原料「フェロコークス」が大きなテーマだ。現在、フェロコークスを製造する中規模パイロットプラント(日産能力300トン)を西日本製鉄所福山地区(広島県福山市)に約150億円かけて建設中。19年度上期の完成後に実際の高炉でフェロコークスを長期に連続使用する実証研究を進め、22年ごろまでに技術確立を目指す。

 製鉄所に先端IT(情報技術)を導入する取り組みにも注力する。データサイエンスとロボティクス技術を融合。「インテリジェント製鉄所」をキーワードに操業ガイダンスによる自動制御や悪環境・複雑作業に対応する知能・協働ロボの開発などを進める方針だ。

建材センター/グループ一体で事業強化

 JFEスチールは15年から品種横断的な建材事業展開をさらに強化。建材センターを中心にジェコスやJFE建材、JFEシビルのグループ各社と国土強靭化、地下土木市場、省力化、海外展開の4つのキーワードを軸に個別のチームを設けて課題を推進してきた。品種別のチームとしては厚板・コラム、建材形鋼、造船用形鋼・レール、鋼管杭があり「マーケットに軸足を置いた体制とすることでJFEグループとしての建材事業展開を深化させてきた」と建材センター長の那須七信専務執行役員は強調する。

 その成果は製品開発や海外展開、プロジェクト対応などで着実に現れている。16年にはジェコスがベトナムに現地法人「ジェコスベトナム」を設立。国内需要のピークアウトを見据えたものだが、両社の連携深化によって一気呵成(かせい)に実現に結びつけた。現在も営業支援を続けており、同国におけるJFEスチールの鋼管杭合弁、Jスパイラルスチールパイプやハノイに昨年設立した建材加工商品販売合弁、アグリメコ&JFEスチールプロダクツ(A&J)などとも連携しながら一体でインフラ需要の開拓・獲得を目指している。

 さらに、製品開発ではジェコス、大林組と鋼矢板を活用した合成地下壁構築技術「J―WALLII工法」を共同開発したほか顧客のニーズに応え08年に生産を中止した直線鋼矢板の生産を再開しこれを用いた土留め用壁体「Jドメール」を展開。JFE建材、加藤建設と共同で開発した合成構造セグメントケーソン工法「大口径アーバンリング工法」の継手部分にも採用された。JFEシビル、ブリヂストンと制振装置「間柱型粘弾性ダンパー」も開発。さらに、ジャパンパイルと先端拡大根固め杭工法を改良した「コン剛パイル工法」を開発するなどJFEグループのみならずゼネコンなどの他の企業も含めたコラボレーションにより、ここ数年で多くの商品を世に展開した。「グループ会社は我々よりもユーザーに近い。連携を深めることで世の中のニーズを集めやすくなり、多くの開発に繋がった」。

 営業面でもJFE建材と共同で堰堤の施主営業などを行なっているほか、デッキプレートの海外展開につながるよう、ベトナムの大学などと基準化への取り組みを進める。さらに、ジェコスのコラム切梁システム「Ecoラム工法」でも試験データや認定などの支援を実施。JFEシビルとも物流倉庫建設のコストダウンにハイテン材を用いて鋼材重量を抑制するなど付加価値向上に協力している。

 今後はJFEグループ一体での建材事業展開をさらに進める。キーワードは従来の4つに加え〝簡易メンテナンス〟を挙げる。「農業では灌漑用水などの水路に用いられた鋼矢板の腐食が激しくなっている。〝簡易メンテナンス〟を志向した商品を開発して世の中の役に立ちたい」。さらに、地滑り対策でも「当社への期待は高い。地滑り抑止杭用ねじ継手『JFEネジール』の改良などを進めていく」。加えて「これまで開発した新工法・新商品をいかに花咲かせるかがカギ」として施主展開や商品PRなどを一体で進める。

 海外展開は「ミャンマーの鉄需拡大に期待が持てる。日本の技術への期待も大きい。JFEエンジニアリングが存在感を発揮しているが、鉄のよさをPRするためJFEグループでセミナーなどを開催している」。既にJFE建材との一体営業によりミャンマーで「アーバンリング工法」が海外初採用されるなど着実に芽は出ている。ベトナムなども「国の発展と共に道路事情が悪化しており立体交差の構築などで狭隘地施工が求められ回転杭の商機が出てきそうだ」とする。東南アジアなどでインフラ需要は拡大しており「鉄化を進め地道に花開くのを待ちたい。そのための取り組みを一体となって行っていく」。

ワークスタイル変革/勤務間インターバルなど試行

 優秀な人材の確保、生産性の向上、イノベーション(技術革新)の創出などを狙いに、働き方を見直す動きが広がっている。JFEスチールは2017年を「ワークスタイル変革元年」と位置づけ、従来の仕事の仕方を抜本的に見直し、新たな価値を創造できる働き方を模索する取り組みを本格的に始めた。

 育児・介護と仕事の両立、ワークライフバランス(WLB)の追求など社員ニーズの多様化に加え、製造基盤強化、海外展開の加速といった経営課題に対応するうえでも、創造的な仕事を通じて生産性を高めることは避けて通れない。こうした思いを込めて「変革元年」と位置づけた。

 17年から取り組みを開始した主な施策は、(1)個人別定時退社日の導入(2)勤務間インターバル制度の試行(3)年次有給休暇の取得促進(4)在宅勤務制度の試行(5)男性社員の育児休暇取得促進――など。年休の取得促進などはこれまでも取り組んできたが、明確な目標を設けて、活動を強化したのが特徴だ。

 個人別定時退社日は、一般勤務の全社員が対象。社員は翌週の定時退社日を宣言する。週1日以上が目安だ。仕事の仕方に対する意識改革を促す効果が見込め、仕事にメリハリがつく。

 勤務間インターバルは昨年7月から試行的に実施。終業から翌日の始業までの休息時間(インターバル)を十分に確保することで、疲労回復や心身の負担軽減をはかってもらう。トライアルの実施からまもなく1年。現在は課題を抽出している段階だ。課題の分析などを経て本格実施の検討に入る。

 有休の取得促進では年間10日以上の取得を目標に掲げ取り組んでいる。現在の平均取得日数は15日程度と全製造業平均の10・1日に比べ多い。だが、職場によっては平均以下のところもある。取得を促進するには奨励日の設定が有効で、今年の大型連休では5月2日を奨励日とした。多くの社員が10連休を確保でき、WLBの充実につながったようだ。

 多様な働き方のニーズに対応した制度の導入も積極的に進めている。インターバル制度と同時に試行を始めた在宅勤務制度もその一つ。トライアル期間中は育児・介護が必要な社員が対象。育児・介護をしながら離職することなく働ける環境づくりが目的で、制度化に向けて調整中だ。

 ワークスタイルの変革では男性社員の育児への参画も大きな課題となる。同社の育休制度は女性社員だけでなく男性社員も対象。通常の育児休業は子どもが1歳になるまでが対象だが、同社では1歳

6カ月になるまで取得できるのが特徴。男性が取得できることを知らない社員も多かったことから、昨年から社内向けのウエブサイトで取得を奨励した。16年度の取得実績はわずか4人だったが、昨年は22人が取得。男性の育休取得への理解は急速に進んでいる。

 働き方の見直しにつながる制度を充実させるのと並行して、関連インフラの整備も進める。代表的なのが事業所内保育所だ。昨年4月に東日本製鉄所・千葉地区で開設したのを皮切りに、今年4月には西日本製鉄所の福山、倉敷両地区でも事業所内保育所を開設した。

 JFEグループはダイバーシティ(多様な人材)の推進を重要な経営課題の一つに掲げてきた。その一環として12年以降、女性社員の採用を積極的に進めてきた。18年4月入社では、全社821人の新入社員のうち女性は103人にのぼった。

 女性社員は製鉄所の現業職場でも活躍の場を広げている。事業所内保育所は、こうした社員の育児をサポートする。4直3交代のシフトが一般的な現業職にも対応できるよう、事業所内保育所では早朝・深夜対応も検討中だ。保育所の整備と合わせ、保育にかかる費用を補助する制度もある。外部の認可外保育所を利用する際に使える制度で、利用料の一部を補助する。外国人スタッフの採用拡大を含めダイバーシティの推進は、グローバル競争を戦ううえで強力な武器となっている。

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