【CH鋼線メーカー、現状と展望2】〈大阪精工〉設備投資、人材教育に注力 異形鋼線や冷間圧造部品強化

 大阪精工は関西大手CH(冷間圧造用)鋼線メーカー。1960年に現本社の東大阪市でねじ用鋼線専門工場として創業し、73年に奈良工場を、2011年には九州工場を新設し、生産拠点の拡充を図るとともに、異形鋼線、冷間圧造部品、軸受用鋼線などの製造を手掛け、業容を拡大している。また、国外では、米国サウスカロライナ州に冷間圧造部品メーカーのAPT社を設立、さらに米国ミシガン州のCH鋼線メーカーGBP社、中国浙江省の神鋼特殊鋼線(平湖)、中国江蘇省の神商大阪精工(南通)、メキシコのKobelco CH Wire Mexicana, S.A.de C.V.に出資することでグローバル供給体制を構築している。

 澤田社長は「多種多様なCH鋼線の供給だけでなく、冷間圧造部品や異形鋼線など幅広い製品・技術を有することが当社の強みだ」と語る。大阪精工の17年12月期は増収増益となり、出荷量は過去最高だった。同社の売上高の8割以上は自動車関連向けで好調が続いており、本社・奈良・九州の3拠点では足元でも高稼働が続いている。自動車向けだけでなく、建機・産機向けなども堅調で、「今期も条件がそろえば、増収および過去最高の出荷量が見込める」という。

 課題は人手不足と多様化するニーズへの迅速な対応。同社は定期採用しているが、需要が旺盛なこともあり、各拠点で慢性的な人手不足が続いている。そのため、自動化・機械化に向けた設備投資、研修や資格取得を通した人材育成に注力するとともに、IT活用による業務効率化やトレーサビリティー強化を目的として基幹システムの更新を進めており、課題解決に向け取り組みを進めている。

 設備投資に関しては昨年、九州工場に熱処理炉を1基増設。同工場では今期、硫酸回収装置を導入し、リサイクル活用することで、環境対策、品質安定化、コスト削減の効果を見込む。そのほか、奈良工場では、隣接した1万3千平方メートルの土地を新たに取得。建屋増築により老朽設備の更新、レイアウト変更、物流改善を推し進め、製品の品質向上につなげる。

 「主要な供給先である自動車業界では、EV化、自動運転技術の進展により需要構造が大きく変化する局面を迎えている。軽量化・高強度化に貢献できる製品、加工技術を生かした高精度製品の開発に取り組むことで、多様化するユーザーのニーズに的確に対応し、製品ラインアップの拡充を図ることで事業領域を拡大していく」という。直近では部品加工において、アルミやステンレスを母材とした製品を手掛け、ユーザーから好評を得ている。また、異形鋼線については、製造設備の拡充、ニーズの掘り下げ、用途開発によって需要の開拓を進めている。同社はCH鋼線を主軸としながら、中長期的に、異形鋼線や冷間圧造部品などの事業を強化する方針だ。(このシリーズは不定期で掲載します)(綾部 翔悟)

 会社データ

 ▽本社所在地=東大阪市中石切町5―7―59

 ▽代表者=澤田展明氏

 ▽資本金=4400万円

 ▽売上高=183億円(17年12月期)

 ▽拠点=本社工場、奈良工場、九州工場

 ▽年間生産量=13万8千トン

 ▽従業員=285人

 ▽主要品種=冷間圧造用鋼線、軸受用鋼線、冷間圧延鋼線、異形鋼線・鋼棒、冷圧スラグ、冷間圧造部品、精密二次加工部品

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