県庁舎跡地活用 他の自治体は? コンベンション施設・市役所・公園… 戦後の移転17都県 長崎県は方針未定

 県庁舎が移転し5カ月が過ぎた。県は長崎市江戸町の旧庁舎を10月から解体する予定だが、跡地の整備方針は決めていない。他の自治体はどうしているのだろうか。46都道府県に取材したところ、戦後に庁舎を移転した自治体は長崎県を含め17都県に上ることが分かった。
 17都県のうち、旧庁舎を取り壊し跡地を整備したのが8都県。旧庁舎を修復し、多目的施設などにリニューアルしたのが4県。整備方針が決まっていないなどの理由で跡地を活用していないのは長崎県を含めて5県だった。
 旧庁舎を取り壊した8都県の跡地は▽ホールと会議室を備えたコンベンション施設▽市役所庁舎▽公園・庭園▽バスターミナル-のいずれかに整備していた。
 旧庁舎跡地を公園とした三重県。津市の中心駅、津駅にほど近い約6300平方メートルの敷地は「県庁前公園」と呼ばれ、公園を管理する県職員は「憩いの空間が街中にあるのはいいこと」と話す。ただ、利用状況については「付近の会社員が昼休みに弁当を食べるぐらい」。4月に「JAグリーン公園」に改名したが、「名前が変わったことは、まだほとんどの市民が知らないだろう」と苦笑する。
 旧庁舎を改修しリニューアルした4県はそれぞれ▽県関連の史料を展示するギャラリー▽県の一部の部署の執務室▽多目的施設▽迎賓館-に活用している。
 このうち1924年に建造された石川県旧庁舎は2010年、建物の背面をガラス張りにし「しいのき迎賓館」に生まれ変わった。観光案内所やレストランが入る多目的施設で、県の担当者は「格調ある文化発信拠点になった」と胸を張る。ただ、旧庁舎に近い繁華街の関係者は「県庁が移転し人通りが減った。多目的施設に変わってもにぎわっていない。もっと昼間人口の集客を増やす施設の方が良いのに」と打ち明ける。
 跡地活用の動きが止まっている県もある。1957年に旧庁舎を火災で焼失した秋田県は、跡地の一部を民間に売却したが、それ以外は空き地のまま。2013年まで振興局として使われてきた岐阜県旧庁舎は、建物が残っているが閉鎖している。岐阜県の担当者は「壊す予定はない。どう活用するか考えている」。
 長崎県は16年2月に跡地整備の方向性として▽広場▽交流・おもてなし空間▽文化芸術ホール-の三つを示した。しかし2年以上がたった今も具体的な中身を県民に示していない。県庁舎跡地活用室は取材に対し「ハコモノをつくるだけでなく、どう運用するかしっかり(県議会で)議論することが重要だ」としている。

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