NEDO、次世代蓄電池プロジェクト始動 EV向け、オールジャパンで技術開発

 電気自動車(EV)に搭載される次世代蓄電池「全固体リチウムイオン電池(全固体LIB)」の技術開発にオールジャパンで取り組むプロジェクトが始動した。主導する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が15日、都内で会見した。自動車、電池、材料の各企業と大学・研究機関が連携し、世界に先駆けて全固体LIBの実用化・量産化を図るため、要素技術の確立や共通基盤の構築に取り組む。現行LIBに比べ電池パックの体積エネルギー密度を3倍、コストを3分の1まで改善し、急速充電の実現も目指す。

 また、日本主導による国際規格化を念頭に置いた試験評価法の開発を進めるほか、電動車両が大量普及した将来の充電インフラや資源リサイクルなども考慮した社会システムのデザインも検討する。

 プロジェクトには、トヨタ自動車や日産自動車など自動車・二輪車メーカー4社、パナソニックなど電池メーカー5社、住友金属鉱山、三井金属など材料メーカー14社の計23社、大学・研究機関15法人が参画。プロジェクトを運営するリチウムイオン電池材料評価研究センター(LIBTEC)に各企業から総勢70人の研究者が集まり、全固体LIBの実用化を目指す。

 NEDOが2013~17年度に取り組んだ第1期プロジェクトの成果を発展させ、大型化・高容量化した電池モデルを用いた材料評価技術を開発する。要素技術では「薄い固体電解質層」、「活物質高比率電極」、「正極電極の厚膜化と負極の高容量化」などの開発を目標に掲げている。また、塗膜化、接合、電池化などでの連続プロセスなど量産適用可能な生産技術の開発も進める。

 無機の固体電解質を用いる全固体LIBは、有機の電解液を用いる現行のLIBに対してエネルギー密度を高めても安全性・耐久性を確保できるという優位性を持つ。また、バッテリーパックの冷却システムや発煙・発火時の排気システムなどを簡素化することで体積エネルギー密度を向上することができるため、走行距離の延伸や電池の軽量化なども図れる。

 NEDOでは、現在研究開発が先行している硫化物系固体電解質を用いた第1世代の全固体LIBが20年代後半から主流となり、高イオン電導性の硫化物系固体電解質または化学的安定性の高い酸化物固体電解質を用いた次世代全固体LIBが30年代前半から主流になると想定しており、同プロジェクトでは第1世代と次世代の両方を対象として研究開発に取り組む。

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