JFEスチール発足から15年 JFEスチール進化するグループ経営・特色生かし事業強化

JFE条鋼/5製造所体制で〝REBORN〟/ハーブ野菜など新市場にも進出

 JFE条鋼は2012年4月、旧JFE条鋼を存続会社とし、JFEグループ電炉3社(ダイワスチール、東北スチール、豊平製鋼)を合併して発足した。また、昨年4月には特殊鋼棒線の生産拠点だった仙台製造所をJFEスチールに移管。名実ともに〝条鋼〟の普通鋼電炉メーカーとなった。

 渡邉誠社長は5製造所体制となったことで、〝生まれ変わる〟決意をもつべく「REBORN条鋼」というキャッチフレーズを提唱。さらに10年後を見据えた経営方針として「生まれ変わりから理想に向かって」とのスローガンを掲げた。鉄筋棒鋼や形鋼という過当競争の市場(レッド・オーシャン)での勝ち抜きを前提に、諦めない気持ち(ネバーダイ精神)をもって未開拓の新たな市場(ブルー・オーシャン)に乗り出して「理想の企業」に向かう考え。

 新市場を開拓する取り組みとしては鹿島製造所(茨城県神栖市)内で、子会社によるハーブ野菜専門の植物工場「ハーブ工房」が15年3月に稼働。バジルやルッコラなど累計2万5千キログラム以上を生産している。また、水島製造所(岡山県倉敷市)で手掛けていた電気炉を使った使用済み乾電池のリサイクル処理を今年3月、鹿島でもスタート。廃乾電池リサイクルに関して東西に拠点をもつ唯一の電炉となった。

 今年度からスタートした新中期経営計画では各製造所の強みを発揮し、20年度のROSで8%が目標。また、10年後の理想にはROS10%の安定確保とともに、従業員の自社に対する愛着度を100%に引き上げていくことを掲げている。

日本鋳造/鋳物事業/付加価値拡大を加速/半導体製造装置関連がけん引

 日本鋳造(社長・鷲尾勝氏)は世界最高峰の熱膨張ゼロ合金「LEX―ZERO」で従来の鋳鋼品、ブロック材に加えて3D積層造形品の製品化に成功し、用途開発の幅を広げた。7月までに半導体製造装置向けにサンプル出荷を始める。

 半導体製造装置関連の鋳鋼品は、2013年に川崎工場内に竣工した高効率の「自動造型ライン」でも製造している。当初は鉱山機械用鋳鋼品に特化していたが、現在は鉱山機械、半導体製造装置向けが繁忙で、現有人員体制で今後2年はフル稼働が続く見通しだ。

 17年度の設備投資額(採択ベース)は8億円強。試験・検査設備では半導体製造装置用部材の形状検査を高効率化するレーザー測定機を2台導入した。8時間を要した小物品の高精度測定は自動化により3分の1以下に短縮し、2~3日を擁した大物品の測定も3分の1に短縮した。職場環境の改善にも目配りし、顧客の立会検査に使うスペースや社員食堂などは居心地の良い空間に刷新した。

 18年度も前期並みの設備投資計画を策定し、生産性・付加価値向上に向けた機械加工設備リフレッシュや鋳鉄水平連続鋳造材「マイティバー」の連鋳機合理化などを行う。

 マイティバーは、中国・邯鄲市恒工冶金机機械との戦略提携も生かして強化を進めている。日本で販売するマイティバーの一部を邯鄲からOEM調達する一方、大断面ダクタイル鋳鉄品は日本鋳造がOEM供給する。内需堅調を追い風に19年度は大幅増収を狙う。

JFE建材/20年ぶりの大型投資/セグメントなどの生産設備増強

 JFE建材(社長・久保亮二氏)は発足10年以降となる2015年に熊谷工場(埼玉県熊谷市)で生産設備を増強した。総投資額5億円超と20年ぶりの大型投資でリブ高100ミリ(100サイズ)のフラットデッキ「JF100」の製造設備を導入したほか大型プロジェクトに備えシールドトンネル工事に用いるセグメントの生産設備を増強。製造実力を高めた。

 同社はOEM先であるJFE鋼板・東日本製造所(千葉市中央区)でのハイデッキ生産中止決定を受け100サイズの内製化を決定。新設した設備はデッキプレート製造事業から撤退した植木フォーミングの埼玉工場(埼玉県本庄市)の設備を導入した。100サイズの生産開始に伴いブランド名も統一するなど床メーカーナンバーワンを目指す姿勢を鮮明にした。同年12月には許容スパン4メートルを業界で初めて実現するなど使い易さの追求を続けている。

 また、セグメントの生産設備は東京外郭環状道路の整備工事に備え内面溶接対応の自動ロボット導入やクレーンの入れ替え、反転機の導入などによる生産性と作業の安全性の向上を図った。現在も旺盛なセグメント需要は継続しており、大型案件へ着実に対応する中で培った知見や技術力、製造実力が生きる。

 16年には本社を移転しJFE建材フェンスと1フロアに集約。コラボレーションによるプロジェクト受注などグループ一体運営・一体営業の成果が確実に現れている。

JFEシビル/3年連続で最高益更新/大型物流施設受注増、売上げ拡大

 JFEシビル(社長・弟子丸慎一氏)は17年度まで6期連続の増益と3年連続の過去最高益更新を達成している。建設需要の追い風を着実に捕捉し、特に大型物流施設の特命案件が増加したことで成約率が上昇。建築事業の売上げが拡大し、売上高の5割近くを占める。

 建築事業ではGLPや三井不動産など不動産会社やファンド系を中心に顧客の幅を広げてきた。さらに、従来は鉄骨造を中心として展開していたがプレキャスト鉄筋コンクリート(PC)造でも実績を挙げている。同社は主軸の物流倉庫に次ぐ分野としてPC造が中心となる大型冷凍冷蔵倉庫に注力、食品分野などに事業の幅を広げようとしている。

 第2の柱となるシステム建築事業は旺盛な物流倉庫需要を背景に順調に売上げを伸ばしてきた。深刻な人手不足が常態化する中、省力化に加え工期短縮などを実現できるシステム建築には追い風が吹き続ける。加えて、杭と柱の一体化工法「いちいち基礎工法」が強力な武器となっており、これを活用しつつエンジニアリング会社や設計事務所、ゼネコンへの営業を強化している。今期は売上高225億円と意欲的な目標を掲げ事業に取り組む。

 20年度を終期とする中期3カ年計画では売上規模は1200億円、経常利益100億円を目標としており中堅ゼネコンクラスに食い込む格好となる。物流施設を軸に、成長が期待できるシステム建築などを備えた〝特徴あるゼネコン〟を目指していく。

JFEコンテイナー/自主保全活動の「道場」整備/設備見る目磨き、生産性高める

 JFEコンテイナー(社長・小野定男氏)は、鋼製ドラム缶の国内4工場(千葉・川崎・堺・水島)で、独自の自主保全活動に取り組んでいる。最も早い14年度から活動する水島工場(岡山県倉敷市)には昨年秋、設備の仕組みを体感しながら保全の知識を学べる教育施設「自主保全道場」を整備。設備を見る目が磨かれ、定時生産本数の増加や故障率の低下をはじめ定量的な効果が現れる水島とともに、他の3工場でも生産性を示す指標が改善する好循環を生む。

 道場は工場棟に隣接し、15人程度を収容できる広さ。オペレーターが直接設備の仕組みを見たり触れたりできるよう、設備のカットモデルやデモンストレーション回路などを取りそろえる。50人余りの全社員を対象に複数のグループに分かれてプログラムを実践する中、工場の一角で手掛ける指導や研修の場を深化させたいとの現場からの強い要請が一連の空間づくりを導いた。

 室内には活動に必要な5つの心得を「道場訓」として掲示。各現場から選出した生え抜きを「先生役」に充て、設備に強いオペレーターの育成に向けて、同じ職場で汗を流す仲間同士で知識や技能の向上を図る。コミュニケーションの円滑化や職場の活性化といった相乗効果も醸成する。

 各グループの実践内容は専用の活動板や「自主保全通信」と題した媒体を通じて広く共有する。活動報告や課題発表の場には他工場の関係者も参加。所属先に持ち帰っては即実践を繰り返し、全体の底上げにつながっている。

JFE溶接鋼管/小径電縫鋼管事業専業メーカー/グループの中核担う

 JFE溶接鋼管(社長・石川逸弥氏)は昨年4月、JFE鋼管と川崎鋼管が統合して設立。同10月にはJFEスチール知多製造所の小径電縫管の製造を移管して現行体制となり、昨年度の売上高は約200億円で、年間生産量は20万トン弱(受託生産を含む)。JFEグループの小径電縫管事業の中核を担う専業メーカーとして、自動車・産業機械・土木・建材向けなど幅広い需要分野に製品を提供している。

 旧JFE鋼管は製造拠点の姉ケ崎製造所(旧本社工場、千葉県市原市)に4ラインを有し、外径10インチ以下で比較的肉厚の薄いサイズの生産を得意としていた。一方、旧川崎鋼管は伊勢原工場(神奈川県伊勢原市)と磐田工場(静岡県磐田市)の2拠点5ライン体制で小径厚肉電縫管の製造を得意とし、主に自動車部品向けの生産を行ってきた。知多製造所は4インチと6インチの2ラインで、4インチミルでは高強度・高加工性のHISTORY(ヒストリー)鋼管を製造している。

 4工場全11ラインでそれぞれの特徴を生かしつつ、最適生産体制の構築、グループ一体となった品質、コスト競争力の強化、サービス体制の拡充などを推進している。

 製造拠点間の交流も進んでおり、石川社長自ら各拠点のイベントなどに積極的に顔を出すことも多い。こうした現場レベルでの地道な活動が、統合会社の文化融合をスムーズにするとともに、良い意味での競争心を刺激しているという。グループ新中計における貢献の期待も大きい。

JFE鋼材/企業ブランド価値創出へ/「取引適正化」を推進

 JFE鋼材(社長・石原慶明氏)は、建築鉄骨や橋梁(建材)向け厚板溶断の「厚板事業部」、産機や重電、プラント向け厚板加工・製罐・機械加工の「産機事業部」、トラックフレーム用熱延コイル加工の「レベラー事業部」そして船舶受注や資機材販売の「船舶事業部」の4事業部体制で今2018年度のスタートを切った。

 昨今のJFE鋼材を振り返ると、2015年7月末に子会社だった四国の造船用鋼材加工業のJFEメタルファブリカ(現「メタルファブリカ」)を今治造船に売却。今年4月には同じJFEグループだったリバースチールから鋼材加工販売部門と不動産賃貸部門を継承した。前者が「産機事業部」であり、後者は新たに「資産経営部」に名称を変更した。

 また、持分法適用関係会社だった臼杵造船所(大分県)の全持ち株(全株式の22%)を、同じ九州の福岡造船に売却。これに伴い、今期末で船舶事業からの撤退を決めている。

 今期は新3カ年中期経営計画の初年度に当たる。これまで取り組んできた「取引適正化・商慣習是正」をさらに強化するとともに、高度な品質管理・トレーサビリティを実現する独自のデータトラッキングシステム展開やJFEスチールとの一貫による納期対応力などを〝強み〟とした企業価値を創出。「JFE鋼材ブランド」と称し、個々の顧客ごとにQPS(品質・価格・サービス)を最適に組み合わせることで満足度向上と競争優位性を発揮していく。

 今中期ではソフト&ハードあわせて投資総額は20億円規模。最終年度でROS5%以上を定量目標に掲げる。

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