新日鉄住金、伸び特性1.5倍の980メガパスカル級の新ハイテン開発 日産新型車に採用、世界2極生産体制へ

 新日鉄住金は18日、自動車部品への成形性を飛躍的に高めた引張強度980メガパスカル級の高成形性ハイテン(高張力鋼板)を開発したと発表した。同強度の従来ハイテンと比べて延性(伸び)を1・5倍に向上。日産自動車がメキシコで生産する北米向け新型車に採用された。成形性の制約からこれまで主に590メガパスカル級が使われていた複雑形状の車体骨格部品に適用し、車体のさらなる軽量化が可能になる。新日鉄住金は国内に加え、米国の生産拠点からも日産への供給準備を進めており、実現すれば高成形性ハイテンの世界2極生産体制が整う。

 新日鉄住金はこれまでも980メガパスカル級ハイテンを製造してきたが成形性に制約があり、適用可能な車部品が限られていた。開発した高成形性980メガパスカル級ハイテンは冷延鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)の両品種を生産する。いずれも伸びが1・5倍に向上し、骨格部品で現在主流の590メガパスカル級に近い成形性を実現した。

 新日鉄住金は先行して1180メガパスカル級(1・2ギガパスカル級)の高成形性ハイテン(冷延、GA)を実用化済み。今回さらに980メガパスカル級もラインアップに加えた形で、現時点で2種類の強度の高成形性ハイテンを供給できる世界唯一のメーカーとなる。

 今回の開発鋼板が採用されたのは日産の「インフィニティQX50」。フロントサイドメンバー、リアサイドメンバーなど車体骨格部品向けとしてGA材を中心に冷延材も適用される。開発鋼板のうち、GAは名古屋製鉄所(愛知県東海市)、冷延は君津製鉄所(千葉県君津市)で生産。これに加え、新日鉄住金とアルセロール・ミッタルが米アラバマ州カルバートに構える薄板合弁会社AM/NSカルバートでも量産準備を進めている。

 AM/NSカルバートはこれまで、高成形性ハイテンの量産に向けて新日鉄住金による技術移管や設備改良をほぼ終えている。新日鉄住金は同拠点を活用して、通常のハイテンに加え高成形性ハイテンについても海外生産を始めたい考えで、自動車用高級鋼板のグローバル供給体制のさらなる充実を目指す。

 新日鉄住金は今回の開発で、溶接性に影響する合金成分の添加量が制約される中で、緻密な成分設計と製造条件を確立。強度と成形性を高次元に両立させる最適な金属組織を見いだした。

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