【現場ルポ】〈新日鉄住金エンジ、「プロフィットマート堺」(物流施設)建設〉 システム建築の新商品適用、躯体数削減で工期短縮

コスト低減、耐震性向上

 新日鉄住金エンジニアリング(社長・藤原真一氏)は大阪府堺市で建設中の「プロフィットマート堺」に2階建て物流施設向け商品「NSスタンロジ」を適用した。独自の構造設計ノウハウとシステム建築商品「スタンパッケージR」の標準化技術を組み合わせることで、躯体数量削減によるコスト低減と工期短縮、耐震性能向上を実現する製品で、元請けとしては初適用となる。現地を取材した。(村上 倫)

 本施設は延べ床面積約2万平方メートルで総合物流企業、ロンコ・ジャパン専用の物流施設。工場・倉庫が集中する堺臨海工業団地内に位置し24時間のオペレーションが可能であるなど好立地にあり、ロンコ・ジャパンの西日本地区における多機能物流を担う新たなフラグシップ拠点となる。階高は7メートル、柱スパンは10メートル以上で床荷重は1平方メートル当たり1・5トンを確保する。

 構造は鉄骨造2階建てで鉄骨重量は約1200トン。グリッド設計による最適スパンの提案により従来工法に比べ鋼重を約2割削減しており、2階の梁材などに新日鉄住金の外法一定H形鋼「ハイパービーム」を約620トン使用しているほか、日鉄住金建材のロールコラムなども柱材に使用されている。

 工事は取材時点で6割近くまで順調に進ちょく。工期は標準化を徹底した「スタンパッケージR」の効果によって8カ月と従来工法に比べ約1カ月短縮しており、短工期が施主からも評価された。また、独自の耐震・制振部材「アンボンドブレース」を32本最適配置することで高い耐震性を実現。本件ではロンコ・ジャパンのコーポレートカラーに合わせて緑に着色された部材にカスタマイズされている。

 杭基礎はプレボーリング拡大根固め工法「ハイパーメガ工法」を採用。杭本数が297本と通常の同規模案件に比べ多く、杭残土の建屋下部埋戻しによる再利用や基礎鋼製型枠の使用による残土のミニマム化などを図った。床品質には特に配慮しており、デッキプレートは踏んでも沈みにくい配筋付デッキ「ニューフェローデッキ」を採用。また、コンクリートスラブのクラックを防止するため、試験練りの実施による生コン乾燥収縮率の事前確認を行い配合を決定するなど、きめ細かい対応を行っている。取材当日は8工区中7工区目の躯体床スラブを打設しており、2階部分でポンプ工3人、打設工5人、左官工11人ほどのチームで取り組んでいた。

 2階建ての物流施設は初期コストや搬送時の時間ロスを抑えることができるなど需要の拡大が見込まれている。本施設の建設工事は「NSスタンロジ」を設計・施工で初適用した重要な案件で規模も大きく、ここで得られたデータやノウハウを蓄積し、今後の普及拡大の弾みとしていきたい考え。すでに本件を含め3件を受注しており、同社では積極的な営業展開を続けていく方針だ。

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