「5分でわかるコロンビア攻略法、日本が初戦で対戦する彼らが抱える3つの弱点とは」

いよいよ日本代表のグループリーグ初戦、対コロンビア戦の火ぶたが切られる。

最後の強化試合となるパラグアイ戦では、スイス戦で出場機会が少なかった選手を起用し、4-2で勝利。

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西野体制では初となるゴールを上げただけではなく、攻守両面においてガーナやスイスとの試合では見られなかった積極性や連動性が感じられたシーンも多く、サッカーファンは幾何かの期待も感じたのではないだろうか。

とは言え、強化試合はあくまでも強化試合だ。

日本が対峙するコロンビアは明らかにパラグアイを凌ぐ強豪。今回の勝利だけで楽観的になるのは危険だろう。

さて、前回は「初心者でもこれをみればOK!」というテーマで、コロンビア代表の特徴をカレン氏に分析してしてもらった。

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まだ確認されていない方は一度そちらをご覧の上、今稿を読んで頂くのが良いだろう。

Qoly(以下、――):前回は攻撃面における「コロンビア代表の特徴」を取り上げ、「ハメス・システム」についても触れてもらいました。さらに、より具体的に「対コロンビア」という視点で話を進められればと思いますが、その前に守備面の特徴も簡単にお願いします。

カレン(以下、省略):わかりました。

まず、コロンビアの守備の考え方についてですが、「前から奪う時」と「(ボールホルダーは見つつ)ブロックを敷く時」をきっちりと使い分けるようにしています。「きっちり」という表現を使ったのは、どっちつかずの守備ではなく、チーム全体でその使い分けが正確に出来ているという意味も込めています。

ですが、前線から守備に行くような時間帯はそれほど多くないと思います。

あるとすれば、ビハインド時であったり、早めに勝負をつけるゲームプランを選択した時でしょうか。

前者であれば、例えば、フランスとの強化試合では、ビハインドを喫していた時間帯に見られ、そこから何度か決定機を作りました。後者であれば、チーム力に大きな差が感じられる場合ですが、ワールドカップ本大会ではあまりないでしょう。

――となると、日本戦でもコロンビアは「まずはブロックを敷く」を選択する可能性が高いと。

そのプランを立てる可能性のほうが高いかと思います。

最低、ボールホルダーに対して、ファーストディフェンダーはしっかりいくという類の約束は守らせるかもしれません。ですが、「相手GKやCBに対しても積極的にボールを狩りに行く」というプランは考えにくいでしょう。

それも前回触れた「ハメス・システム」に関連してきます。

コロンビアは、攻撃時におけるハメス・ロドリゲスへの依存度が高く、彼には「カウンター時にもボールを引き出す」という大事な役があります。

そのため、力を温存する意味で、守備時での彼の負担は最小限度にしています。これはワントップで起用されるファルカオも同様ですね。

いわゆる「攻め残り」というもので、相手ボールよりも低い位置に下がらず、そのまま前線に残ることが多々あります。

その場合は「DF4人+MF4人」の8人の守備ブロックを形成するイメージですね。

また、ハメスは前回にも話したように左サイドに張ったり、ハーフスペース(サイドと中央の間)に動くことも多い選手です。

仮にそこでボールを奪われた場合ですが、彼は中央のポジションに戻らず、そのまま左の位置を取り、代わりに左サイドの選手が中央へ絞るケースは度々見られます。ボランチの二人と連携した、3ボランチ気味の並びですね。

このメカニズムは、チーム戦術なのか個人戦術なのかはわかりません。

ですが、このようなポジションチェンジを見る限り、守備の連動性は比較的高いチームであると言えます。

――ここからは具体的なコロンビア対策に移りたいと思います。いわゆる「弱点」と呼ばれるものはあるでしょうか?

フォーメーション、システム、選手によって変化することもあると思いますが、普遍的なコロンビアの弱点はいくつか存在します。

――その中から代表的なものを「誰でもわかる」ように教えて頂きたいです。

なかなか難しい注文ですね…。では、わかりやすい弱点を三点に絞って説明しましょう。

一つ目は、これは巷でも出回っている有名な話のようですが、「サイドバックが攻撃参加した時に生じる背後のスペース」ですね。

戦術的な約束事だと思いますが、コロンビアの両サイドバックは、後ろからのビルドアップの際に「組み立てに参加する」というより、まずは「高い位置を取ろう」とする傾向が強いです。さらに、ウイングに置かれた選手とのポジションチェンジも積極的に行います。

そのため、コロンビアはビルドアップ時、ボランチの一枚がセンターバックのポジションにまで落ち、後ろ3枚でボールを回していきます。

ですが、この戦術を行う際に弱点になりやすいのが、サイドバックが駆け上がったことで生じる背後のスペースです。

相手チームからカウンターを受けた場合、「ボールホルダーにしっかりと行って攻撃を遅らせる」、「サイドバックの裏にボールが出た際はボランチが流れてカバーをする」という基本的な戦術はコロンビアにもありますが、メカニズム的には「盤石」とは言い難いものです。

実際、直近のエジプト戦やフランス戦でもこの穴を再三突かれ、ピンチを迎えていました。

――日本もここを狙うべきでしょうか?

そうですね。

特に日本から見た場合の右サイド、コロンビアから見た左サイドは、ハメスが流れることも多くボールが集まりやすいエリアです。

そして、ハメスのキープ力を信じ、左サイドバックはより積極的にオーバーラップを仕掛けます。日本にとって注意すべきエリアであり、攻略するなら右サイドが良いのでは?と思うかもしれません。しかし、逆にこのエリアは弱点にもなります。

具体的な攻略法としては、以下の手順で攻め入るイメージです。

①コロンビアからボールを奪ったタイミングで、トップ下(ないしは2トップの一人)がサイドに流れる

②その流れた選手が、サイドバックの背後をカバーしたボランチの前でわざとボールを受ける

③トップ(ないしは2トップの残りの一人)もセンターバックの外側にポジションを取る

④そこで起点を作り、逆サイドの選手も含めてゴール前に攻め上がる

とは言え、そうそう何度もこの形が出来るわけではないので、訪れた時はまさに千載一遇のチャンスです。

そのため、「ここぞ」の場面でチームが共通意識を持って「やり切る」ことが重要になりそうです。

――今回のワールドカップは、列強たちが苦しめられている印象ですが、その理由はジャイアントキリングを狙う対戦国の戦術が当たっている点がありそうです。

当然、対戦国の「弁慶の泣き所」はどこの代表チームでも分析できているはずです。それはコロンビア対策を行うべき立場の日本代表も然りでしょう。

ただ、チームとしてそれをどこまで狙いにいくのか、また、狙いに行った際にチーム全体が実行し続けられるかで結果が大きく変わってきます。

「信じたゲームモデルを心の底から選手たちが信じ込めるか…」という表現が正しいかはわかりませんが、「考えること」と「実行すること」、そして、「実行すること」と「実行し続けること」は全く違いますからね。

――それが出来るチームが勝ち点をものにしてきているわけですね。

ドイツに金星を上げたメキシコはその代表格ですし、ブラジルと引き分けたスイスも同様。フランスとアルゼンチンを苦しめたオーストラリア、アイスランドも描いたゲームモデルを愚直に実践し続けました。

――メキシコがドイツを破ったゲームは一種の衝撃でした。

メキシコは「ドイツに勝つにはどうするべきか」に時間を割き、準備万端で臨んだ印象でしたね。

まずは、中盤をマンツーマン気味の配置。司令塔役であるボランチのクロースに対しても執拗にチェックし、そこからの「球出し」を断ちました。そして、ドイツの武器である両サイドバックの攻め上がりについても、きっちりとメキシコのサイドの選手が対応。まさにドイツの各ストロングポイントを封じにいった格好です。

「穴がない」と思われていたドイツが、土台から崩れていった感覚でした。

他にも戦術的なポイントはありましたが、結果として、ドイツはメキシコにしてやられた。

自分たちのサッカーを見失ったことで、無茶な攻撃が増えてしまい、ポジショニングバランスが煩雑に。カウンターに対してセンターバックの二人で対応しなくてはならないミスマッチが多発したことが最大の敗因かと思います。

メキシコはチャンスと見るやこのカウンターにエネルギーを注ぎ、最終的にはゴールまでに至ったわけです。

――上述で言えば、彼らは「ゲームモデルを実行し続けた」ということですね。

ただメキシコが結果に結びつけられたのは、その「実行し続ける」ということはもちろんのことですが、「選手個々のレベルが高かった」という点も触れないといけません。

たとえ、あのような戦術を仕掛けて、それがハマったとしても、最終局面についてはタレント力次第です。

メキシコの得点シーンで言えば、まず、ケディラの突進に対して難しい角度からエクトル・エレーラがボールを突いた。そして、そのこぼれたボールをエクトル・モレーノがすかさず正確な縦パス。そこにはハビエル・エルナンデスがしっかりとポストに落ちてきてボールを受け取り、ワンタッチでアンドレス・グアルダードとワンツーリターン。止めは長距離をランニングしてきたイルビン・ロサーノがメスト・エジルをゴール前で冷静にかわしてのシュートでした。

これら一つ一つのプレーに確実性と技術がありましたし、特に最後のロサーノのクオリティーは凄まじかった。欧州でもトップクラスの決定力の「さすが」と言わざるを得ません。

――話を戻して、二つ目の弱点についてですが、こちらのポイントは?

それはコロンビアの「攻撃を組み立て」における弱点ですね。

おそらく、日本戦で起用されるであろう、カルロス・サンチェス、アベル・アギラールの両ボランチはあまりポジショニングに工夫がなく、ターンする能力(ボールを受け取り前に向く能力)もやや欠いています。控えのジェフェルソン・レルマ、ウィルマール・バリオスも同様です。この能力については、日本のボランチ陣、柴崎岳、大島僚太のほうが勝っているでしょう。

そのため、彼らは前から圧力を受けた場合、そのプレッシングの回避を試みるよりも、後ろ向きのパスや横パスに逃げる傾向が強いです。となれば、なかなか縦にパスが入らないことにしびれを切らして、ハメスが下がってくるのでしょうが、彼がゴールから遠ざかることは日本にとってはプラスです。

さらに言うと、このボランチコンビは、そこまでボール扱いに長けているわけでもありません。

そのため、連動した守備をベースに、ボール奪取能力の高い選手が彼らから「狩り」に行けば、奪いきることは可能でしょう。長谷部の先発が濃厚かもしれませんが、ボールハントを考えると、山口蛍のほうがより好ましいです。

ちなみに、個人的には、山口と遠藤航を組ます形も対応策の一つとしては「あり」だと見ています。遠藤がいることで山口は遠慮なくボール奪取を仕掛けられますし、遠藤自身もデュエル能力は高い。ハメスに放り込まれたボールに対しても彼なら簡単に弾き返せますし、バイタルエリアにボールが運ばれるケースは減少するでしょう。

ただ、これまでそのコンビは一度も試されていないですし、西野監督は「ボールを握る」ことやカウンターを仕掛けた際にセカンドラインに詰めることをボランチに求めている印象なので、実際に起用されることはないでしょう。

以上のように「戦術」と「選手配置」の関係性については少々不安はありますが、日本がコロンビア相手にショートカウンターを仕掛けられるケースも十分に考えられます。

――ボランチがセンターバックにボールを下げた場合は?

パスコースを限定して、センターバックからボランチに入るパスを奪うイメージの守りがいいでしょうね。

もちろん、欲を言えば、そのままセンターバックまで圧力を掛けたいところです。

ですが、そこまでしてしまうと、日本の前線のスタミナ損耗が心配ですし、肝心な時にエネルギー不足に陥るほうが怖いです。

センターバックのダビンソン・サンチェス、ジェリー・ミナはそれなりのフィード能力を持っていますが、そこまで気の利いたパスを出せる選手ではないので、ロングボールに逃げさせても「OK」だと思います。

(先発が予想される)ファルカオ、ハメス、ムリエル、クアドラードについては単純な高さはないので、空中戦に持ち込んでも日本は勝負できますからね。

――つまり、日本側は前からボールを奪いに行くほうが良いという考えでしょうか?「後ろに引いて守る」という戦法も選択肢としてはあると思いますが。

守備ラインを下げて、ボールを奪うエリアを自ら後ろにしてしまうことは、今の日本とコロンビアの力関係を考えると非常に危ないと思います。

それでは、必然的にハメスがボールを持つ時間が増えてしまいますし、日本側で言うところのディフェンシブサードでゲームが進む時間が長くなると、いつかは破綻すると思います。

そもそも、日本は「ボールを持たせても守れば問題ない」という「籠城型守備」は得意だと思いませんし、現代表は試したことが皆無です。

2010年の南アフリカ大会のように成功した事例はありますが、あれは計画されていたことでしょうし、大会前にも試していますから訳が違います。

今のチームは、間違った守備戦術を敷くだけで自滅するのではないでしょうか。

――つまり、「可能な限り前から」ということですね。

そうです。そのため、先発もその戦術に適した顔ぶれが理想です。

トップ下を置かずに2トップの場合もあるかもしれません。ですが、パラグアイ戦での日本の守備陣形を見るに、4-2-3-1でも守備時は、DF4人+MF4人でブロックを作り、前の二人は相手DFやボランチを見て、パスコースを限定していく作業です。

そのため、2トップになろうと1トップになろうと、基本的に守備の方式は変わらないでしょう。

そして、とにかく大事なのは「無駄に引かない」という意識をチーム全員が持つことだと思います。

ハメスに対してもミドルサード(ピッチを自陣、中央、敵陣の三分割にした場合の中央エリア)からしっかりとプレッシャーをかけ、状況によっては「ファールでも良し」の守りを続けるべきです。

アタッキングサードに入らない限り、さすがのハメスと言えどもそこまで怖くはありませんし、直接FKを狙えない距離であれば、ファールを犯しても大きな問題はありません。

ブラジルに善戦したスイスは、ネイマールに対してミドルサードからしっかりプレッシャーをかけ、彼にリズム掴ませない守備をしていました。

ハメスもイライラしがちな選手ですので、スイスの「対ネイマール」を見習い、「エースを試合の外へ」に専念して欲しいです。

――どうやらハメスが故障により出場しないという話もあるようですが。

単なる陽動作戦かもしれませんが、彼が欠場した場合、日本にとっては少なからずプラスになることは間違いないでしょう。

ただ、その場合に代わりを務めるであろうキンテーロも強烈な個性を持っていますし、「全て解決」ということにはなりません。

また、コロンビアがトップ下を置く4-2-3-1を捨て、これまでにも試している4-4-2や4-3-3を選択することも考えられます。

基本的にはポジショナルプレーに乗っ取った戦術を敷くでしょうが、コロンビアの戦い方に大きな変化が起こる可能性があり、日本も少々混乱するかもしれません。

――では、最後に三つ目の弱点をお願いします。

実はこの弱点が一番現実的なポイントではないかと見ています。それはコロンビアのコーナーキックの守備です。

まず、コロンビアは、ストーン(キッカーに近いエリアに立ち、ニアサイドに入ってきたボールを跳ね返す役)を一人、ニアポストに一人置き、後はマンツーマンで守ります。そして、意外とこのコーナーキックの守りで危うい場面が度々起こります。

ストーンの手前にボールが入った場合、ダビンソン・サンチェスとジェリー・ミナらの両CBがマーカーをはがしがちなのです。

心理的には「ストーンの選手が跳ね返してくれるから大丈夫だろう」という感覚なのかもしれませんが、結果的にストーンの選手がボールに触れず、ニアに入った選手にボールをそらされる、そのままGKを触れずにファーサイドまでボールが流れてしまうというシーンが何度も見られました。

センターバックの二人は非常に屈強で、コーナーキックでも日本の壁になることは間違いないでしょう。しかし、このように少し気が抜けるようなプレーはあるので、そこは突いていきたいポイントですね。

西野監督もこの弱点は熟知しているでしょうし、セットプレーのパターンも準備していると思うので、コーナーキックからのゴールは期待したいところです。


さて、今回の「5分でわかるコロンビアの倒し方、日本と対戦する強豪国の3つの弱点を暴く」はいかがだっただろうか。

カレン氏の話を要約すると、コロンビアの主な弱点は以下の三点だ。

①サイドバックが攻めあがった背後のスペース

②ボランチのボールキープ力

③コーナーキック時の守り

はたして、日本はコロンビア相手にどのようなどのような戦い方を選び、そして、どのような結果を収められるのだろうか…。

「運命の初戦」はすぐそこまで迫ってきている。

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