「障害児と家族を見捨てるのか」 療育施設の市運営継続を 松浦市議会で利用者の請願きょう採決

 長崎県松浦市が運営する障害児らの療育施設「市ふれあいセンター」(通称・げんきっこひろば)の廃止方針に対し、利用者から「障害を抱える子どもと家族を見捨てるのか」と反発の声が上がっている。市は参入する民間業者への事業移行などで対応すると説明するが、保護者は「支援の質が低下する」と指摘。定例市議会は20日、利用者が事業継続を求める請願を採決する。
 11日から始まった一般質問。「療育支援の継続を求める切実な声をどう認識しているのか」。連日、市議がこの問題を取り上げ、市の対応を相次ぎ批判した。
 市によると、センターは2003年1月開所。作業療法士や保育士などの専門員がおり、子どもに合わせて個別の計画を立て、集団生活への適応訓練などで発育を支えている。特徴は親と子が一緒に通う「親子通園」。親に対しても子への関わり方を指導し、相談も受ける。昨年度の利用者は31人だった。
 廃止方針は、伊万里松浦病院(佐賀県伊万里市)の運営機構が、松浦市移転に向けて動きを速めてきた17年度当初から動き始めた。
 センターは16年度以降、市が直営。市は、児童の発達支援は民間移行が前提の事業としている。加えて新病院が移転予定地内に立地していることから事業委託を模索。18年1月、市内に新たな療育施設を設ける民間業者を見つけ、廃止を決めた。
 市は2月、保護者らに経過を報告。だが、相談なく示された廃止方針に利用者は戸惑い納得していない。子どもとセンターを利用する男性は「廃止という結論ありきで、友田吉泰市長が公約に掲げる対話がない」と批判する。
 市が示す廃止後の対応は大きく2点。センターが担ってきた業務のうち▽未就学児が利用する「児童発達支援」は、9月参入の民間業者が担う▽就学児童の「放課後等デイサービス」は、市の「親子教室」などで支援する-と説明。市外の施設利用も促すという。
 しかし、利用者の男性は「環境の変化による子どもの影響を考慮していない」と指摘。センターの特徴でもある「親子通園」が可能な施設は市外にしかなく「必要な支援が受けられなくなる」と訴える。市の親子教室も「具体的内容が何ら見えない」と不信感を示す。
 友田市長は「利用者に十分に説明し、具体的に事業を拡充していく」と釈明しているが、今後の対応はどうなるのか。利用者をはじめ市民の注目が集まっている。

市が廃止方針を示している障害児らの療育施設「市ふれあいセンター」=松浦市志佐町
専門員のサポートを受けながら療育を受ける子ども(利用者提供)

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