経産省の流通ヒア、「メーカー値上げ転嫁は〝道半ば〟」 3団体が実態報告

 「年度下期入りを控え、季節的要因で建設関連向けを中心に需要繁忙感に期待。その一方で人手不足や運送問題などの影響で工事遅延も長引いており、荷動きの回復はそれほど期待しづらいのでは、との指摘も」―全国鉄鋼販売業連合会、全国コイルセンター工業組合、全国厚板シヤリング工業組合の流通3団体は18日、経済産業省金属課のヒアリングで来期(7~9月)の見通しなどを説明した。

 全鉄連(会長・阪上正章氏)では「鋼材需要は全般的に底堅く、市況も強含み基調」としながらも、足元は「これからさらに市況を押し上げるほどの勢いには欠ける」と現況を報告。メーカー値上げ転嫁を積み残しているだけに「景気復調とともに販価引き上げを急がないと収益悪化が免れない」との状況を説明した。

 コイルセンター工組(理事長・鈴木貴士氏)では「出荷量が今期見込みと比べて微減」との見通しながら自動車をはじめ電機、建材、鋼製家具など薄板需要全般が今期に引き続き好調さを持続すると報告。

 その上で「高炉大手が店売り追加値上げを打ち出したが、市中相場への値上げ浸透がいまだ不十分。しかもヒモ付き価格と店売り価格との乖離が拡大している」ことへの懸念を示した。さらには輸送面での運転手不足や運賃上昇など「仕入れコストだけでなく種々のコスト圧迫が加わり、採算は悪化の一途」との実情を訴えた。

 厚板シヤ工組(理事長・石原慶明氏)も、需要全般が堅調ながら人手不足や工期ずれなどの影響で機会損失が生じ「期待したほどの活況感はない」という。切断量は「今期見込み比微増」との予想だが、仕入れ値上昇分の転嫁値上げについては「需要家との折衝が厳しく、直需向け価格改定が困難」と総括した。

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