金属行人(6月20日付)

 前回の東京オリンピックは1964年10月10日に開会した。今回は2020年7月24日に開幕するというから、あと760日程度しかない。諸先輩に敬意を表しながら、日本をしっかりPRしたいものだ▼オリンピックが基本4年に1度行われるという本来の意味は、「先祖の栄光をたたえる儀式」だったからだという。定期的に先人の雄姿を思い出し、その魂の前で技を競うものだった▼ところが、時代を経ると考え方は変わる。徐々に儀式から「祭典」へと変わり「現世の楽しみ、娯楽、友好」を重視するようになる。次には「経済効果」だ。時代によって価値観というのはそれほど変わるのだ。政治・国家・貨幣なども同様だろう▼前回の東京オリンピックには94カ国から約6千人の選手が集った。戦争で焼土と化してからわずか20年足らずで、日本は目を見張る復興、成長を果たした。その証しがオリンピックだったに違いない▼当時、ベトナムは南北に分かれており、北の選手はいなかった。中国、シリア、南アフリカの選手もおらず、北朝鮮の選手の姿もなかった▼「ものづくり」だけでなく、世界全体が「時代の転換点を迎えつつある」と多くの人が感じる中、先人をたたえ、多くの国が「競い合う」場になってほしい。

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