【新所長インタビュー】〈日新製鋼呉製鉄所・三木英司執行役員〉高炉の長寿命化、安定操業に注力 特殊鋼好調、増産投資検討

――4月に就任されたが、改めて抱負を。

 「製造業の基盤をなす安全・環境・防災を最優先し、従業員が心身ともに健全でいられる職場作りが大切だ。呉製鉄所は日新製鋼の鉄源供給基地として、高炉・製鋼・圧延といった各工程の安定操業で下工程に良質なホットコイルをタイムリーに渡すのが最大の命題であり、存在感ある製鉄所を目指していく。今年は高炉健全化を最優先に、安定操業に取り組む」

――足元の生産状況は。

日新製鋼呉製鉄所・三木執行役員

 「ほぼフル生産で推移している。安定操業のため出銑量を若干落としているが、特殊鋼は生産記録を上方に塗り替えている。今後は特殊鋼の比率をさらに高めていきたい」

――設備投資に関連して。

 「直近の大型設備投資としては、昨秋11月に構内に新発電所を建設し、順調に立ち上がった。今年5月末には熱延加熱炉の燃料転換工事を行い、燃料を重油からLNGに転換。転換済みの1・2号炉に加えて3号炉の改造工事を完了したことで、環境に優しい製鉄所に一歩近づけた。また、高炉の長寿命化に向けた設備投資を継続していく」

 「高炉については、新日鉄住金の持つ高炉の長寿命化に関する設備技術や操業技術を移転し活用することで、稼働期間を延長できることとなった。高炉の最大活用によって生じるキャッシュはコア製品である特殊鋼やZAMの増産、品質向上に投じたい」

――完全子会社化の影響と呉製鉄所の役割の変化は。

 「今までは日新製鋼の中で高炉を保有する唯一の基幹製鉄所だった位置づけが、今後は新日鉄住金グループ内に存在する複数の製鉄所の一つとなる。これを踏まえグループ内でコスト競争力、品質競争力がなければ存在価値が失われると所員に発破を掛けている」

――安全に関しては。

 「2017年暦年は休業災害が7件発生。今年は昨年の反省を踏まえゼロ災を目指した活動を展開しているが、1~5月末時点で不休1件を含むいくつかのトラブルが発生しており、7月の全国安全週間に向け気持ちを引き締めていく。前任の安井所長時代に作成した安全重点4項目を愚直に守り、所内で徹底する。今年の具体的活動として各所に安全掲示板を設置し、指導事項や職場ごとの安全カレンダーを張り付けている。どの職場の掲示板に刺激を受けたかとの社内コンペを行い、現場レベルの向上につなげる。バーチャルリアリティーを活用した危険体感装置も導入していく」

――現場の技術力向上は。

 「呉に在籍していた9年前に比べ現場はかなりベテラン層が抜けて、3分の1は入れ替わっている印象。当所従業員の平均年齢は38歳(18年4月末現在)。OJTや階層別教育、スタッフの技術発表会など各種の取り組みがさらに必要と感じ、部長級と話して人材育成・教育の方向性を深掘りしたい。現場力を上げるには各種指標の『観える化』も必要。新日鉄住金グループ入り以降、部門ごとに意見交換を行っている。日新製鋼唯一の高炉であったことから井の中の蛙状態だったが、新日鉄住金の技術移転やノウハウを活用するなどして、良い部分をどんどん吸収している」

 「採用については、今年は売り手市場ではあったが、これまでの地元とのつながりから、安定的に採用ができている。呉製鉄所の運営を考えた場合、構内の協力企業も含めた採用の仕組みを考えていきたい」(小田 琢哉)

プロフィール

 三木 英司氏(みき・えいじ)1985年大阪大工学部機械工学科卒、同年日新製鋼入社。主に設備・保全畑を歩み、2009年購買部長、13年外注統括室長、16年衣浦製造所長を経て、今春現職。趣味はスポーツ観戦・ゴルフ・魚釣り。広島出身の両親の影響から生粋のカープファン。学生時代は野球に打ち込み、投手で4番と活躍した。好きな言葉は「この一球は絶対無二の一球なり。されば心身を捧げて一打すべし」。9年ぶりに呉の自宅で家族と過ごす。1963年3月30日生まれ。

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