【ジェコス創業50周年 馬越学社長に聞く】変化に対応し〝次の50年〟へ 建設業を支え、事業領域拡大

 重仮設業大手のジェコスは今年6月で創業50周年を迎えた。馬越学社長にこれまでの歩みと今後の展望を聞いた。(村上 倫)

――まずは50周年を迎えての感想から伺いたい。

 「50年が長いか短いかはよくわからないが、振り返ると必ずしも順調な時期ばかりではなく大変厳しい時代も乗り越えてきた。無事に今年50周年をめでたく迎えることができ感慨深い。ジェコスの諸先輩や社員のみならず協力会社や取引先のご支援・ご指導があってようやくここまで来られたというのが率直な感想だ。株主のご理解・ご支援も得て50周年を迎えられたことに改めて感謝申し上げたい」

 「ただ、50年で終わるわけではなく1つの通過点と認識している。生き残るために事業規模のさらなる拡大を図ると共にゼネコンにとって役に立つ技術開発などを念頭に事業を進めていきたい。重仮設業界の地位向上にも心を配っていく」

――これまでの歩みは。

 「1968年に前身となる山本建材リース、70年には川商建材リースが発足した。東西日本を分ける形で発足したが、90年4月に2社が統合することで全国規模で事業展開する川商リースシステムとなり、業界トップに躍り出た。94年に東証2部上場、96年に1部へ指定替えしており、1部上場時に川商ジェコスへと商号を変更している。〝ジェコス〟は〝ジェネラル・コストラクション・サポート・システム〟の略で幅広い分野において建設業を支える意志を示した。04年7月には商号をジェコスに変更し今に至っているが、建設業を支えることを使命として事業を推進してきた」

 「発足時は専任の役職員は11人で、製鉄所見学から始めたまさに素人集団。業界でも後発だった。ただ、発足当時から現在につながる需要家への直結営業を展開し、取引先の現場ニーズやお客様が意識されていないニーズまでを掘り起こし対応する心構えで取り組んできた。それが〝釣堀の魚は全て釣り上げる〟と言われた営業力につながり、鋼材の賃貸から工事、加工、建機リースと顧客の要望に応えた業容拡大へとつながり、仮橋などの展開にもつながった。お客様のニーズに全力で対応するDNAは現在も脈々と流れている」

――転換点となる出来事として何が挙げられますか。

 「不幸ではあったが2011年の東日本大震災を契機に安全・安心な社会の構築が大きな課題としてクローズアップされ、建設業界の再評価にもつながった。当社は大災害で特に力を発揮して社会へ貢献しており、2012年12月に発生した笹子トンネル天井板崩落事故では大至急復旧することが求められたが総力を挙げて対応し、全く未経験の工事を大林組と共に成し遂げた。年末までに開通させようと社員が一丸となり達成できたことで自信となったほか、技術的な発展や顧客との信頼関係の深化にもつながった」

――2016年には海外展開も実現しています。

 「日本の市場がどんどん拡大するとは考えられず、海外へ事業領域を拡大することは大きな決断だった。その意味でジェコスベトナム設立の意義は大きい。国内より事業の山谷は大きいと思うが、何としてもよい事業へと育てたい。ただ、ベトナムだけではなかなか難しい。まずはベトナムの事業を確固たるものとすることを最優先としながら、アセアンを中心とした周辺国へ出て行きたい」

――さらなる50年へ向けて何が必要と考えますか。

 「日本の企業で創業50年はまだ若造だと認識している。特に建設業は歴史の古い会社が多く、人がいる限りは決してなくならない分野と捉えている。ただ、顧客も仕事の中身も変化していくので、当社も色々な面で変化していかねばついていけなくなる。技術面はもちろん、働き方改革の実現や現場での外国人労働者の増加など環境はどんどん変化すると思っている。こうした部分をしっかり変えていかねばならない」

 「これまでは土木系の学生を多く採用していたが、必ずしも土木の仕事がどんどん拡大するわけではない。日本は戦後の復興期に多くのインフラを整備したが、その老朽更新は大きな課題となっている。建設分野でも既存の建物を壊して再開発するとなると異なる人材が求められる。将来を見据えると、建設系のみでなく異なる専門性を有する人材が必要となりそうだ。中途採用も含め特殊な技術を持つ人材を積極的に採用しなければ変化への対応に時間がかかりすぎる。M&Aも視野に入れながら対応を模索していきたい」

 「ただ、100年を超える長寿企業の共通点は哲学など一貫した揺るぎない考え方が根幹に存在している点にあると感じている。当社が新卒採用を進める中で『会場がわからずに困っていたところ、社員が声をかけてくれて連れて行ってくれた。このように温かい会社はない』という声や『会社について良い点のみならず悪い話も教えてくれ、このような正直な会社で働きたい』との声もあった。こうした社風は長い歴史の中で培われたまさに一貫した揺るぎない部分。こうした社風を変えずに続けていきたい」

――まずは〝ジェコス10年ビジョン〟でどのような展開を。

 「〝地下工事とインフラのトータル・ソリューション企業への脱皮〟を掲げており、周辺事業へ事業領域の拡大を図っていく。これまで全くかけ離れた新規事業を展開して多くの企業が失敗しており、重仮設事業や鋼材加工業を軸に地下工事やインフラ・メンテナンス全般へと事業領域を拡大したい。実現のために提携企業や協力企業とのネットワークを中心となって構築し、シナジーを発揮していく〝ネットワークコーディネーション〟に注力する」

 「また、老朽化したインフラのメンテナンスや更新、都市の再開発需要なども大いに期待できると思っている。特に老朽更新や再開発は、これまでのようにグリーンフィールドで建物を造り土木工事を行うのではなく、既存の躯体などが存在し稼働したまま更新していくなど技術的にも高度化が進む。これまで経験のないノウハウが求められるが、こうしたニーズに対して経験と知見を積み上げることで技術・施工の高度化を図りながら対応したい」

――売上規模倍増と既存事業の収益力強化を掲げています。

 「一定の事業規模を持っていなければ事業として魅力的に映らず人も集まらない。加えて、中途半端な目標でなく大きな目標を持ちながら、これを達成するための方策を考えていくことが大切だと考えている。収益力の強化において究極の姿は競合が誰もいないことだ。誰も追いつかない、真似のできない技術や商品があればついてくることはできない。世界的にも高収益の企業は寡占状態であるケースや中国市場のような巨大な市場を持っているケースが多く、こうしたことを念頭に事業を推進したい」

――新商品・新工法開発については。

 「ニーズにあった新商品・新工法の開発に注力する。キーワードは安全の確保や人手不足に対応した工期短縮と考えており、より安全で工期短縮に資する工法を開発していきたい。特に安全については人手がどうしても介在するため必須と考えている。当社の歴史上も労働災害ゼロの年は1度もない。注意喚起も大切だが、それだけではヒューマンエラーをなかなか防ぐことはできない。より安全な工法を考えることが重要だと考えている」

 「また、先端技術を積極的に導入した先進的オペレーションの追求を図る。JFEスチールなどJFEグループの力を借りつつ取り組んでいく。工場の運営や重量物の運搬など参考となる部分を積極的に採り入れたい。既にJFEシステムズから人を派遣してもらい助言を得ている。個別に取り組むよりJFEグループの一員として取り組むことが全体最適につながるだろう。社員や協力企業の方々が働きやすい環境を整備し、〝安心、安全な社会の建設に貢献し働きがいの向上を追求する企業〟を目指したい」

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