【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(31)】〈日鉄住金大径鋼管〉スパイラル鋼管の製造・加工分野拡大 安全・品質で君津、八幡と連携

 日鉄住金大径鋼管は、鋼管杭や鋼管矢板、一般配管用のスパイラル鋼管を製造している。前身は1965年に創業したイゲタ大径鋼管で、70年に住金大径鋼管に社名変更。2005年に住友金属工業(当時)の100%子会社となった。12年10月に新日本製鉄と住友金属工業の合併により、現行社名に変更した。

 新日鉄住金の誕生によって、グループのスパイラル鋼管ミルは君津製鉄所と八幡製鉄所を含めた3拠点体制となった。3拠点のうち唯一製造受託会社として操業しているが、本社建材事業部を交えて、製造品種や安全・品質管理など多方面で他ミルとの連携を強化している。

 今期から始まったグループの新中計に照らし合わせて、同社でも「強み・特徴を磨き、日々チャレンジ、チャンスを逃さず考働力でSTEP UP」をテーマに掲げる。「考働力(こうどうりょく)」は、10年間同社のかじ取りを担った三沢隆信前社長が考案した造語をそのまま踏襲。「STEP」にはSafety(安全)、Technology(技術)、Efficiency(効率)、Product(製品)と同社運営の核となるエッセンスが含まれている。

 製造面では独自技術「オンビード技術の深化」を掲げる。同社の製造するSTBC―SR杭は内面に円周状の突起(Super Rib)を溶接成形しており、コンクリートとの一体性に優れる。同社と新日鉄住金の共同特許となるオンリーワン技術であり、この適用拡大を進めている。

 一方、旧新日本製鉄製品の生産対応はほぼ完了し、先端に「リングビット」を取り付けたジャイロプレス工法用杭、同じく先端に「らせん状の羽根」を取り付けたNSエコパイルは量産中。鋼管杭のじん性(変形性能)とソイルセメント固化体の摩擦抵抗の良さを併せ持つ合成鋼管杭「ガンテツパイル」については、製造可能鋼種・サイズの拡大に取り組んでいる。

 また、鋼管杭・鋼管矢板の現場接合に用いるピンとボックスの機械式継手で構成される「ガチカムジョイント」は、16年3月に新日鉄住金が販売を開始し、現場での施工性の良さなどから近年採用数が増えている。同社も試作を進めて、ほぼ完了。今後、徐々に数量を増やしていく。

 君津、八幡の他ミルとは安全、品質、技術面で担当者ベースの交流を行いながら課題を共有し、建材事業部も交えて改善活動に取り組んでいる。

 安全面では、危険な作業を「特例認可作業」として登録し、その改善活動を連携して推進中。また、本質安全(作業の自動化・機械化など)にも取り組み中で、フォークリフトの人車分離対策を今秋に導入する予定。

 品質面では、他ミルの協力も得て、新日鉄住金の品質管理手法を導入。現在は連携して品質に対する目線の統一に取り組んでいる。一方、同社独自取り組みとして、操業監視装置のレベルアップやシステム化を推進中で、検査の進ちょくなどをタブレットPC端末で確認できるシステムを導入した。

 同社は、長年、休業災害ゼロを続けており、年内に10年無災害を達成する見込み。安全と品質に関する飽くなき追求の社風は、新日鉄住金グループになってからも愚直に継続されている。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

 企業概要

 ▽本社=茨城県神栖市

 ▽資本金=30億9725万円(新日鉄住金の出資比率100%)

 ▽社長=門河昌宏氏

 ▽売上高=100億円(18年3月期)

 ▽主力事業=鋼管杭、鋼管矢板、一般配管用スパイラル鋼管の製造

 ▽従業員数=135人(18年4月1日)

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