[ロシアW杯#15]日本、4年前のリベンジ達成で最高のスタート! “夢の舞台”で輝きを放った大迫勇也 

決勝点を挙げた大迫は、積極的な動き出しで何度もチャンスに絡んでいた photo/Getty Images
“ほぼアウェイ”の状況で懸命に声援を送ったサポーターの歓声に応える photo/Getty Images

前半早々のレッドカードで降って湧いた数的優位

ブラジルW杯グループリーグ最終戦の再現となった一戦は、開始3分にいきなり大きく動いた。後方からのボールをセンターライン付近で受けた香川がゴールに背中を向けながらダイレクトで前線へ送る。走り込んだ大迫とD・サンチェスがもつれると、ボールはさらに前方へ転がる。いち早く反応した大迫が抜け出し、左足シュートを放った。

これはGKオスピナにセーブされたが、素早くサポートにきた香川がここもダイレクトで左足シュートを放つ。すると、C・サンチェスの右手にボールが当たる。シュートはゴール枠内に飛んでおり、レフェリーは迷わずにPKスポットを指さし、さらには得点機会阻止でC・サンチェスを退場とした。

キッカーを務めた香川が冷静にこのPKを決めると、9割5分がコロンビアをサポートするイエローで埋まったモルドヴィア・アレナにため息がもれた。逆に、少数ながらブルーの一団は早くも訪れた歓喜の瞬間に精いっぱいの雄叫びをあげた。

「受け身にならず、最初から前からいこうと話していた。なにが起こるかわからないのがW杯。いい入りができた」(大迫)

サポーターは数的不利だったが、ピッチでは数的優位となった。しかし、ひとり多いことがそのまま勝利につながるわけではない。

「(ひとり多いことで)すべてが優位になるわけではない。ポジショニングで優位性を持たないと意味がない」とは西野監督の言葉で、実際に先制点を奪ったあとの日本はうまく試合を運べなかった。39分にはキンテーロに直接FKを決められ、「ポジショニングでコロンビアに優位性を与えていた」(西野監督)という前半を1-1で終えた。

粘り強く好機をうかがう日本 CKからの決定機に大迫の一発!

ハーフタイムにポジショニングの修正が図られると、後半の日本は良いリズムで試合を進めた。「(後半の)日本は自分たちのスタイルでプレイしていた」とはペケルマン監督であり、「自分たちでボールをコントロールできた」とは西野監督である。

また、ひとり少ない相手を走らせて疲労させるのはセオリーで、その意味でも日本は焦って攻撃を仕掛けず、粘り強くパスをつないでチャンスをうかがっていた。73分には左サイドから数本のパスをつないで右サイドへと展開し、最後は酒井宏樹がシュートを放った。DFに当たってゴールラインを割ったが、このプレイでつかんだCKから大迫がヘディングシュートを決め、勝点3を自力で手繰り寄せた。

「W杯でゴールするのは子どものころからの夢だった。実際にこの舞台で取れてうれしかった」(大迫)

早い時間帯の先制点に、降って湧いた数的優位。これらは、決して勝利を約束してくれるものではない。この状況に慌てず、日本はストロングポイントであるパスワークを存分に生かし、しっかりと勝ちきった。過去に出場したW杯では、初戦で勝点を取ったときはいずれもラウンド16に進出している。ただ、「初戦をこういうカタチで終えたのはアドバンテージかもしれないが、2戦目、3戦目も厳しい」(西野監督)と語るように、今後も難しい試合が続く。少しの油断も許されないが、束の間はコロンビアを下した余韻に浸かってもいい。なぜなら、それが勝者に許された特権なのだから──。

[スコア]
コロンビア代表 1-2 日本代表

[得点者]
コロンビア代表:キンテーロ(39)
日本代表:香川(6)、大迫(73)

文/飯塚 健司
サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より6大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。Twitterアカウント : scifo10

theWORLD204号 2018年6月20日配信の記事より転載

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