はれのひ、資産なく配当不可能 横浜で債権者集会、元社長欠席

 成人の日を前に突然営業を取りやめた振り袖の販売・レンタル業者「はれのひ」(横浜市中区、破産手続き中)の第1回債権者集会が20日、横浜市内で開かれた。破産管財人は同社側に資産がほとんどなく、債権者への配当が不可能な状況を説明。配当の見込みがないため、横浜地裁は同日、破産手続きを打ち切る廃止決定を出した。

 集会には債権者約70人が出席。篠崎洋一郎元社長は姿を見せなかった。元社長の代理人弁護士は、3月下旬から元社長と連絡が取れず、海外にいる可能性が高いと説明したという。

 破産管財人の増田尚弁護士によると、債権者の総数は約2500人で、うち約2千人が顧客。負債総額は約10億8500万円に上った。内訳は▽借入金=約4億円▽顧客の損害=約3億4千万円▽買掛金=約1億8千万円▽税金・社会保険料の滞納=約7800万円▽未払い賃金=約2600万円-などだった。

 これに対し、資産は商品である着物類しかない状況だった。同社で保管されていた着物は計約1040枚で、購入者の特定された約220枚は返還。残り約820枚が同社の所有分で、着付け関連の業務を手掛ける会社に1620万円で一括譲渡された。ただこの金額では管財業務に要した費用も賄えず、配当金に充てられなかった。

 着物を一括譲渡された会社は、来年以降の成人式のために「はれのひ」とレンタル契約を交わした顧客に対して、着物を無償でレンタルする方針。破産管財人側は「普通なら配当なしでおしまいとなるが、何とかならないか知恵を絞って譲渡先を探した。レンタル契約者の一定の救済につながった」と語った。

 はれのひを巡っては今年1月8日の成人の日を前に突然営業を取りやめ、成人式で晴れ着を着られない新成人が相次いだ。篠崎元社長は公の場に姿を見せず、横浜地裁から破産手続きの開始決定を受けた同26日に初めて記者会見を開いて新成人らに陳謝した。

■元社長欠席、出席者に諦めと憤り

 晴れ着を着られない新成人が続出した成人の日から半年近くが経過し、ようやく開かれた「はれのひ」の債権者集会。破産管財人は「資産がほとんどなく、債権者への配当の見込みはない」などと説明した。「戻ってこないと思っていた」-。出席者からは諦めの声が漏れる一方、姿を見せなかった篠崎洋一郎元社長への憤りが口を突いて出た。

 債権者集会は約1時間半にわたって行われた。その間、出席者は破産管財人の説明を努めて冷静に聞き、怒号などはなかったという。

 配当見込みがないとの説明に、今年の成人式でまな娘が振り袖を着られなかった横浜市港北区の女性会社員(45)は「個人ではこれからどうすればいいか分からない」と嘆息。東京都八王子市のパート女性(49)は「高い勉強代と考えるしかない」と諦め顔だった。

 海外に雲隠れしているとみられる篠崎元社長に対しては、その不誠実な対応への怒りが噴出した。約40万円で長女の晴れ着を「はれのひ」で購入したという横浜市神奈川区のパート女性(50)は、購入時に会った篠崎氏の印象を「物腰の低い、良い人だと思った」。ただ、今となっては「経営者として最低」と指弾。「のうのうと暮らしている。罰を与えられないのか」と日野市のパート女性(52)が言えば、横浜市金沢区の40代の女性看護師も「子どもに頭を下げて謝ってほしい」と悔しさをにじませた。

 悪質業者の一掃に向けた対策や業界の体質改善を求める声も上がった。「はれのひ」の着物を気に入り、レンタルを申し込んだというまな娘の思いを届けようと茨城県から足を運んだ男性会社員(58)は「消費者が軽視されている。法整備を含め、再発防止に手だてを講じてほしい」。同市保土ケ谷区の男性会社員(53)も「消費者が先払いするという業界のあり方を見直してほしい」と訴えた。

約70人の債権者が出席した「はれのひ」の債権者集会=横浜市中区の市開港記念会館

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