甲子園懸けた名勝負 長崎県高校野球の軌跡 1970年代~1980年代

 この夏、第100回記念大会を迎える全国高校野球選手権、その舞台となる甲子園を目指した各地方大会からは、これまで数多くの名勝負、ドラマが生まれた。大逆転、無安打無得点試合、ノーシードからの快進撃-。現役の指導者や関係者、読者らの意見を基に、長崎大会の熱戦の歴史を振り返る。

◎1976年3回戦 海星13-0島原中央/「怪物サッシー」16連続奪三振
 海星の酒井圭一が「怪物サッシー」と呼ばれていたことを象徴する試合。初回の先頭打者から六回先頭打者まで、16連続三振を奪った。「ファウルフライをわざと落として」(酒井)まで三振にこだわった一戦で、7回参考ながら、無安打無得点も達成した。
 酒井は長崎工との西九州大会出場を懸けた県代表決定戦も無安打無得点で締めくくり、長崎大会5試合計37回で被安打4、失点ゼロ。甲子園でも県勢24年ぶりの4強に進み、準決勝でPL学園(大阪)に延長で敗れるまで圧巻の投球を披露した。酒井の一つ後輩の内野手、平田勝男もチームの快進撃を支えた。

海星の「怪物サッシー」に沸いた1976年。甲子園から凱旋した際には大勢のファンがチームを出迎えた=長崎市

◎1980年準決勝 瓊浦2-1長崎工/本西力投 初V
 瓊浦が攻守の要、本西厚博の活躍で延長十三回の息詰まる投手戦を制した。瓊浦が夏の長崎大会で決勝に進んだのは、この年が初めて。その決勝は本西が海星に11安打を浴びたが、粘り強く完投して6-4で悲願の甲子園切符を手にした。

◎1981年決勝 長崎西4-3長崎東/快進撃で頂点
 ノーシード同士の「東西決戦」。長崎西は前哨戦のNHK杯長崎地区予選で長崎商に大敗するなど、大会前の評判は高くなかったが、エース小阪好洋を中心に準決勝で小島啓民を擁する諫早に完封勝ち。決勝は初回に3点先行して長崎東の反撃を振り切り、30年ぶりの栄冠をつかんだ。甲子園では名古屋電気(愛知)の工藤公康に毎回の16三振を奪われ、無安打無得点試合を達成された。

◎1983年決勝 佐世保工4-0五島 香田/無安打無得点で切符
 佐世保工がNHK杯準決勝で敗れた五島に雪辱。春の選抜で2試合連続完封して8強入りの原動力となった香田勲男が、長崎大会の決勝では初の無安打無得点試合を成し遂げた。佐世保工は3季連続で甲子園出場。この年は上五島も4強入りして五島に敗戦。離島勢が複数準決勝に残ったのも初めてだった。

エース香田の活躍で1983年の長崎大会を制した佐世保工=長崎市営大橋球場

 ここに挙げた試合はあくまでも一部で、ほかにも数え切れないほどの名勝負があった。阪神で最多勝を獲得した瓊浦の下柳剛、ロッテで強打を誇った海星の堀幸一、ソフトバンクで現役でプレーする佐世保実の川島慶三ら、高校卒業後も活躍を続けた好選手も多数いた。
 そんな歴史を積み重ねてきた夏の100回目の大会。球児たちはどんなプレーを見せてくれるか。新しく生まれる筋書きのない熱闘ドラマが期待される。(敬称略)

 


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